第1話:ここは異世界!? ありえない!
この物語はフィクションですが、
登場する人物・団体・名称等は、
実在のものが意識されています。
本作品は特撮作品及びその関係者を批判するものでなく
全ての特撮作品へのリスペクトを持って執筆しています。
この場を借りて情熱をもって素晴らしい特撮作品を
作られたすべての方々へ謝辞申し上げます。
この世界は今、魔王の脅威に晒されている。
魔王軍の力は圧倒的だ。
人には決して使えない超常の力、魔法。
どんな動物とも異なる異形、魔物。
魔法で空を飛びで魔法で攻撃する、スーパーロボ。
魔物の中でも身長30mを超える巨体、大怪獣。
鉄の剣と弓で戦う人類では手も足も出ず、
町も、自然も。ただ焼き払われるのみだった。
そんな魔王軍の魔の手が未だ届いていない村。
魔王軍は己の力を誇示するため、
魔法放送で恐怖の映像を人々に見せつけ、
人類から戦う意思を奪おうとしていた。
ここに暮らす人々も魔王軍の脅威に怯え、
いずれ来る絶望を前に気力を失っていた。
「違う」
そんな魔王軍の恐怖の映像を見た少女が呟く。
「違う!」
周りの村人が驚きつつ振り向く。
何が違うというのか。
まさかあの魔王軍と戦う方法があると言うのか。
この、まるで見たことのない服を着た
どこか頭がおかしい少女には。
「お嬢ちゃん、あんた、まさか……
魔王軍と戦う方法があるなんてことを……」
「違います! それ以前の問題です!
魔王軍は……いえ、みなさんが、
魔王軍だと思い込んでいるものは!」
――すべて特撮! 特殊撮影です!!
「……トクサツ?」
「特殊……サツエイ? サツエイってなんだ?」
「あれは魔法だ!
人間には使えず、魔物だけが使える魔法なんだ!
魔法の使えない人間に未来はないんだよ!」
「……なるほど。そうですよね。当然です。
どれだけ言ってもわかってくれない。
人間、見たものしか信じませんよね。
もはや言葉は不要です。
それではみなさん、御覧ください」
「これが……」
「特撮です!!」
この物語は、魔法もなけれは魔物もいない。
現代地球から見て1000年前の技術水準しかない
平和な異世界に転生した特撮オタクの女子高生が。
「見えにくい紐で上から吊るしているだけ。
でも、上は必ずしも上じゃない」
特撮の技で世界を恐怖に撒き散らし
戦わずして世界征服を果たそうとする
魔王軍の嘘を暴くため。
「ギャバン! ダイナミック!!」
スマホはもちろん現代の道具が何1つなく
都合のいい魔法もない中で
カメラ無しで特撮映像を再現すべく奮闘し。
「その手を……使えば……?」
何故か彼女以上の現代知識を持ち、
カメラをはじめとした特撮機材を持つ
魔王軍の謎を暴き。
「科学剣、稲妻重力落とし」
世界の人々に存在しない魔法を信じさせ、
存在しない大怪獣を見せつつ。
「巨大な、目ぇ!?
今一瞬、怪獣の目が!!」
人々の恐怖を夢に変え、
特撮の楽しさを伝え広めていき。
「あの腕を十字に組むポーズは!?」
「あぁ、魔王軍の魔物が光の魔法を……
ビームを使う前に取ることの多い
謎のポーズだ! まさか……まさか!」
「ヘアァッ!!」
特撮ヒーローが教えてくれた、
勇気と正義を貫く物語である。
「私の超必殺技ぁぁぁぁああああ!!
ライダァァァァァ!! キイィィィイィック!!」
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――1年前
彼女が目を覚ましたのは、森の中だった。
ただ、その瞬間にもうここがただの森ではないと
彼女には直感することができた。
その理由は2つある。
(見たことない植物しかない……)
木の幹、枝、葉。
地面から生えているキノコも、
その隣で動く小さな昆虫のような生き物まで。
すべてが地球の生態系とは別物だと、
一目でわかるような異形だったのだ。
(やっぱり、死んじゃったんだ。私)
そしてもう1つの理由は、彼女の最後の記憶が、
交通事故の瞬間だったからだ。
(将来の夢、あったんだけどな。
まぁ……叶うはずのない夢だったけど)
ため息をついて立ち上がる彼女。
体のどこにも痛みも傷もなく、
通っていた高校の制服の白いブレザーも
クリーニングから戻ったばかりのような状態だった。
(そんなに悪いことした実感はないんだけど、
地獄ってわけじゃないよね。
天国なら道案内くらい会えてもいいと思うんだけど。
いや、もしかすると……)
森の中は嗅いだことのない不思議な甘い香りがした。
朝露にも近い水気も感じる。
幸いにもこの世界にも水自体はあるらしい。
行く宛もないままに森の中をさまようと
水の流れるような音が聞こえた。
小川だ。湧き水が流れているらしい。
(……飲めるかな)
確か、聞いたことがある。
ポスト・アポカリプス後の世界で
最初に探すべきはペットボトルだと。
集めたペットボトルにろ過した水を入れ、
太陽光の下で3日ほど放置する。
すると太陽光の殺菌効果により、
安全に飲むことができるようになる、と。
逆に言うなら、殺菌せずに飲む水は無色透明でも
様々な有害な菌が紛れ込んでいるリスクがある。
ましてや完全な未知の自然環境。
迂闊に水を飲んで腹を壊して終わり。
そんな呆気ない落ちも現実的だ。
だが、ここで飲める水を確保するメリットは大きい。
少なくとも水さえあれば数日はなんとかなる。
見た目は透明で無臭。
飲める可能性は高いように思える。
なら、意を決する他ない。
「ええいっ! 南無三っ!」
気合を込めて飲む、と。
「甘っ!?」
予想外の味に思わず吐き出してしまう。
数分そこでどうするか悩んだ後に。
(いや、どうせ難易度はデスゲームだ。
リスクは、取る!)
