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第十八夜 四日後の金曜日の夜に

 月曜日、俺は部室に行って石塚と星越に篠原から聞いた内容を話した。


「……本気の……本当の本気のマジなんだよな? その話?」


 俺からの話を聞き終えてから終始黙っていた二人だったが、ようやく石塚が(せき)を切ったように口を開いた。


「本気も本気、大マジな話だ」


「マジかよ……マジかよ、マジかよ、マジかよッ! ヤベェって、ヤベェよ、ヤバすぎだろッ! なんだよ、それッ! 超絶イカれてやがるッ!」


 あまりの衝撃的な内容に石塚は正気を失ったように興奮している。


「星越もそう思うだろ!?」


「……そ、そ、そ、そうだね。ボクも石塚と同意見か、か、かな」


 冷静そうに振る舞おうとしているが、星越はどこをとっても冷静ではなく動揺していた。

 証拠に、クトゥルフ神話であろう本を読んでいるフリをしているが向きが逆さになっている。

 逆さのせいで読みにくかったが、本のタイトルは「ダニッチの怪」と書かれていた。


「で、どうすんだよ?」


「どうするって何が?」


「何って、地下壕だよ、地下壕。もちろん、確かめに行くよな? 行かないなんて、つまんないことは聞きたくないぜ。オカ研の成果に繋がるチャンスだ! というか、ぶっちゃけ成果うんぬんよりもオレ達がいる学校の足下に巨大な地下壕があるとか好奇心が抑えらんねぇって!」


 石塚は何かに取り憑かれたように目を爛々と輝かせていた。


「そりゃ、確かめには行くが……嫌じゃないのか? 非人道的な人体実験をやっていたかもしれない場所なんだぞ」


「あの時代なら、別にしょうがなくね? 戦争してたんだし、負けそうだったんだろ? だったら、そういうことをしてたっておかしなことでも何でもないじゃねぇか」


 あっけらかんと石塚は答える。

 こういうことに関して、石塚は結構ドライなんだよな。


「そう言われると、たしかにそうだけどよ……」


 篠原や俺とはえらい違いだ。


「んで、いつ行くんだ?」


「まだ決まってない。二人の予定も聞いてなかったからな」


「え!? ボクも行くの?」


 星越は行く気がなかったようで、逆さになっている本から顔を上げた。


「強制ってわけじゃないが、もし一緒に行くなら予定を合わせた方がいいと思っただけだ」


「なんだよ、星越? 怖いのか?」


「はぁ!? そんなんじゃねぇし! いいよ、ボクも一緒に行くよ!」


 あ、怖かったんだなと俺と石塚は思った。

 一緒に来るのはいいが、見栄を張って痛い目みないといいけどな。


「じゃ、決まりだな! オレはいつでも行けるぜ!」


 行く気満々な石塚は早く行きたくて仕方がないようだ。


「一応、篠原は今週の金曜日だとありがたいって言っていたな」


「金曜日ってことは、四日後か……若干遅い気もするがオレはいいぜ」


 少しでも早く行きたい石塚からしたら、今日明日にも行きたいだろうに譲歩をしてくれたようだ。


「星越は?」


「今週の金曜日ならボクもこれといった予定はないから、それでいいよ」


「おっけ。そんじゃ、今週の金曜日ってことで決まりだな。篠原に連絡しとくか」


 俺はグループトークに今週の金曜日に行くことが決まったことをメッセージとして送る。

 篠原に会って話を聞いた日の翌日となってしまったが、篠原をオカ研のグループトークに招待しといてよかった。

 こういう時は、やっぱり便利だ。

 今後も集合時間とかを決める時にでも役立つだろう。


「ってか、思ったんだけどさ。せっかくだし、夜とかに行かね? そっちの方が雰囲気出るだろ」


「肝試し的なってことか?」


「そう、そう。真っ昼間に行ったって面白くねぇだろ。学校の中庭なんか今からでも行けるぜ。それに噂だと、聞こえるって言われているうめき声ってのは日が暮れて夜とかになった時に聞こえるんだろ? だったら、夜に行かねぇと確かめようがないじゃんか」


 深夜の方が面白いかどうかはさておき、噂の方は夜に行かないと検証にならないというのは石塚の言う通りだ。


「……そうだな。そうした方がいいかもしれない」


「えぇ……マジで言ってんの?」


 夜に行くと聞いて、ますます星越は行きたくなさそうだった。


「怖いのか?」


「怖くねぇよ!」


 石塚とさっきと似たようなやりとりをした星越は見栄を張り続けて後に退けない状態になっている。


「だが、夜の学校に入る許可なんて取れるか?」


「そうだよ! 学校がそんな許可出すわけないな! 残念だけど、夜に行くのは諦めた方がいい!」


 俺の指摘に退路を作ろうと星越は必死に便乗してくる。


「何言ってんだよ? 許可なんか取る必要ねぇだろ」


「石塚こそ何言ってんだよ? 許可を取らずに深夜の学校なんかに入ったら、学校が契約してるセキュリティ会社が異常を察知してすっ飛んで来るぞ。それ以前に、鍵もなくてどうやって中に入るんだよ?」


「それは学校の校内に入る時の場合じゃん。オレ達が入ろうとしてるのは中庭。んで、中庭は外にあんだから校門を乗り越えるだけで何も難しいことも見つかるリスクもない」


「あ、そっか。そうだわ。じゃあ、問題ないな」


「いや、あるだろ!」


 珍しく星越が正論を言っている。


「まぁ、大丈夫だって! バレなきゃいんだよ、バレなきゃ」


「……新庄もそう思うか?」


 石塚が犯罪者がよく言いそうな論理を展開して、星越がそれに飲み込まれそうになっていた。


「リスクは少ないから、大丈夫だろ」


「……あ~~もう、わかったよ!」


 観念したように星越は机に突っ伏した。


「よし! なら、今度の金曜日は肝試しで決定だ!」


 意気揚々と立ち上がって、石塚はそう叫んだ。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

次話の投稿は明日を予定しております。


少しでも面白いと思った方、ブックマーク、ポイントをして頂ければ幸いです。

よろしくお願いいたします。


活動報告も書いています。

よろしければそちらもご覧ください。

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