真名で呼ばない理由
ここは一刀と同じ新星である葵、玲のいる蜀の国
そしてある日の朝
葵「ハァッ!! 」
ババッ!!
朝っぱらから鍛練している葵の下に
桃香「おはよう葵ちゃん、朝から元気だね♪ 」
葵の主君である劉備こと桃香が現れたのだが
葵「おはようございます劉備様! 」
葵が返事を返すと
桃香「う…うん 」
元気のない返事をする桃香
葵「劉備様、元気が無さそうですが気分でも悪いんですか? 」
桃香「えっ!?いや、そんなことないよ!?さぁて、急いで仕事しなくっちゃ!? 」
葵「はぁ… 」
特にいつもと変わらないような様子だったので気にもしない葵であった。
蜀の城・政務室
桃香「はぁ〜… 」
政務室で深い溜め息をする桃香
愛紗「桃香様、いくら溜め息をしても仕事は減らないのですから手を進めてください 」
愛紗は仕事の量が多いため桃香が溜め息を吐いているのだと思ったが
桃香「ち…ちがうよ愛紗ちゃん!?ちょっと心配事があってさ… 」
愛紗「心配事?私でよかったら聞かせてください 」
愛紗が桃香に聞くと
桃香「うん、実はね… 」
愛紗に心配事を話そうとする桃香
するとその内容は
桃香「私って葵ちゃんに主君として認められていないのかなって 」
愛紗「はい? 」
いまいち訳がわからない愛紗
桃香「だって葵ちゃんは私の真名を教えたのに今までずっと桃香じゃなくて劉備呼ばわりだったじゃん 」
真名を教えているのに真名を呼ばない
これはこの世界の侮辱行為の一つであり、絶縁、絶交していないかぎりあり得ないのだ。
桃香「だって他国の葵ちゃんの友達で呉にいる北郷さんや、魏にいる雷魔さん、ぱいぱいちゃんのとこにいる吹音ちゃん、一時的に桔梗さんのところにいた源治さんはちゃんと真名で呼んでるのに私だけ真名で呼んでくれないからさ 」
源治は友達ではない
そしてこの時、幽州の方から『ぱいぱいじゃなくて白蓮だ!』と叫ぶ白蓮の声が聞こえたという
桃香「なのに葵ちゃんは私を真名で呼んでくれないから私を主君として認めてくれないからなのかなって 」
桃香の話を聞いた愛紗だが
愛紗「葵に限ってそれはないでしょう。きっと葵の実家が認めていないからなのでしょう 」
桃香「そうかな〜? 」
桃香が考えていると
コンコンッ!
ドアをノックする音が聞こえ
ガチャッ!
月「桃香様、御昼御飯をお持ちしましたよ 」
蜀の城の侍女長である月がやって来た。
桃香「あっ!もうそんな時間だったのか!? 」
月「はい、では用意しますね 」
カチャッ!
そう言って食事を並べる月であったが
月「よいしょっ! 」
トンッ!!
月の腕が仕事の山に当たった直後
ガララーッ!!
月「へぅっ!? 」
桃香「月ちゃん!? 」
竹でできた巻物の束が月に落ちてきた!
だがその時!
ドンッ!!
月「へぅっ!? 」
何者かが月を突き飛ばし
ドササーッ!!
月の代わりに仕事の下敷きになったのだが
ボコッ!!
いきなり仕事の山がぶっ飛ぶと
玲「フーッ!危ないところだったな月 」
月「玲さん!? 」
月の従者である玲が現れた!
さっき月を突き飛ばしたのは玲である。
月「玲さんはお怪我はありませんか!? 」
玲「俺の体は固いからあれくらいじゃ怪我しないっての 」
と言う二人を
桃香「ねっ愛紗ちゃん、玲さんだって月ちゃんを真名で呼んでるじゃない。きっと主君として認めてるからだよ 」
愛紗「いや、そういうわけではないかと!? 」
桃香「やっぱり私はドジだから葵ちゃんに主君として認められていないだよね 」
ドヨンッ!
愛紗「と…桃香様!? 」
改めて急に落ち込む桃香であった。
その後、少しして
愛紗「葵、ちょっと話があるのだがよいか? 」
葵「何なの愛紗? 」
葵を呼び止める愛紗
愛紗「お前は何で桃香様を真名で呼ばないんだ?おかげで桃香様が落ち込んでしまったぞ! 」
葵「えっ!?マジで!? 」
まさかそんなことになるなんてとは思わなかった葵
愛紗「お前の家の家訓で呼ばないならまだしも、そうでないのなら真名で呼んでやれ!その方が桃香様のためだ! 」
葵「うぅっ!? 」
桃香ラブである葵だって桃香が元気になるのならば真名で呼んであげたい。
だが葵には真名で呼ばないちょっとした理由があるのだ。
葵「わ…私の家の家訓で主君は真名で呼んじゃいけないって決まりなの!劉備様にそう伝えといてね 」
サッ!
愛紗「あっ!こら待て!! 」
葵は愛紗から逃げてしまった。
愛紗「まったくもう!しかしそういう理由があるのならば仕方が… 」
と愛紗が思っていると
恋「…愛紗、廊下の真ん中でどうしたの? 」
愛紗「恋!? 」
廊下で恋と会ってしまった。
愛紗「そういえば恋は今朝から見当たらなかったが今までどこに行ってたのだ? 」
恋「…セキト達と一緒に散歩してた 」
と恋が言うと
わんっ!!
コーギーのセキト
ばぅっ!!
