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異世界を恐怖で支配する魔王の力は全部特撮なのにこの世界の人たちは私の言葉を信じてくれません! ~総天然色異世界~  作者: 猫長明
第2章:異世界で大学を作って科学技術を進めてやりたいこと?そんなのどう考えたって特撮作る以外にありえません!

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19/28

第19話:大学と異世界と重力コンボ

挿絵(By みてみん)


この物語はフィクションですが、

登場する人物・団体・名称等は、

実在のものが意識されています。


本作品は特撮作品及びその関係者を批判するものでなく

全ての特撮作品へのリスペクトを持って執筆しています。

この場を借りて情熱をもって素晴らしい特撮作品を

作られたすべての方々へ謝辞申し上げます。

 彼らは、すべてを持っていた。


「……喉乾いたな」


 ふっと手を振ると、コップに入った水が出る。

 2度振ればレモン水、3度振ればレモンジュース、

 4度振って、レモネード。


「ふぅ」


 レモネードだけを半分飲んで、

 適当に手を振ると4つのコップがすべて消えた。




 いずれ人間は、究極に至る。


 恒星を覆い包むダイソンスフィアから

 無限のエネルギーを得て、

 ブラックホールはあらゆる物質を供給し、

 量子ジャンプは広い宇宙を四畳半に変える。


 そこまで行ってもまだ究極ではない。

 まだそこにある物の場所やカタチを変えるだけ。


 真の究極は、完全な無から有を作る。

 無に見える場所に、縦横高さに加えて7個の軸を見る。


 そして人は11個目の特別な次元、

 時間さえも支配し、神になる。




「大きくなったら、何をしようかな」


 彼らには夢がない。

 努力なしに簡単に掴める物は夢にならない。

 『今日の夕飯はカレーがいいな』は、

 決して人の夢にはならないのだ。


「そんなこと考える必要ないだろff0000!

 やりたいことを片っ端からやればいいんだぜ!」

「008000……」


「そうですよff0000。

 その日起きてやりたいと思ったことをすればいい。

 超新星爆発を見て、その破片から星を作って、

 そこに生命が根付く数十億年を見送って、

 飽きたら1日を終わりにすればいいのです」

「……そうなのかな、0000ff」


「どういうことだ?」

「本当にそういう毎日って、

 楽しいのかなってことだよ、ffff00」


 3人はきょとんと首を傾げる。

 大統一理論もM理論も2秒で理解できる彼らが、

 『楽しい』の意味を理解できなかった。


「なんか、楽しいこと……ないかな」


 それはまだ彼らが、『魔王』に出会う前のお話。


挿絵(By みてみん)




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




 天まで届くような時計塔と

 どこまで続くかもわからない校舎の列。

 彼は今日この日から、大陸最高の教育機関、

 ミスカ大学で働ける栄誉に震えていた。


(僕の今日までの学びがここで仕事になる……!

 才ある若者に知識を伝え、

 いずれ自分が教えた生徒が研究仲間になるんだ!)


 事務員が彼をはじめての教壇に案内する。

 この扉1枚向こうに生徒たちがいる。

 世界の中から選りすぐられ、

 学問の究極を目指す気概に満ちた生徒たちが!


 ごくりと息を飲んでから、

 そっと丁寧に、それでいて勢いよく、

 扉を……開く!




「ぎゃはははははははははは!」

「あー! はなくそ! はなくそつけた!」

「はなくそおんなだー! にげろー!」

「きぃぃいい! まちなさい!

