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異世界を恐怖で支配する魔王の力は全部特撮なのにこの世界の人たちは私の言葉を信じてくれません! ~総天然色異世界~  作者: 猫長明
第2章:異世界で大学を作って科学技術を進めてやりたいこと?そんなのどう考えたって特撮作る以外にありえません!

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25/28

第25話:神なき世界

挿絵(By みてみん)


この物語はフィクションですが、

登場する人物・団体・名称等は、

実在のものが意識されています。


本作品は特撮作品及びその関係者を批判するものでなく

全ての特撮作品へのリスペクトを持って執筆しています。

この場を借りて情熱をもって素晴らしい特撮作品を

作られたすべての方々へ謝辞申し上げます。

 ドレイクの方程式に則って考えることをせずとも

 4番目以上の次元へも向かい無限に広がる宇宙には

 少なからず生命が誕生した惑星があり、

 そこには人類に限りなく近い生命が

 地球に限りなく近い歴史を歩んだ

 IF地球とも言える星が存在している。


 にもかかわらず異星人が見つからなかった理由を

 20世紀はフェルミのパラドクスと呼んだ。

 その「何故」の理由には高度な宇宙人が

 後れた地球人への接触を禁じ観察しているだけという

 動物園仮説であったり、そもそも地球だけが特別で

 ドレイクの方程式の答えはほぼゼロになるという

 悲観的解釈まで様々なものがあったが、

 結局その答えは単純な理由だった。

 星と星の間が「遠かった」のだ。

 故に四次元航法が発見されて以後は、

 当たり前のように宇宙に生命が発見され続けていた。


「程よい惑星が見つかりましたね」

「人間型の生命が芽生えている時点で

 馴染み深いところはあるな」

「ケイ素系のやつらはどうにもなぁ」


 特撮セットを組むに最適な土台を発見した一同。

 しかし、最適と判断した理由は

 人間型生命が芽生えているという以上に。


「神を持たないなんて、

 人間型にしては本当に珍しいことね」


 その星では、宗教が支配的な力を持っていなかった。


「それだけ自然が脅威にならなかった星です。

 火山活動も微弱のようですし」

「人類間での戦争もそこまで活発なものじゃないらしい」


 すなわち、その世界には宗教に頼らなくては

 生きていけないような「恐怖」が存在しなかったのだ。


「別に宗教が悪いってわけじゃねぇけどな。

 だが、無い方がやりやすい。

 日本の50年でだけ特撮が進歩した理由に、

 宗教が支配的な時代でなかったことは大きい。

 そういう意味で、ここは本当にセットには最適だ」

「特撮を見せたところで『神の奇跡』と解釈されては

 仕方ありませんからね」


 3人の言葉に頷きつつ、ノアは今後の展望を語る。


「それでも戦争がないわけじゃないわ。

 特撮は平和な時代になければ楽しめない。

 まずは世界を平和にするところからはじめましょう。

 そう、神の力ではなく、特撮の力でね」


挿絵(By みてみん)




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




 後日、南方調査隊からはしっかり無事の報告があった。

 サノシ教授も普通に生きているわけで、

 魔王軍の映像が嘘であることは大学の中では

 共通見解として認識されることとなった。


 が、それはあくまで事実に近い位置にいる

 リテラシーのある面々だったからの話。


「確かに魔王軍のこれまでの放送は嘘だった。

 だが、あの映像が嘘であるという絶対の保証はない」

「そもそもリアルすぎるし、

 たとえ嘘だとしても怖い物は怖いんだよ!」

「うちの子なんか悪魔が怖いって言って

 ずっと部屋から出てこれないのよ」


 恐怖は人の生存に直結する感情であり、

 簡単に人はパニックに陥ってしまうもの。

 ここで大学側から映像が嘘だと発表しようにも。


「勇者リンネは魔王軍の嘘の説明ができていない!」

「ミスカ大学は嘘を言っているんじゃないのか?」

「2つの事件を隠蔽しているんだ!」


 そんな陰謀論めいた話にまで感情が加速するのも

 当然といえば当然のこと。


「どうすんのやセンねぇ!

 いつパニックになった町のやつらが

 大学構内になだれ込んでもおかしくないで!

 なんとかできんのか!?」

「……少なくともカメラがないことには

 今回の特撮を暴くのは無理だよ」


「じゃぁそのカメラってのは

 いつになったら出来るんや!」

「ガラス加工の技術は全然足りてないし、

 フィルムを現像するための化学技術も

 ほぼ未解明。電気はもちろん、

 精密機械を作るための高度製鉄技術もない。

 確かに高炉の開発をはじめ技術は一足飛びで

 進歩してるけど……とても間に合わない」


 リンネはできる限りのRTAルートで

 異世界の科学技術を進めている。

 しかし、そんなこととは関係なく

 もはや暴動は目前にまで迫っている。


「なんも方法はないんか?

 ホントにもうなんもできんのか?」

「……出来ることは、ある」

「ほんまか!?」


 しかしリンネの表情は苦悶に歪んでいる。

 それは出来ることなら取りたくない

 手段であることの証だ。


「そもそも何故、こんなに人は恐怖に弱いのか。

 それは、この世界にはすがるものがないからだよ」

「すがるもの……?

