第六夜 成果を出すヒントは噂話にあり
廃部の危機を知らせても、石塚と星越の二人は結局いつも通りダラダラと過ごし始めた。
俺はこのゆるい感じの部室の空気が好きだった。
できることなら、俺も二人と同じようにダラダラとしていたい。
けど今は、この場所が無くなってしまうのが嫌だという気持ちの方が強い。
廃部を防ぐには本気で成果をあげなければならない。
俺は現実逃避するようにダラダラとする二人を見て、篠原と同じように自分一人で何とかしなければならないと思い一人部室を出た。
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部室を出て下駄箱で靴に履き替えていると、話し声が聞こえてきた。
下駄箱に遮られていて姿は見えないが、帰り際の二人組の女子生徒だろう。
「ねぇ、あの噂知ってる? 中庭のやつ」
「何それ!? 知らない、教えて!」
噂話が好きなのか、二人組の片方が話題に食いついている。
「なんかね、部活で遅くなった人が中庭の方から人のうめき声みたいな音を聞いたんだって。で、その音がこの世のものとは思えないぐらいにひどくかすれてて、潰れているせいか最初は何を言ってるのかわからなかったらしいの。でも、よくよく聞いてみると『おいてかないで、おいてかないで』って言ってるように聞こえるんだって!」
「何それ、こわ〜い〜!」
絶対にそこまで怖がってないだろという声のトーンで女子生徒はわざとらしく悲鳴をあげている。
こういうオーバーリアクションをみると舌打ちをしたくなるのを俺はどうにか抑える。
「その噂、いつから言われてるの? ずっと前から言われてたわけじゃないよね? 私、初耳だったし」
「えっとねぇ〜たしか……あっ、そうだ! ちょっと前に、この辺で一晩中すごい雷鳴ってた時あったじゃない? その後ぐらいからだったと思うよ、この噂が言われ始めたの」
「あれか〜〜! 本当、すごい音してたよね。私、そのせいでちょっと寝不足になったんだから! ふ〜ん、その後ぐらいからなんだ〜。ところでさっ――」
女子の会話の話題消費は凄まじいもので、すぐに噂話から次の話題へと移っていった。
それと同時に話し声もだんだんと遠のいていく。
「中庭から聞こえる人のうめき声か……」
待てよ。
これ、使えるんじゃないか?
この噂話をオカ研が報告書として文化祭で発表すれば成果になるんじゃないか?
オカ研に全国大会やコンクールなんかあるわけない。
つまり、学校は優勝とか入賞じゃなくてオカ研としての活動を目に見える形で他の生徒達に発表することを求めているんじゃないだろうか?
もしそうなら、オカ研の廃部は阻止できるかもしれない!
「明日、二人にこの話をしてみるか」
成果を出すための目標が明確になったことで、俺は足取りを軽くして家への帰路についた。
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