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第三話 これは議論ですか? EX.いいえ。バカげた言い争いです。



もう隠し通しておけないだろうと思って報道した結果の話。

正直わかる奴にはこの回で今回のラスボスがどんな奴か大体想像つくと思う。

つかない奴はどうあがいてもつかないだろうけど。

―前回より・五月六日の午後・ある放送局の番組を写すテレビ画面―


『つまりこの第二期で、真のエンディングが見えてくるということですね?』

『以下にも。何せ俺としてはこの世界観を描き切ることに生涯を費やしてきましたのでね。ファンの皆様にも是非楽しんで頂きたいと――『番組の途中ですが、只今入って来ました緊急のニュースをお伝えします』


 作家ランドルフ・ハーロックの生涯に密着し本質に迫るドキュメンタリー番組の画面が、ニュース速報のそれに切り替わる。ニュース番組の内容を要約するならば、前回本文中で描写されたフェリキタス島の惨状を伝えるものであった。更には報道の切っ掛けとなったらしい、フェリキタス島上空を偶然通りかかったヘリコプターの乗員が撮影したり、一部島民によってネットの生放送で垂れ流されたらしい侵食されゆく島の映像が複数放送された。

 人々の中には最初この一連の流れを大々的な映画かドラマの宣伝企画であると考え、島の映像も宣伝の為に作られた特撮と断じる者も居た。だが大多数はそれが現実なのだと直ぐに理解し恐怖したし、作り物だと断じていた者達が考えを改めるのにもそう時間はかからなかった。

 その日を皮切りに各種メディアはフェリキタス島と島を襲った謎の生物についての話題で持ち切りになり、テレビでは連日各分野の専門家を招いての特番が組まれるようになり、SNSでは民間人達の様々な憶測や冗談めかした発言が飛び交うようになっていた。

 一方六大陸の各政府はと言えば、当然ながらフェリキタス島を今後どうすべきかについて連日議論していたわけであるが、政治家の腰が重くただただ話し合いを長引かせるのは地球でもカタル・ティゾルでも変わらない。結果政府の役人達は何時まで経っても行動を起こせないでいた。


 そしてそんな中、世界に再び衝撃の走る事態が発生する。


 事の起こりは事件発生から四日が過ぎた同月十日、今回の『フェリキタス島事件(正式名:海上人工都市フェリキタス怪生物襲来包囲事件)』を引き起こした集団の長(即ち本件の黒幕)を名乗る人物からの全世界へ向けた大々的な犯行声明が行われたのである。それも、白昼堂々あらゆる放送機械を乗っ取るという大胆不敵な方法で。

 自らを『蝿帝軍ヨウテイグン』なる組織の長『蝿帝ヨウテイ』と名乗るその人物――音声に加工が施されており、中性的な喋りであった為年齢や性別の特定は不可能であった――による犯行声明の概要を箇条書きにして纏めると以下の通りになる。


・蝿帝軍の目的はカタル・ティゾル全てのヒト及び文明を滅ぼし新たな世界を築く事である。フェリキタス島はその為の活動拠点に過ぎず、彼らは準備が整い次第全世界への一斉侵攻を開始する。

・フェリキタス島の触手群は蝿帝軍の保有する兵力の一つ『骨肉樹』である。骨肉樹が持つ凄まじい生命力の前には如何なる魔術も兵器も無意味である。

・また、今やフェリキタス島は骨肉樹に守られた海上移動要塞であり、浮島などではない。その証拠に現在フェリキタス島は底部(裏面)より伸びた巨大な骨肉樹の束六本によって海底へと固定されており、これを脚として海底を歩き移動することさえできる。

・更に蝿帝軍はいつ何時でも最終手段として『島ごと自爆する』という選択肢を選ぶことができる。一件大した事のないように思えるが、自爆により骨肉樹が死滅すると海中及び大気中へカタル・ティゾルに存在し得ない未知の毒素が流出。瞬く間にあらゆる物を侵食し、半日と経たず世界の全生命体は完全に死滅する。

・各大陸政府並びに各大陸住民は、蝿帝軍の提示した選択肢――『何もせず殺される』『降伏する』『宇宙や異空間へ逃亡する』の三つ――から一つを選ばねばならない。この内降伏を選んだのなら原則安楽死させられる。但し例外として、何らかの特筆すべき才能を持つ者は蝿帝軍の作る新世界に生きる新たな知的生命体として生まれ変わることができる。猶予は侵攻準備期間と同じく五日。申告はただ『心中にてそう思う』だけでよく、五日後以上の選択肢のどれをも選び取っていない者は『何もせず殺される』という選択肢を選んだ者として扱う。