 それこそ世に言う勇者リンネじゃないんか?」


「私だってなんでもできるわけじゃない。

 今必要なのは、本当になんでもできるもの。

 全知全能で、なんでもかんでも解決できる存在だよ」

「そんな都合のいいもんおるわけないやろ!」


「そう、いるわけがない。

 いるわけがないけど、

 居てくれないと怖くて何もできない。

 だから、居るということにしてしまう。

 居るという嘘をつく。

 それが、『宗教』って概念だよ」

「なるほど。マキラミ様を信じるあいつらか。

 あいつらの力を借りれば……」


「うん。だけど……」


 人類は、未知に耐えられない。

 世界が誕生した理由。火が燃える理由。

 海の向こう、空の向こうにある別世界。

 これらの未だ確認ができない未知に対して、

 科学以前の人類は神話と宗教で答えを作った。


 たとえそれが嘘であっても、

 自身の手が届かない超常的な存在を

 言葉の上で創造してしまうことは、

 恐怖を晴らすに十分なファクターとなる。


 現実世界で北欧の産まれだったリンネは、

 一般的な日本人よりも宗教のそういった

 要素に対して理解を示している。

 そもそも日本人は、宗教に対する漠然とした

 嫌悪感を持ってしまっているお国柄なのだ。


 ただ、そんなこの状況を解決できる

 唯一の方法を知っているはずのリンネが

 宗教の力に頼りたくないと考える理由。

 それは……


「特撮の驚きが、すべて神の御業で

 説明されるのは、やだ」


 リンネと魔王軍が宗教を嫌う理由が

 同じ言葉で説明されてしまうのは、

 もはや必然だった。


 ただ、リンネの場合、加えてもう1つ。


(進みすぎた科学は魔法にしか見えない。

 未来人である魔王軍の人たちは、事実上の神。

 神の力に頼るとはつまり、

 魔王軍に頼るのと同じことだ。

 私はそんなの……嫌だ!)




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




(どうすれば……どうすればいい?)


 解決策はわかっている。

 おそらくこの状況は魔王軍にとっても

 歓迎すべき状況ではないはず。


 天に輝くウルトラの星を指さして、

 ごめんなさい助けてくださいと一言言えば

 おそらくあの人達は助けてくれる。


 ただ、それが嫌なだけ。

 最後まで彼らはリンネの中では魔王軍。

 勇者である自分の敵。

 先日それを思い出したばかりなのだ。


(だけど、こうして私が決断できないでいる間にも

 人々の恐怖はどんどん大きくなっていく。

 早く手を打たなければ、

 ミスカ大学のみんなが危険に晒されてしまう……)


 実利を取るか。プライドを取るか。

 答えは明白だ。


 もう、諦めるしかないのか。

 そう心が折れかけた、その時だった。


「こんにちは、リンネさん。

 いえ、リンネ学長というべきかしら?」

「え……あなたは……!」


 振り返った前に居た予想外の人物。

 一瞬その姿に驚いた後に……


「ノアさぁぁぁぁぁぁん!」

「あらあら」


 その胸の中に飛び込んでしまうのだった。


挿絵(By みてみん)




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




「なるほど……魔王軍の正体は、未来人だったのね」

「そうなんですよ!

 こういうのテンプレじゃないですか!?

 超科学を持った未来人の傲慢って……」


 かつて出会った時と同じように、

 酒場で軽いアルコールを酌み交わす2人。


 リンネ視点ではノアその人が

 魔王軍の筆頭であるとは知るよりもなく、

 ノアはノアでリンネに名乗り出ることもなく、

 2人のオタクはそのまま特撮トークに華を咲かせる。


「わかるわ。

 ネオアトランティスのガーゴイルよね」

「そう! まさにそんな感じ!」


「タイムレンジャーの

 ロンダースファミリーのような奴らでは

 ないと思うけど……」

「どちらかというとユウリ達に近いけど、

 彼らも最初は堅物なとこがあって

 竜也と対立していたしねぇ」


「SSSSのグリッドマンもある意味そんな感じよね」

「確かに! 思えばウルトラマンも勝手だよね!

 ハヤタのことなんだと思ってるんだよって!」


「まぁ進みすぎた科学文明人の目線だと、

 どうしても人間の心なんてわからないんでしょうねぇ」

「そうだねぇ……ウルトラマンですらわからないし、

 もうしょうがないんだろうなぁ……

 ウルトラ5つの誓いとか真顔で言うし……」


「多分、ダンとアンヌも婚約するIFがあったら

 家で喧嘩してばっかりになるんでしょうね」

「たまごパックの値段10円の違いで喧嘩しそう!