このあたりはローグ系のゲーム経験故か。
それに加えて。
(どうせ一度死んだ身だ!)
そんな思い切りも、彼女にはあった。
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泉の周辺には竹に近い見た目の木が生えていた。
案の定、中は空洞。
拾った石で加工すれば水筒になる。
ポケット2つ分の水筒を確保した上で
しばらくその場で待機する。
水が安全かを人体実験する目的だ。
ダメならダメでここで終わり。
だが、異常が出ないならここを拠点に
探索することで当面の安定が約束される。
果たして結果は。
緊張しながら待機すると、予想外の反応が現れた。
(空腹感も、消える……!
なんとなく体調も良くなったような……?)
完全な予想外。それも良い方の予想外だ。
ならばと多少腹が膨れる程度まで甘い水を飲み、
2本の水筒も満タンにしてポケットへ。
改めて森の中の散策を……と。
ここでふと気付く。もとい、認める。
(この世界は異世界。
それも、魔法のある異世界の可能性が高い)
そうでなければ、
無色透明で無臭の水が甘く、
さらに体力と空腹感が回復する理由が
納得できないというのが半分。
もう半分は。
(魔法が使えるなら、楽しい!)
そんな希望的観測の思考バイアスだった。
鼻息を荒らげて目を蕩けさせる彼女。
だんだんテンションが上がってきたらしい。
(聞いたことがある……
魔法のコツはイメージだと!
想像を具現化する魔法……なら、
私が小さい頃からずっと妄想していたこと……
私の夢が! 叶うかもしれない!)
現実世界では諦めていた彼女の夢。
それは……
(私は、ヒーローになりたい!)
大好きだった変身ヒーローや魔法少女、
はたまたスーパーロボットのパイロット。
そんなよくある幼稚園児の夢を彼女が諦めたのは
実はつい数年前のことだった。
こういった楽しい夢は、
だいたい小学校に入学する頃には消えている。
テレビの中のお話はすべて嘘で、
この世界には悪の組織もヒーローも存在しない。
そんな当たり前で面白みのない現実に気付くのだ。
しかし彼女の夢はそこで終わらなかった。
悪の組織もヒーローも存在しないと理解した後の
彼女の夢、それは、ヒーローの中の人だった。
そんな新たな夢を目指して体を鍛え、
新体操を学んできた彼女が
二度目の夢を諦めることになった理由。それは。
「うーん、難しいかもしれないねぇ。
もう身長、伸びてないんだろう?
スーツアクター目指すならその身長じゃ無理だよ」
こうして二度目の現実を知った彼女は抜け殻となり、
何の目的もなくだらだらと生きていたところで
交通事故に遭遇し今ここに至る。
そんな彼女の中で今、
二度死んだ夢が息を吹き返そうとしている!
(……よし)
ごくりと息を呑み、拾った竹筒を高く掲げ、
イメージを練り、決意を込めて、腹の底から!
「デュアル・オーロラ・ウェイブ!」
…………
……
しかしなにもおこらない。
「あ、あれ?」
ふんっ、ふんっ! と竹筒を振るも
変身どころか光のエフェクトすら出ず。
もう一度泉の水をがぶ飲みしてから。
「ムーン・プリズム・パワー・メイクアップ!」
しかしなにもおこらない。
「わかりましたわかりました!
もうコツを掴みました!
そういうことですね!」
何がそういうことかわからないが、
今度は竹筒を捨てて。
「ライダー……変身っ!」
しかしなにもおこらない。
「初代じゃないんですねわかりました!
じゃぁBLACK! BLACKをやります!
それがダメならBLACK RXです!
ぐぐぐっ……ゆ゛る゛さ゛ん゛っ!」
しかしなにもおこらない。
「ちくしょう! じゃぁ何ならいいんですか!?
デュワッ! ゴー! フィーバー!
ゴーカイチェンジ! 蒸着! 重甲!
吹けよ嵐! アクセスフラッシュ!
ダイターン、カムヒアッ!
出ろぉぉぉぉおおお! ガンダぁぁ……」
「なぁ、ねえちゃん。何してんのや?」
「……あ」
第一村人、遭遇。森の中で野垂れ死に回避確定。
だがそれはそれとして。
(出会い方が最悪だ……!)
この物語は第一章最終話まで書き上げたものを
予約投稿して公開してるの。
毎日22時20分更新で全18話、
第一章最終話は11月4日になるわ。
文字数は約10万文字で、普通のラノベ1本分くらいね。
気に入った方は前作もよろしく。
★異世界で国鉄分割民営化を回避するため走る
鉄オタエルフの奮闘記。
異世界で森を切り開き鉄道敷いて魔王を倒したエルフの後日譚
「ファン・ライン」~異世界鉄道物語~
https://ncode.syosetu.com/n8087ko/
【Nコード:N8087KO】
★全員クズの勇者パーティの中に
裏切りものが1人いる(※1人しかいない)とわかり
全員が暗躍しはじめる話。
このパーティの中に1人、魔王の手先がいる!
https://ncode.syosetu.com/n7991lc/
【Nコード:N7991LC】




