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第三十一話 暴れん坊廃棄物バサ一郎


バサイの台詞ねーから!

―前回より・海上にて―


『よおおぉぉ~! カタル・ティゾルクソダメ住民クソどもよ! この作品の真なる主人公になるべくして生まれた史上最強のイイ男、ルジワン・バサイ様がやって来てやったぜぇぇぇっ!』


 突如フェリキタス島の中央から樹木のように生えて伸びた巨大なスピーカーを通じて突如全世界に響き渡ったルジワン・バサイの馬鹿げた叫びは、繁からの思いがけない提案に端を発するサウス・ケントの処遇についての話題で沸き立っていた世界中の人々を一瞬にして困惑させ、また苛立たせた。


「何で奴が生きてんだ、クソが……不死性の根源は断たれた筈だろ、ったく」

「……すまない」

「はぁ? 何でこの流れでお前が謝るんだよ? しかも心底申し訳なさそうに。まるで取り返しのつかねぇ過ちを犯したのを悔いる余りを『いざとなったら自殺でもなんでもして償おう』とでも言い出しそうな勢いじゃねぇか」

「そりゃ謝らねばなるまいよ、この流れでは。何せ私は取り返しの付かない過ちを犯してしまったのを心の底から悔いているわけで、つまりバサイがああなった全責任は私にあるわけだからね……」

「……全責任って事はなくねぇか。そりゃ俺は事情知らねーし、あのバカの育て方間違えたお前にも非はあるんだろうが」

「いや、それだけではないんだ」

「何?」

「それだけでは、ないんだよ。死んだ筈のバサイがああして何の脈絡もなく生き返っている事の原因も、恐らくは私にあるんだ」

「……どういう事だ?」

「気付かないかい? 『将帥』だよ。フライの持つ六大能力が一つ『将帥』……それを行使するに当たって生じる"予測不可能の未知なるデメリット"――それの作用した先が、恐らくはバサイの亡骸だったのだろう」

「自分の部下をデメリット扱いかよ」

「申し訳ないとは思うが、正直そうとしか言いようがないのも事実なんだよ。嘗て鎧を着込み蝿帝軍を名乗っていた頃、彼の口にするのも躊躇われる程に凄絶な前世を知った。そして彼を二度と苦しませてはならぬと思う余り、本来必要不可欠である筈の躾さえ怠ってしまっていたんだ。その結果、彼は生前同様歪んだ性格に育ってしまった。……今思えば、或いは慈愛ウィリディスを切り離した事で私の中に備わった良識や愛情といったものまで抜け落ちたか、中途半端なものに劣化してしまっていたのかもしれん。だが私はそれでも彼を自ら生み出した子として、また部下として愛していた」

「その結果が"アレ"か」


 そんなやり取りを交わしつつ。、繁とサウスは一切合切が消え失せ真に更地となったフェリキタス島の上空へと目を遣った。

 そこには意味不明かつ醜悪極まりない正体不明の物体が鎮座するように浮遊していた。直径400m程の饅頭か大福餅が如き楕円形をしたそれは、大まかにはヘドロが如きどぎつい緑色をした岩石のようであり、その中には取り込んだ瓦礫を変性し作り出したであろう様々な機械部品(主にスピーカーやカメラのレンズ等)が見え、それらの隙間からは骨肉樹の死骸を吸収し再利用したものと思しき短めの触手が幾つもまばらに生えていた。これだけでも十分に醜悪なのであるが、更に四方の先端部が口のように裂け、これまたヘドロが如き黄緑色の細長い触手が無数に生えては蠢いており、その醜悪さへ無駄に拍車をかけている。

 最早言うまでもないであろうが、その正体とは即ち、将帥のデメリットによって死骸から蘇生・強化され、周囲のあらゆるものを吸収することで見るも悍ましい姿となったルジワン・バサイであった。

 体表面のスピーカーを通じて全世界へ向けてバサイの鬱陶しい声が響き渡っているのが何よりの証拠と言えよう(敢えてどんな台詞かは割愛するが)。


「本当何なんだよ。どこの代用素材だよ。女子供のみならず大の男でも思わず逃げ出したくなる気色悪さじゃねぇか」

「何だその代用素材というのは。まぁ醜さについては全面的に同意だが」

「あんなナリで主人公なるとか頭おかしいだろ」

「全くだ。……だが、そうなってしまったのも元はと言えば私の所為だ。責任は、負わねばなるまい」

 そう言うや否や、サウスは静かに立ち上がる。

「おいサウス、お前一体何を――」

「言ったろう? 責任を果たす、とな」

「……つまり、お前は」

「そうだ。次こそバサイを完全に殺す」

 ゆっくりと構えを取ったサウスは、そのまま微かな音を立てて破殻化をする。嘗て身に纏っていた蝿帝の鎧をより有機的にし、背に大きな二枚の翅を加えたその姿は、蝿というモチーフにも関わらず主人公として十二分にやって行けそうな風格に溢れていた。

「おいおい、破殻化なんてして大丈夫なのかよ? 今にも死にそうな程ヘバでてたじゃねぇかっ」

「心配いらんさ。休憩したのでそれなりに回復はしている。とは言え、元より回復の有無に関係なく"突撃する前に墜落する"などということは決してないがな」

「そこまで断言して大丈夫なのかよ」

「ああ、大丈夫だとも。何せ私には『フライ』の擁する六大能力が最後の一つ『殉道』があるのだからな」

次回、サウスの切り札『殉道』とは!?

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