 ちんこ! ちんこけってやるから!」


「……は?」




 世界の中から選りすぐられ、

 学問の究極を目指す気概に満ちた生徒たちは……


「どこ……?」




「ははは! ミスカ大の君も洗礼を受けたようだねぇ!」


 ミスカ大学。水晶の騎士の私財を元に、

 多くの貴族達の寄付を集めて創設された

 究極の真理を目指す大陸最高の教育機関。


 下は4歳幼年部、上には制限無し。

 ゆりかごを出た直後から墓場まで学べる学校には、

 他にない大きな特徴があった。

 それは、授業料・学食・学生寮が、

 すべて無料であることだった。


 生徒に男女や人種、家柄に制限はなく、

 両親もしくは所有者の許可さえあれば、

 文字が読めなくても入学が可能だ。


 が、その一方で卒業には制限がある。

 条件は以下の2つ。

 大学に出資している貴族に雇用されるか、

 教員達が認める新発見を論文にまとめるか。

 このどちらかが満たされない限り、

 大学の敷地内から自由に出ることが許されない

 ある意味監獄めいた側面も有していた。


 このシステムにより、

 貧しい家からの口減らし感覚だったり、

 解放された奴隷だったりが集まり、

 やがて彼らは貴族の元で働くエリートか、

 世界を革新する科学技術を発見する研究者になる。


 そう、このミスカ大は世界の頂点の頭脳が

 さらなる高みを目指す場であると同時に、

 世界の最底辺が頂点に指が届くまで成長する場。

 言うならば究極のパワーレベリング施設なのだ。


「新任教諭は半年間幼年部を担当してもらうのが

 ミスカ大教員の誰もが通る道だ。

 まずは悪ガキ共の子守から覚えるんだな!」

「そ、そんなぁ……!」


 大学の敷地内から自由に出られないのは生徒だけ。

 彼はこの餓鬼もとい悪ガキの群れる地獄から

 いつでも逃げ出すことが許されていた。


 憧れの教育機関が保育園だった現実を前に

 彼の心は一瞬揺らいでしまう。

 しかし、そんな心を見透かしたように

 先輩はにやりと笑って言葉を続けた。


「ともあれ初日の指導、お疲れ様。

 さ、ついてこい。ここからが君の求めただろう

 ミスカ大の深淵だ。覚悟はいいか?」

「深……淵……?」


 ごくりと息を飲む新任教諭。

 先輩教諭に案内された彼が入ったのは

 学内最大規模の教室。

 その椅子に座るのは全員生徒ではなく教員達だ。

 そして、その正面で声を張るのは、

 まだ幼さの残る少女だった。


「以上が私の知る『重力』の概念です。

 私はここまでしか説明できません。

 みなさんにはこの先を、重力加速度の

 計算式を研究で特定してもらいたく思います」


 彼女の名はリンネ。

 水晶の騎士にして、勇者である。


 現代からの転生者である彼女は

 1000年先の未来の知識を持っていた。


 彼女は常識として重力の概念を知っているし、

 天が動いているのではなく地が動くことも

 あらゆる物質は素粒子で構築されていることも、

 生物は進化しサルが人間になったことも、

 その進化には螺旋状のDNAが鍵だとも知っていた。


 しかし彼女は重力加速度の式を覚えておらず、

 惑星の動きを計算する方法も、

 望遠鏡や電子顕微鏡の作り方も知らず、

 サルも動物園の中でしか見たことがなかった。


 彼女の知識はすべてがハリボテのポチョムキン。

 その中身を構築しなければ、役に立たない。

 彼女の言葉で言い直すと、詳しくわからない。

 詳しくわからないから……




 特撮に使えない。




 こうして彼女は己の趣味のため

 大陸最高の学術機関を好き勝手に利用する。


 世界の技術は一足飛びに進歩し、

 人々の教育水準は高まり、

 産業も効率化し娯楽の余裕が生まれる。


 そしてそのすべてが、最終的に……




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




 特撮に繋がる!




「サイ! ゴリラ! ゾウ!」


 三匹の動物の名前を叫びポーズを取るリンネ。


挿絵(By みてみん)


「セン学長の新しいコンボだ!」

「全部知ってる動物だ!」

「サイもゾウはすごく大きいんだよ!」

「先生の絵で見た!」

「私は校外学習でサイを調べに行ったわ!」

「ゴリラはすごく優しいって本で読んだ!」


 現代人であれば誰もがその姿を想像できる

 サイとゴリラとゾウの3匹の姿。


 しかし、サイもゾウが住んでいる地域は狭く、

 ゴリラに至っては実は発見がかなり最近で

 以前はUMA扱いの動物だった。


 そんな3匹を子供がイメージできる時点で、

 既に彼らは高い教育水準の元にあるのだ。




「うおおぉぉぉぉおぉぉおおぉ!!」


 続けて両腕で力こぶを作り、胸を叩く。


挿絵(By みてみん)


「なにしてんだあれ!?」

「かっこいいポーズだけど知らないぞ!」


 何をしているかよくわからない生徒に対し。


「私先生と見に行ったよ!

 あれは、ゴリラのポーズだ!」


 校外学習でゴリラの調査に付き合った生徒が叫ぶ。

 その隣では生物学の教師が後方彼氏面だ。


(ゴリラはほぼ人間のような生活をしていた。

 進化論……サルが人間になったという話は、

 本当なのかもしれない。もっと深く、

 サルとゴリラの研究をしなくては!)