セントバーナードの張々
あられ『どうも 』
そして葵の相棒である忍犬のあられ(柴犬)が現れた。
愛紗「あられ!確かお前は葵の相棒だったな! 」
あられ『そうだけどそれがどうかしたの? 』
愛紗「実はだな… 」
あられに葵の実家の家訓について聞く愛紗
すると
あられ『そんな家訓、全然ないよ!? 』
愛紗「なぬっ!? 」
あられ『異性を主君にするなって家訓はあるけどね 』
それは葵の父が相当な親バカだからである。
愛紗「では何故葵は桃香様を真名で呼ばないんだ? 」
あられ『う〜ん…、一刀さんの場合は主君から大事なものを預かると壊してしまうから聞かないっていう理由があるけど葵にはそんなのないし 』
これは小助から聞いたことである。
その後、言わない理由を考えるが全然思い当たる節が見つからなかった。
そしてその日の夜・政務室
桃香「よしっ!散々考えたけどやはりこの手しかない! 」
ガチャッ!!
政務室から出た桃香は葵の部屋へと向かう
葵の部屋
葵「はぁ…、そりゃ私だって劉備様を真名で呼びたいけどもし呼んだら大変なことになっちゃうし!? 」
葵が悩んでいると
コンコンッ!
桃香「葵ちゃん、入るよ! 」
ガチャッ!!
葵「りゅ…劉備様!? 」
いきなり部屋へと入る桃香
愛紗「んっ!あれは桃香様 」
あられ『葵に何の用だろう? 』
ササッ!
桃香が気になって部屋を覗く二人
そして中の様子を見てみると
桃香「葵ちゃん!あれこれ考えたけどこの手しかないの!! 」
葵「えっ!? 」
すると桃香は
桃香「主君命令です!私を真名で呼びなさい!! 」
ビビーーンッ!!
葵「なっ!? 」
愛紗「この手があったか!? 」
普段は主君命令なんて使わない桃香だが、真名で呼ばせるためには仕方がなかった。
あられ『どうするの葵!? 』
主君命令に背けば回りから責められてしまう!
そして葵は
葵「そ…そこまで言うのならわかりました!覚悟してください!! 」
桃香「う…うんっ!! 」
何が起こるかわからないがとにかく覚悟する桃香
そしてついに!
葵「と…桃香様!! 」
バァンッ!!
葵が桃香のことを真名で呼んだ!
・・・
その後、少しの間、回りが静かになると
葵「あれっ!? 」
回りが何の変化もなかったことに驚く葵
葵「おかしいな? 」
桃香「葵ちゃんどうしたの? 」
葵「いやちょっと、劉備様にお仕え始めた頃、とある人から聞いたんですけど…『外の世界から来たお主は劉備殿を真名で呼ぶでない!さもなくば劉備殿が桃に変わってしまうぞ』と言われまして 」
葵以外の全員『はぁ!? 』
何を言ってるんだと思う桃香と外にいた愛紗達であった。
愛紗「あのなぁ葵よ、もしそれが本当なら玲なんて言いまくっているからとっくの昔に桃香様が桃になっているぞ!? 」
葵「あっ!? 」
今頃になって気づく葵
あられ『葵って昔から聞いたら信じやすかったからね、昔もお父さんから『男に近づいたら病にかかる』って言われて一週間信じちゃったもんね!? 』
葵「う…うるさい!!/// 」
ちなみにその時は葵の母が父に説教して治ったのだった。
葵「あっ!いま思い出したけどあの時あれを教えた奴って!! 」
星の部屋
星「ふむっ!今日もメンマが美味しいな 」
カリカリッ!
星が部屋で好物のメンマを食べていると
バタンッ!!
星「んっ? 」
急にいきおいよく部屋の扉が開かれ
葵「せ〜い〜!!♯ 」
ゴゴゴッ…!!♯
鬼のように怒った葵が部屋に入ってきた!
星「おや、誰かと思ったら葵ではないか、こんな夜中に何の用だ? 」
何で葵が来るのか星は知らなかったが
葵「いまさっき思い出したのよ!あの時、私にデタラメを教えたのは星だってね!!あれから黄巾党の乱が始まったからデタラメを教えたのが誰なのかいまのいままで忘れていたわ!!♯ 」
黄巾党の乱が始まる前、葵は幽州で星と出会ったのだ。
すると星は
星「あぁ、あの時か!私もすっかり忘れていたが確かにそんなことがあった… 」
ちらっ!
そして星が葵を見てみると
葵「あんたのせいで!!あんたのせいで!!あんたのせいで!!あんたのせいで!!あんたのせいで!!♯ 」
ゴゴゴッ…!!♯
葵は物凄く怒りまくっていた!
星「い…いや!それはきっと私の姿を語る偽者!?そう!黒龍軍の誰かに違いな…!? 」
葵の怒りを見て言い訳しようとする星だがもう遅い!!
葵「あられ!!噛みつき三回よ!!♯ 」
あられ『はいはい、悪いけど葵を怒らせた星が悪いんだからね 』
バッ!
星「ひっ!? 」
ガブブッ!!
星「ぎゃーっ!? 」
そして星はあられにしばらく噛み跡が残るくらい尻を三回噛まれた後、桃香から罰としてメンマ一ヶ月禁止を受けたという
その後
桃香「葵ちゃん、おはよう♪ 」
桃香が挨拶すると
葵「おはようございます桃香様♪ 」
悩みが吹っ切れたように桃香を真名で呼ぶ葵であった。