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異世界を恐怖で支配する魔王の力は全部特撮なのにこの世界の人たちは私の言葉を信じてくれません! ~総天然色異世界~  作者: 猫長明
第2章:異世界で大学を作って科学技術を進めてやりたいこと?そんなのどう考えたって特撮作る以外にありえません!

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21/28

第21話:悪の造花

挿絵(By みてみん)


この物語はフィクションですが、

登場する人物・団体・名称等は、

実在のものが意識されています。


本作品は特撮作品及びその関係者を批判するものでなく

全ての特撮作品へのリスペクトを持って執筆しています。

この場を借りて情熱をもって素晴らしい特撮作品を

作られたすべての方々へ謝辞申し上げます。

 時は未来にしか進まない。

 人は能動的に記憶を失えない。


 だからリンネはこの異世界の技術を進めつつ

 特撮に余計な技術をスルーし、

 技術を進ませすぎはしないと決意している。




 が、しかし。それはあくまで、

 リンネが現代人だからこその常識でしかない。




「この特撮っての面白いじゃねぇかff0000!」

「まさかこんな娯楽が3100年前の地球の小さな島に

 わずか50年あまりの間にだけ集中していたとはな」


 早速友人2人に特撮を布教するノア(ff0000)

 やはり何千年経とうがオタクのすることは同じらしい。


「でしょ? でもね、もっとこの特撮を

 楽しむ方法があるのよ」

「教えろ教えろ! どうすればいいんだ!?」

「お前がその老年の男性から聞いたという

 この作品を作った男たちの話は面白かった。

 その話を聞いた上で見る映像はより興味深く見えた。

 つまり、また何か新しい知識を得れば、

 より楽しむことができるようになる、と。

 そういう話だろう?」


 特撮をより楽しむため、

 さらなる知識をノアに求めるキッカ(008000)ミケ(ffff00)

 しかし、ノアの提案はある意味で

 常軌を逸していた。


()()()()()()()()

 特撮を楽しむために、必要な知識を」

「……は?」


「どのみちもうこの次元の宇宙に正統な人間は

 私達4人しか残っていない。

 この宇宙をどうするも私達の自由。

 滅ぼすのは流石に気が引けるけど……

 後退させるくらいなら、いいんじゃない?」

「ff0000。それがどういうことか、わかっているのか?

 お前が言うのは、ただの娯楽のため、

 先人達が築いた有史以来5500年分の技術を

 すべて捨てるということ。それはもはや……」


 思わず震えるミケを相手に邪悪な笑みを作って。


「そう、特撮のために神の力を捨てるということ。

 そして、この世界を滅ぼすということ。

 あの老人は……いや、魔王様は。

 それを望んでいるのよ」


挿絵(By みてみん)




