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第一話 陰り


 新月で暗い夜空に無数の星々が瞬いている深夜、1台の黒いワゴン車が、ある一軒の家の前に止まった。

 ライトを消し、エンジン音が止まり動きがない。暗い車内の様子は窺い知れず、闇に溶け込むように時間だけが過ぎていく。

 数十分後、不意に車内で微かな話し声が聞こえ、引き戸のドアが開かれた……途端に室内ライトが点灯した。助手席から黒い服をきた一人の男がドアに駆け寄り、中から降りようとする人物を支えている。

 崩れ落ちそうに力なく出てきたのは、佐倉佑真だった。続けて降りてきた細身の男……島田に支えられている。

「佐倉くん、部屋までついていきますよ」

「あっ、大丈夫です。車内で寝てたし、部屋に戻ってまた寝ます。ここまで送ってくれて、ありがとうございました」

「本当に大丈夫ですか?我々は佐倉くんの一人や二人分を抱えて階段を登るのもへっちゃらですよ」

 島田は、疲れ切った佑真に明るく笑ってみせた。佑真もそれに応えるよに弱々しくうつむき加減で苦い笑顔を返した。

 重い足取りで玄関ドアを開けて中に入っていく佑真の姿を島田たちは無言で見送っていた。

 

 照明のスイッチを押すことさえ面倒に感じる佑真は、暗い家の中、重い足を引きずって台所に向かった。

 目指した扉に手を伸ばす。開けた途端、青白い光に照らされた佑真の疲れ切った顔が照らされた。

 ペットボトルの蓋を握りしめ、飲み物を一気に喉に流し込んだ。ほとんど空になったペットボトルを元の場所に戻し扉を閉めた。

 再び暗くなった室内……握りしめていた蓋をテーブルに置き、佑真は2階の自室に続く階段へ、よろよろと歩き出した。


 ベッドに倒れ込んだ佑真は、見慣れた暗い天井をぼんやりと見つめた。この数カ月の出来事……いかに現実離れした事の連続だったかを他人事のように考え始めた……。その時、ポケットの中でスマホが振動し始めた。

 取り出すと、光る画面で部屋の中が明るくなった。表示されている名前をチラッと見た佑真は、サッと指をスライドさせた。途端に光が消え、元の暗闇に戻った。

 だが、数秒後には画面が光り振動が始まった。スマホの明かりと振動が続き、観念したように佑真がスマホの操作をした。

『……もしもし?佑真?……あれ、また切られたのかな?……もしも〜し?』

「ったく、何だよ!」

『あっ、佑真、良かった……やっと繋がった。もぉ、切らないでよね。それよりも、大丈夫だった?今日は、初めてのトレーニングだったんでしょ?……あれ?……電話繋がってる?』

「……聞こえる……大丈夫だ……以上……」

『大丈夫だったら、いいよ。お疲れ様……また電話するね。おやすみ〜』

「はいはい……じゃあな……」   

 電話の相手は、佑真の幼なじみの新堂零だった。電話が終わると、佑真はすぐにスマホの電源を切って、暗闇に身を委ねた。

 

 いつの間にか眠ってしまった佑真は、奇妙な夢を見ていた。それは、暗闇の中……遠くに小さな光が見えるが近づけないどころか、更に光から遠ざかっていく。漆黒の闇に引き寄せられいるかのように……身体の自由がきかない。佑真は、ただ流されるように……そして光が小さくなっていった……。


  

 

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