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第二十六話 辟邪神虫は沈まない





ま、待たせたな……(罪悪感)

―前回より・海上―


 あれ以降、変身・巨大化したサウスと辟邪神虫に乗り込んだ繁の壮絶な戦いは舞台を海上に移し尚も続いていた。


『テアァアアアィッ!』

『きぇらははぁあっ!』


 白く光るエネルギーに包まれたサウスの手刀や蹴りと、繁操る辟邪神虫の持つ武器――前回ラストで手にしていた黒く細長い(例えるならば、蝶の前翅を直線に引き伸ばしたような)刀と、蝶の蛹をモチーフにしたと思しき幅広く短い剣の二振り――とがぶつかり合い火花を散らす。これら二つの刃物は『ジョロウバリア』に並ぶ辟邪神虫の武器であり、それぞれ蝶の前翅を真っ直ぐ引き延ばしたような黒く細長い方を『ジョウゲンセイバー』、蝶の蛹をモチーフにした幅広く短めの方を『オキクブレード』という。どちらも風変わりな見た目の割にさしたる特殊効果もないただの刃物なのではあるが、切れ味と耐久性についてはそれを補って余りあるほどで、武器としてはかなり高性能と言えた。


『しェあ! ハっ、ずォラぁ! へゥリあ!』

『ふん! ぬんっ! セェーイ! ッタァ!』


 一方、そんな繁と生身で渡り合うサウスも勿論負けてはいなかった。前回及び先程も描写した光のエネルギー(将帥の能力によってサウス個人の持つ高い生命エネルギーを増幅・具現化されたもの)を纏わせた彼の四肢は、ジョウゲンセイバーやオキクブレードに勝るとも劣らぬ高い切れ味と破壊力を発揮しており、実質的な刃物や鈍器として機能していた。更には手刀に加えて蹴りからも鋭い真空波を放つことでほぼ唯一の弱点であるリーチの短さをもカバーしてしまっており、それどころか距離を選ばず戦える分繁より有利でさえあった。加えてエネルギーを纏った四肢による真空波の威力はジョロウバリアを三重にして漸く何とか防げる程度にまで強化されており、結果として繁が苦戦を強いられ、その分戦況がサウス有利に傾いたのは言うまでもない。

 暫くして、繁の動きは図らずもサウスの一方的な攻撃を避け続けるばかりになっていた。


―辟邪神虫機体内部の操縦室コックピット


「(クソぅ、一体どうすりゃいいってんだ……戦況は一方的に奴が有利なままで、今や俺は持ってる刃物を振り回しもせずひたすら避け続けるばかり……)」

 操縦室コックピットの中、全身に数多のコードや機器を貼り付けた繁は(まるで座ったまま辟邪神虫へ取り込まれたかのような姿で)考えを巡らせる。

「(このままじゃ何れボロが出て俺は死ぬ。かと言って――咄嗟にジョウゲンセイバー出した時にはあんな事言ったが――今の俺は所詮虫の身体をヒトの脳でヒト基準に動かしている状態なのもあって攻撃避けるのが精一杯、左右二番目以後の脚を腕のように動かすなんて夢のまた夢だ……)」 一瞬軽く絶望しそうになるも、まだ諦めてたまるかと繁は奮起する。

「(まず機体の操縦設定を自動回避にして……と。次は取説がこの辺りに……あった! 最初はざっとしか読まなかったが、こん中に何か人間風情の脳味噌でも昆虫の身体を余裕で操れる方法があるかもしれねぇ……)」

 かくして繁は回避を辟邪神虫(の自動操縦機能)に任せ、内部に電子媒体で収録されている取扱説明書を隅々まで余す所なく読み進め、打開策を見出だすに至る。

「(そうか、こういう方法があったんだな……やっぱ、基礎に立ち返るって大事な事なんだなぁ……)」

 繁は早速説明書にあった方法を実行した。すると彼の全身に貼り付けられていたコードや機器が一瞬にして剥がれ落ちては引っ込んでいき、別の(より太く大振りになった)コードや機器が貼り付けられていく。それと同時に、繁は心身を根底からくまなく浄化されるかのような感覚を味わうこととなる。


「(さぁて、反撃と洒落込むか)」


―海上にて―


 そして辟邪神虫の自動回避モードは解除され、空中に留まったまま静止する。


『(……一体何事だ? 逃げ回ることさえやめ全てを諦めた――言わば完全なる抜け殻である筈の奴から、何故あんなにも近寄り難いオーラを発している……?)』


 サウスは空中で制止する繁から只ならぬ何かを感じ取っていた。

 そして二人は距離を取ったまま数秒睨み合い、何の脈絡もないタイミングで突如ぶつかり合う。


『シォエアッ!』


 攻めに動いたのは繁であった。真正面から一気にジョウゲンセイバーで斬り掛かり、気を取られている隙にオキクブレードで切り付けにかかる。然しそんな攻撃の対象などサウスからすれば朝飯前であるのは言うまでもなく、案の定二振りの刃物は弾かれてしまう。

 然しそれは繁にとって想定内の出来事であり、咄嗟に距離を取った辟邪神虫(を操縦する繁)は前から二番目の両腕それぞれで素早く異空間への裂け目を開き新たなる武器を引っ張り出す。

 それぞれコオイムシとマルツノゼミのような形状をしたそれらは一見腕に装着する鉄甲ナックルダスターを思わせ、そこからサウスは『あれで再び殴りかかってくるのだろう』ぐらいに考えていた――が、その予想は大きく外れる事となる。


『(な、なんだあれは……?)』


 サウスが面食らったのも無理はない。何せ繁が新たに取り出した二つの武器は鉄甲ナックルダスターなどではなく、より高度で複雑な構造をした――機械仕掛けの銃火器だったのである。

次回、銃火器どもが火を吹くぜ!

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