「ぐ、ぐわぁぁぁぁああああああ!!」


 そのままリンネがゴリラのドラミングを続けると

 反対側の2人の魔物役が地面に倒れ、潰れてしまう。

 いや、潰れるのは魔物役だけではない。

 地面が押し潰れ、岩が崩れていく!


挿絵(By みてみん)


「なんで!? どうなってるんだ!?」

「あれは岩を操る攻撃なのか?」

「わかった! あの音で空気を揺らして、

 その振動で岩を砕いているんだ!」


 音は空気を伝わる振動。

 彼はもうその事実を学んでおり、

 この攻撃の正体を音波攻撃だと解釈した。

 この時点でも学びの成果が出ていると言える、が。


「いえ、違います。あれは、重力攻撃です」

「ジュウリョク攻撃!?」


 生徒たちの前で、教授が鉄と木の球を持ち、

 その両方を紐で結んだ上で地面に落とした。


「重い物はより速く落ちるという先入観は

 実は誤りでした。本当は物体は常に

 同じ速さで地面に落ちるのです。

 物が落ちる力、いえ、正確に言うならば、

 物を引き寄せる力。それが重力です」


 こうして説明がされる一方、

 背後では実験がされていた。


「本当だ……高い山の上では、

 大学のある低い土地よりも、

 わずかに落下までの時間が遅くなる……!」

「この時間の差から、重力加速度を計算し直し、

 世界標準の値、重力の単位を作ろう!」


 かと思えばそのさらに横では、

 夜に向けて望遠鏡の調整が進む。


「空気の澄んだ山の上は、天文観測に最適だ。

 今日こそ俺の新型の天体望遠鏡で、

 学長が話してた木星の4つの衛星を発見してやる!」




「うあああぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!」


 岩山の上から落としたロープに引き上げられる形で

 一度高くに浮き上がったリンネが、

 落下と同時に地面を大きく揺らす。

 そこからさらに胸を張ると、

 押しつぶされていた魔物が彼女に吸い込まれていく!


挿絵(By みてみん)


「あれも、重力、なのか……?」

「そうか! さっき先生が言ってた!

 重力は落ちる力じゃなくて、引っ張る力だって!」

「ならセイ学長が重力を出して、

 それに魔物が引っ張られてるってことか!」

「あぁそうか! そうだよ!

 だから世界は丸くても平気なんだ!

 だから反対に居る人達が落ちないんだ!」


 現代の日本では日曜日の朝に子供が見る特撮。

 しかし、その必殺技のワンシーンですら

 現代では当たり前になった常識で成り立っている。


 特撮は子供が見るもの。幼稚な子供騙し。


 しかし、騙されて熱中するのは

 子供が無知だからではない。むしろ逆!


 賢いからこそ、特撮を楽しめる。

 学びは特撮に繋がり、特撮は学びに繋がる。


「ところでどうしてサイとゴリラとゾウのコンボで

 重力が使えるようになるの?」

「重いからじゃない?

 サイもゴリラもゾウも全部重いよ」

「確かに。トラはちょっと重そうけど

 タカとバッタは軽いよね」

「もしかして重いと重力って強くなるの?

 重い力で重力だし」

「地面に引っ張られるのって

 地面が凄い重いからじゃない?」


 と。特撮をきっかけに覚えた素朴な疑問と

 それへの無知で矛盾な子供の想像力が。


(……ホントにそうなんじゃないか?)


 隣で聞いていた教授にフィードバックされ

 研究が加速していく。


 そう、これこそが勇者リンネの……!


「いっけぇぇぇぇえええええ!!」

「やっちゃえぇっっぇぇぇええ!!」

「サイ! ゴリラ! ゾウ!」

「サゴーゾ! サゴーゾ! サゴーゾ!」


「サ・ゴォォォゾッッ!!」


挿絵(By みてみん)


 特撮講義である!




挿絵(By みてみん)

この物語は毎週日曜日9時に公開しています。



気に入った方は前作もよろしく。


★異世界で国鉄分割民営化を回避するため走る

 鉄オタエルフの奮闘記。


異世界で森を切り開き鉄道敷いて魔王を倒したエルフの後日譚

「ファン・ライン」~異世界鉄道物語~

https://ncode.syosetu.com/n8087ko/

【Nコード:N8087KO】


★全員クズの勇者パーティの中に

 裏切りものが1人いる(※1人しかいない)とわかり

 全員が暗躍しはじめる話。


このパーティの中に1人、魔王の手先がいる!

https://ncode.syosetu.com/n7991lc/

【Nコード:N7991LC】

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