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




 ここは世界のどこかにある魔王軍の秘密スタジオ。

 リンネはその場所を南のどこかと予測して

 冒険を始めていたが、今となってはもうわからない。


 何故なら彼らは所謂どこでもドアめいた

 未来の超科学技術を用いて移動するため。

 そんなものがあるならもう、

 基地は世界のどこにあっても問題ないし、

 それどころか東西南北というXY軸のでも

 高度というZ軸でもない、人類には知覚できない

 4つ目以降の次元上に存在する可能性もあった。


 故にもう、魔王軍の秘密スタジオの場所の特定は

 無意味であると同時に不可能であるとも言えた。


「勇者リンネのその後はどうじゃ?」

「ミスカ大学なる教育機関を設立し、

 特撮を用いた講義で世界の科学水準を

 飛躍的に高めています」


 空間を自由に移動できるということは

 情報も入手し放題というわけであり、

 彼らはリンネの動向を手に取るように

 入手できていた。


「なるほどの。科学水準を高め、

 特撮黄金時代まで世界を加速させるつもりかの」

「と、予測されます」

「この世界で私達の知らない新たな特撮が、

 まだ見ぬ名監督や特撮技師が生まれるのなら

 これ以上の幸せはありませんね」


 結局は同じ穴の(オタク)でしかない彼らは

 リンネの動向を単純に歓迎できる。

 今までのように目的もなくただ魔王軍の嘘を暴くことに

 躍起になっていた頃とは違うと言えた。


「確かにリン姉ちゃんはわしらの仲間だ。

 袂を分かってなお、目的自体はほぼ同じ。

 このまま互いの邪魔にならないように

 特撮の良さを世界に広めてくれればいいんだが、

 ま、そうはいかないんだよな」

「あぁ。リンネ君は同じ目的を見ているにしても、

 それはあくまでリンネ君だけ。

 人の欲望、特に、好奇心は限りがない。

 科学水準を都合のいいところで止めるなど

 できようはずがないのだ」


 おそらくそれはリンネも承知の上。

 特撮に関係ない技術をスルーし、

 CGに繋がるコンピューター関連の

 テクノロジーのヒントを与えないにしても

 いずれ人類は必ず同じ技術の先へ進む。


 ただ、リンネにしてみれば

 おそらくそれは遠い未来の話になる。

 流石に彼女も自分の死後までは考えない。

 医療水準の低いこの世界では

 あと50年も生きられば

 長寿と言えてしまうほどなのだから。


 もしも200年、100年先に技術が進みすぎた結果

 特撮黄金時代のスウィートスポットを外れるにしても

 リンネがそれを見ることはない。が、しかし。


「光陰矢の如し。100年200年など刹那にすぎぬ」


 寿命を克服した未来人である彼らとは

 時間感覚があまりに違いすぎた。


「はい。彼女自身は詳細な科学知識を持たず、

 研究者たちの好奇心を加速させているに過ぎません。

 そんなやり方で、理想の状態で

 技術水準を止めるなど、不可能に等しい」


 アキとノアの見解に、シグは残念そうにため息をつく。


「そう……ですね。私としては

 私の知らない偉大な方の作品を見られるのが

 楽しみでなかったのですが」

「言うてシグ、わしら以上の絵を撮るやつなんて

 そうそういねぇだろ。もう他人に期待してねぇで、

 わしらで新作を撮ればいいと思うんだがな」

「そういうところも含めてシグなんだろう」


 彼らは伝説の技術者達、リンネの言う憧れの人達。

 見た目からしてどう見ても本人ではない。


 しかし、その技や記憶と共に

 個々の個性の一部が彼らの性格にまで

 若干の影響を与えているのは事実なのだろう。


「では、どうしますか? アキ様」

「ご命令とあらば、ミスカ大学を……」

「ミスカなんて名前を大学につけたんだ。

 リン姉ちゃんもわかってるだろ」

「クリーチャーのデザインは俺に任せろ。

 奴らに本当の宇宙的恐怖というものを……」


 魔王軍四天王である彼らにとって

 リンネは敵であって敵ではない。

 ゴメス・ザ・ライドの時と同様、

 壊さないとわかっているが壊したくない。


 その責任を魔王代理であるアキに

 押し付けるようとしている、と言えば

 どうにも卑怯な話に聞こえてしまうのだが、

 その実は真逆。彼らがアキに求めている言葉は。


「必要ないのじゃ」


 (ゆる)しであった。


「……わかりました。

 アキ様がそう仰るなら致し方ありません」


 魔王軍四天王の面々はもう

 なんやかんやでリンネを好いている。


 事実上の神である彼らを前にすれば

 ただの人間でしかないリンネの行動は

 低俗なごっこ遊びでしかない。


 しかし、それでも彼女は特撮オタクだ。

 その熱意にはどこまでも共感できる。

 その一点でだけ言えば、

 4人の神々とオタクの少女は同レベルなのだ。


 それでも神々には目的がある。

 その目的を考えればリンネの行動は邪魔になる。

 排除すべきだが排除したくない。

 その感情の捨て場所を、アキに求めていたのだ。


「では改めて……」

「が、しかし」


 そんな4人の思いを理解してかしてまいか、

 アキはにやりと笑ってパンと手を叩き。


「邪魔はしてやろう。これまで散々邪魔をされたからの。

 そう、わしららしいやり方での邪魔を、な」


挿絵(By みてみん)




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




 リンネの目的はこの世界で特撮を撮ること。

 撮れるまで技術水準を上げること。

 すなわち、カメラを作ることだ。


 カメラを作るためにはレンズを作る必要がある。

 レンズを作るにはガラス加工技術の進歩と同時に

 もう1つ重要なものがある。

 それが、『レンズを作りたい』と思う意思である。


 そのためにリンネが提示したのが、

 宇宙の星々と生物の進化だった。

 すなわち、遠い物と小さい物。

 これらを見たいというモチベーションが

 天体望遠鏡と顕微鏡を作る。ついでにカメラも作る。

 それこそが、リンネが重力と進化を説いた理由……


(まぁオーズのコンボでサゴーゾが

 一番好きというだけなんですけどね!)