 この犯行声明を受けた世間は、当然ながら余計に騒がしくなった。手始めに各大陸の軍や防衛隊は犯行声明にあった骨肉樹のくだりを誇張と断じ、攻撃魔術や弾道ミサイルでの攻撃を試みた。然しながらそれらは結局の所無意味に終わり、それぞれの軍は魔力や兵器を無駄にしたばかりか、マスメディアからの要らぬ批判を招く結果となってしまう。

 そして不安に苛まれた人々の騒ぎや言い争いは加速度的にエスカレートしていき、すぐさま二日が経過。意味不明な動機による暴動が起きる中、六大陸を代表する政府の要人や各界の専門家達が(ネット回線で)一同に会しての協議が執り行われることとなった。議題は言うまでもなく、蝿帝軍なる組織への対策についてである。然し……


―五月十二日・会場にて―


「だから再生の隙さえ与えぬ勢いでの攻撃を繰り出し島ごと殲滅させろと言っとるじゃないか!」

「何を仰いますか! そんな事をした所で結果は目に見えておりましょう!」

「だったらBC兵器でも使えばいいじゃない! そうすれば奴らも一網打尽よ!」

「馬鹿を言うなぃ! そのような真似をすれば奴らが自爆しかねんだろが!」

「そうですよ! 自爆で世界を滅ぼされたら元も子もないじゃないですか!」

「ええい、そのような胡散臭い話を真に受けるでないわ! どうせあのヨウテイとかいう奴の吹いた法螺であろ――

「骨肉樹の再生能力も結局法螺じゃ無かっただろ! いい加減にしろ!」

「魔術で異空間に逃げちまえば一発だってさっきから言ってんだけどな俺」

「いやいや、異空間はやばいですよ。あれは基本一時的な退避や隠遁の為に使われるものであって、長居の為のもんじゃないでしょ? 深部に何が待ち受けているか……」

「ならばここは、やはり星を捨て住み良い他の惑星を探すしか……」

「じゃあ聞きたいんですが、たったの三日で全人類を乗せて宇宙へ旅立てる船が完成するとでも?」

「生き残る以上、ある程度は犠牲にせねばなるまいな。健康体・若年層・技術者等専門家を優先して一定数に絞り込むしか」

「カタル・ティゾルの全住民を絞り込むとなると三日じゃ足りんぞ。どうするんだ?」

「いっそ全員降伏――

「貴様正気かっ!?」

「尊厳を捨ててまで不確かな生に縋るなど言語道断! もし降伏するというのならその首ここで叩き斬ってくれる!」


 案の定というかやっぱりというかなんというか、この有様である。

 集められた者達の動きは九割がた同じようなものであった。

 ある者は他者の発言は遮り、またある者は意見をダラダラと感情任せに纏まりなく垂れ流す。

 ある者は勢い余って怒り狂い泣き叫び、理解できない点があったとしても放置する。

 多くは話を聞くにも発言者と目線を合わせもせず、基本自宅や職場に居ながら参加している者が多いこともあり(無論現場に来ている者もだが)片手間に話を聞き流す。

 そもそも他者の発言になど集中しておらず、知能の低さや教養・語彙の無さをさらけ出すかのような罵詈雑言で議論を平然と台無しにする。

 極めつけに誰が何を言おうとも上げ足を取って否定することしかせず、その為に全力を注ぐ。

 恐らくこの流れが改善されずに議論が終わったとしたら、その時になって負け惜しみのように議論の内容についてあれこれと言いだすのであろう。


 それは最早、議論ですらないただの低俗な言い争いであった。未曾有の危機に心が荒みささくれ立っている事もあり、普段はまともな筈の者達さえ正気を保てなくなってしまっていたのであろう。汚染されし泥沼と化した議論に、何とか正気を保ち続けていた僅かな者達の精神は擦り切れ爛れそうになっていた。

 だがそんな中、泥沼を浄化しうる者は唐突に現れるのである。


「ご静粛に! 皆様、ご静粛にっ!」


 突如開け放たれた扉より響き渡った男の声は、まさしく鶴の一声と言うべき声量と勢いにて不毛な言い争いに興じていた出席者達を一瞬にして沈黙させる。 否、厳密に言うならその一声は"鶴"ではない動物よるものであった。ともあれはっきりとしたもの言いで流れの淀みを正した人物は、唖然とする出席者達へ向けて声高らかに言い放つ。


「斯様な議論など、何時まで続けようと無意味に御座います! それでも尚議論を続けられるというのでしたら! その前にどうか、この私めの戯言へ耳を傾けて頂きたいっ!」


 その人物とは即ち、アクサノ亡国沿岸部の都市を治める市長にして現地に伝わる宗教・林霊教の上位神官かつ児童養護施設『コチョウラン』の元運営者である熊猫系禽獣種の男・供米磨男であった。

困った時の供米神官みたいになってるなコレ

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