 文化っていうか、価値観から違うんだし!」


 話始めたばかりの頃のノアには

 後ろを向いて邪悪な笑みを浮かべたくなるような

 邪念があったのだが、話が進めば進むほど

 ノアは邪念を、リンネは立場を忘れて

 オタクトークに熱中していく。


 ノアの視点で言えばリンネは守護すべき未開人。

 人語を話す子猫のようなものだ。


 一方のリンネの視点で言えば魔王軍は傲慢な神。

 2人の価値観が、思いが、噛み合うはずがない。


 しかし、その2人でも特撮を通じてなら語り合える。

 クールジャパンと言われるようなオタク文化が

 国境を越えて異文化コミュニケーションの

 きっかけになるように。


 オタク文化は、時も越えるのだ。


「けど……どうするの? リンネ。

 今、大変じゃない?」

「あー……うーん……」


 しかし楽しい時間を続けることもできない。

 リンネには解決すべき時間制限付きの課題があり、

 ノアにもこの状況をスマートに解決すべき事情がある。


 軽くため息を付いてから、エールを一口。

 口を塞いでゲップを誤魔化してから、

 リンネが決意を語る。


「……神に……魔王軍に、頼るしかないと思う」

「なるほど」


 ノアとしても想定内。

 当初からリンネを自分たちの仲間に引き込みたかった

 ノアにとってみれば、その一言はもう

 メフィラス星人に対しての地球あげますに等しい。


「漠然とした社会不安を解決するため、

 宗教という方法は人類史でもよく使われてきた。

 その上魔王軍は、ただの空想上の神様じゃない。

 実在していて、話も通じる神様でしょ。

 確実にこの状況を解決してくれるはず」

「でしょうね」


 実際には特撮を楽しむために

 神に等しい力の大半を捨ててしまっているノア達だが

 残った知識と技術でも十分事態の解決は可能だった。

 あとはリンネをどのような形で味方に引き込むか。

 それだけの話なのだが……


「不服そうね」

「そりゃそうでしょ」


 不満げなリンネを軽く煽りたくなる程度には

 ノアにはイタズラ心レベルの邪念がある。


「まぁ、しょうがないでしょ。

 ギリギリまで頑張って、ギリギリまで踏ん張って。

 どうにも、こうにも、どうにもならないなら、

 そんな時は……」

「ウルトラマンが欲しくもなる。わかってるんだ」


 わかっている。わかっているのだが、しかし。


「でも……本当はウルトラマンなんて、いない。

 あれは全部特撮。空想特撮なんだ」

「…………」


 寂しそうで、それでいて真剣で。

 リンネの言葉には、重みがあった。


「……具体的に魔王軍に、

 どうやって助けてもらうつもり?」

「そうだなぁ。未来の道具で時を戻したり、

 人の感情を操作したりってのはやめて欲しいかな。

 彼らにはスタジオがあるんだから、

 街の人たちを納得させるような

 映像を撮ってもらえば……」


 そう言いかけたところで、ノアが口を挟む。


「それ、あなたが撮ることはできないの?」


 一瞬、呆気にとられるリンネ。

 少しだけ悩んでから、首を横に振る。


「無理だよ。私にはカメラがない。

 せめてカメラがあれば……」

「けど、カメラなしにあなたは特撮を作って見せた。

 ゴメス・ザ・ライド。私も乗ったわよ。

 あれは紛れもない、カメラを使わない特撮だった」


「でもっ! カメラがなければ、映像は残せない!

 映像を突きつけることができなければ……」

()()()()()()()()()()()()?」


 強い言葉に遮られ、目を点にする。

 リンネにはノアが何を言いたいのかわからない。

 しばしの沈黙の後、ノアが続ける。


「今の街の人々の心を不安にさせているのは

 魔王軍が作った恐怖映像じゃない。

 あれはただのきっかけ。

 恐怖は人の中で勝手に育った無貌の怪物。

 姿なき侵略者相手に、わざわざ姿を見せる必要はない。

 人々が化け物を『居る』を信じることが

 この問題のきっかけならば……

 それに対抗するヒーローを『居る』と信じさせれば、

 解決すると思う。私はそれに映像は、

 必ずしも必要ないと思うけど」

「…………」


 その言葉にしばらく悩んだ後で。


「そっか……ヒーローを『撮る』んじゃない。

 ヒーローを『創れば』いいんだ……!」


挿絵(By みてみん)


 そう気付くやいなや、力強く立ち上がるリンネ。


「ごめんっ! ノアさん!

 私、用事が出来た!

 これ、私の分!」


 カウンターに多めのお金を叩きつけて

 酒場を後にするリンネの背中を見送って。


「やれやれ。何やってんだか、私も」


 そう呟いて、ノアは軽く指先で塩を舐めた。

この物語は毎週日曜日9時に公開しています。



気に入った方は前作もよろしく。


★異世界で国鉄分割民営化を回避するため走る

 鉄オタエルフの奮闘記。


異世界で森を切り開き鉄道敷いて魔王を倒したエルフの後日譚

「ファン・ライン」~異世界鉄道物語~

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【Nコード:N8087KO】





★全員クズの勇者パーティの中に

 裏切りものが1人いる(※1人しかいない)とわかり

 全員が暗躍しはじめる話。


このパーティの中に1人、魔王の手先がいる!

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