 じゃないんだよなぁ。


「ということで! 次はプトティラです!

 プトティラのザウルスです!」


挿絵(By みてみん)


 一応目的に繋がると言い訳しつつも

 全力で趣味のために大学を私物化するリンネ。


 それでも実際彼女の行動で

 様々な発明が生まれているし、

 貴族たちの元に優秀な人材が届けられている。


 好きなことを好きにして、

 ついでに世界が豊かになる。

 これ以上の異世界ライフがあるかと

 言わんばかりの充実さであった。


 ということで教授陣と生徒達を引き連れ

 古代の地層が剥き出しになっているとの噂が聞こえた

 海岸沿いの村までやってきたのだが。


「これが悪魔の骨……!

 いや、ドラゴンの骨か!」

「ううむ、噂には聞いていたが、

 はじめて見たな……」

「生き返って動き出したりはしないのか?」


 地球における恐竜の『発見』は1815年。

 聖職者で地質学者のウィリアム・バックランドが

 発見した化石を大型爬虫類の下顎と特定し

 メガロサウルスを名付けたことに始まる。


 だが、それは学術史における発見でしかなく

 当然それ以前にも恐竜の化石は多くの人々の

 目に留まっていた。


 しかし、彼らにとってその巨大な骨は

 神が一度世界を滅ぼした証拠であり、

 その巨大な骨は神の叛逆者としての巨人か悪魔、

 もしくはドラゴンの骨であった。

 故にそれらは目を背けるべき恐怖であり、

 研究の対象にはならなかった。


 ここで起きるブレイクスルーが進化論である。

 進化の概念はこれまでの神がすべての生物を

 創生した説を否定し恐竜の化石に学問の光を当てる。


 進化論はチャールズ・ダーウィンの1859年に執筆し

 今では広く知られる説だが、ダーウィン以前にも

 進化論に薄々気付いていた学者は多く存在していた。


 彼らがダーウィンに後れを取った理由はただ1つ。

 神の言葉と教会権力に蓋をされていたためだ。

 そう考えると1815年に恐竜を発見したバックランドが

 聖職者であるという一文がまた味を持ってくる。


 この世界にはそうした覇権的な宗教は存在しないが

 精霊信仰のようなものは存在しており、

 悪魔的なものを忌避する漠然とした恐怖も

 人々の心には存在していた。


 恐竜の骨もそうした漠然とした恐怖の象徴であり、

 おそらくリンネが何もしなければ

 この世界でも恐竜の発見も700年後だっただろう。 

 

 が、そんな宗教が科学になっていた歴史は関係なく。


「恐竜を見つけとかないとプトティラコンボの

 意味がわかってくれませんし、

 ジュウレンジャーもゴウザウラーも、

 それどころかゴジラだって意味わかんないんですよ!」


 本当に完全な趣味で恐竜発掘を奨励するリンネ。

 そもそも、言ってしまえば。


「恐竜、カッコイイですよね!?」

「かっこいいな!」

「うむ!」

「ロマンに満ちている!」

「さぁ骨の復元をはじめよう!」


 うーん、なんて充実した異世界生活。




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




 そんな、ある日の夜の大講義室にて。


「リンネ学長、よろしいでしょうか?」


 1人の教授が手を上げる。

 こうして教授からの質問に

 リンネが答え『だけ』を提示し、

 その答えを目指して研究が進む。

 そんな中のワンシーン。


「地質学教授、サノシです。

 何故恐竜は絶滅したのでしょうか?」


 リンネの目元がぴくりと動く。

 この反応だけで慣れた教授達はもう気付く。


(あ、これ学長、知らないな)


