風雷の音色。破滅。
カイの死は王国にとって、単なる一人の兵士の死ではなかった。それは希望の消失を意味し、仲間たちの心を深く傷つける出来事だった。セリナ、マーク、そしてカイを失った王国は、最前線で戦う兵士たちの士気を保つことすらできなくなった。
王国軍は、帝国の猛烈な攻撃を受け続け、ついに防衛線が崩壊し始めた。王都ルメルは最後の砦だったが、その防衛戦は長く続くことはなかった。
「我が王国は、ここで終わりだ。」
かつての栄光を誇る王国の王が、戦場で敗北を受け入れたとき、すべてが決して戻ることはないと感じられた。王国の兵士たち、将軍たち、民衆たちの心に、もう希望は残っていなかった。
カイが死んでから、数週間が過ぎた。その間、マークもまた戦場で命を落とし、王国軍の指揮系統は崩壊していった。王国の軍は、単に戦い続ける力を失ったのではない。もう何もかもが無意味に思えていた。
戦争は残酷で、誰かが死ぬことで終わるわけではない。カイやセリナ、マークの死を無駄にしないために戦い続けた彼らだったが、結局、王国はその戦争を負け戦とすることを運命づけられていた。
王都の防衛が続いていたが、ついに帝国の兵が王都に迫った。
王国の人々は、すでに敗北を予感していた。王国の軍は大きな損失を受け、ほとんどが戦力を失っていた。帝国の軍は、何もかもを奪い、支配するために進軍を続けた。
「王国はもう、終わりだ。」
その言葉が、どこからともなく響いた。カイ、セリナ、マークの死が、まさにその言葉を現実のものとしてしまった。
王国が崩壊し、帝国がその支配を強める中、残された者たちの心は一層深い悲しみに沈んでいった。
雷鳴が、遠くから静かに聞こえた。風がその音を運んできて、誰かの記憶を呼び覚ますように、王国の民に届いた。その雷の音は、まるで失われた仲間たちが生きた証を示すかのように響き渡った。
王国の敗北は、全てが無意味に終わったわけではなかった。だが、それを支えた者たちの死が、どれほど苦しく、無情だったかは誰もが感じていた。
戦争で死んだ彼らの意志が、今も何かを残しているのだろうか。カイが生きていれば、マークが生きていれば、セリナが生きていれば——そんな思いは、どこかで強く根付いていた。
だが、もう誰も生きていない。
王国は敗北し、帝国の支配が始まった。それはカイたちの夢見た未来とは、まったく異なるものだった。
残された者たちは、ただ一つの現実に立ち向かうしかなかった。それは、破壊された王国の未来ではなく、戦争の後に待ち受ける新たな時代の始まりであった。
何もかもが失われた後、残された者たちが何をすべきか、どこに希望を見出すのか。その答えは、まだ誰にもわからなかった。
王国が敗れたその時、物語は終わりを告げた。しかし、希望を失った者たちにとって、その終わりは新たな始まりでもあった。
雷の音が再び、風に乗って聞こえた。それは、かつての戦友たちの思いを運んでいるようにも、未来へのひとしずくの希望を知らせているようにも感じられた。