 正確に言えば知らないわけではない。

 知りすぎている。


 一般的に恐竜が絶滅した理由といえば

 メキシコ、ユカタン半島に衝突した

 巨大隕石が原因であるとする説が有名だが、

 最新の研究でもこれは事実としては確定しておらず

 隕石とは関係ない地球環境の寒冷化だったり、

 突飛な説では植物の進化と花と花粉が

 恐竜を駆逐したという説まで存在した。

 あと、機械化帝国とか魔女パンドーラとか。


「いろんな理由があると思います。

 巨大隕石の落下からの地球寒冷化という説が

 有名なんですけど、他にもいろんな説があって

 なにか1つというわけではなく、

 本当にいろんな理由が複合したんだと思います」


 なるほど、よくある話だと学者たちは頷く。

 科学はわりとそういう話は多く、

 キッパリと気持ちいい答えにはなりにくい。

 むしろそういう話の方がリアルである。


「ちなみに私はゲッター線説が好きです!」


 リンネの世迷い言もよくある話で、

 それを学者たちがスルーするのもいつものこと。


 こうして1つの質問は流され、

 続いて別の教授が手を上げて質問が続くのだが。


(……何故恐竜は絶滅してしまったんだ?)


 質問したサノシ教授だけが、深く思考に沈んでいた。




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




 その後の夜の大講義は、まるで覚えていない。

 何故恐竜は絶滅したのか。

 サノシ教授の頭の中は、ただそれだけに縛られていた。


(化石の量を考えるに、恐竜は地上の無数に居たはず。

 それが一斉に消えてしまうのはおかしい。

 リンネ学長は隕石の衝突説を唱えたが、

 進化論を考えるならその後の環境変動にも

 耐える恐竜が生まれてもおかしくないはず。

 どんな理由を考えても、恐竜が一斉に

 地上から消えることはおかしい……)


 改めて自分の中で思考を整理した上で。


「恐竜は、絶滅などしてはいないのでは……?」


 ぼそりと呟いた、その瞬間。


「いい思考センスをしていますね」

「うぉぉっ!?」


 暗い部屋の中、足音もなく突然現われたのは

 青髪に黒いローブの少女。

 学内で一度も見たことのない少女だ。


「君、い……」

「今どこから現われた、ですか?」


挿絵(By みてみん)


 蠱惑的な表情で思考を先読みされ教授の鼓動が跳ねる。

 他に誰もいない夜の部屋に一回り歳の離れた

 美少女と二人きりという背徳感。

 そんな美少女が微笑みながら放つ

 身震いするほどの、底知れなさ。


「こうしてあなたの後ろに来ました」

「!?」


 その少女の姿が一瞬消え、

 かと思えば別のところから現れる。

 神も宗教も信じず学問だけに命を捧げた

 リアリストの教授が、直感する。


(この子は、悪魔だ……!)


「はい、そうです」


(心を読んでくる!?)


 びくりと震えつつ一歩下がるも、

 既に目の前に少女の姿はなく。


「知りたいんですよね?」

「ひっ……!」


 声が、後ろから聞こえる。


「けど、私が悪魔だとしても。

 知識を得るために悪魔を契約するなんて、

 よくある話じゃないですか?

 知りたくありませんか?

 恐竜の行き着いた先を」

「…………」




 知 り た い。




 たとえ悪魔と契約してでも、

 好奇心を満たしたいという欲がある。

 学問の命を捧げているからこそ、

 パンドラの箱が開けたくなってしまう。


 だが同時にこうも思う。

 自分の力で解き明かしたいと。

 故にこんな状況すらもヒントにして

 自分の疑問の答えを探っていく。


 自分の目の前に突然現われ、

 一瞬で空間を移動する謎の美少女。

 その口振りから彼女は恐竜の行き先を知っている。

 そう、()()()()()()()()()()()()()()()()

 つまり……


「恐竜は……別の空間に、消えたのでは……?」

「ふふっ……」


 その突飛な説に少女は満足そうににやりと笑って。


「どーん」


挿絵(By みてみん)


 指を突きつけられると同時に、

 サノシ教授の意識は途絶えた。

この物語は毎週日曜日9時に公開しています。



気に入った方は前作もよろしく。


★異世界で国鉄分割民営化を回避するため走る

 鉄オタエルフの奮闘記。


異世界で森を切り開き鉄道敷いて魔王を倒したエルフの後日譚

「ファン・ライン」~異世界鉄道物語~

https://ncode.syosetu.com/n8087ko/

【Nコード:N8087KO】





★全員クズの勇者パーティの中に

 裏切りものが1人いる(※1人しかいない)とわかり

 全員が暗躍しはじめる話。


このパーティの中に1人、魔王の手先がいる!

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