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「お前って奴は、お前って奴はぁーッ!!」

「マジなのかよ、なんでお前みたいな主体性もないカスが河上と付き合えるんだよ?!」

「どうやったんだ?」





河上が去るとワッと俺の周りに人だかりが出来た。 陰キャが急に人気者になったらこんな気持ちなんだろうなぁと遠い思考になる。




「なんもやってないって。 当たって砕けろでフラれるのが当然って思って告白したらOKだっただけで」

「そんなの告った奴誰でもそうだろが!」

「そんな気なら俺に寄越せ!」

「てか男に当たりキツくない河上っていつも以上に可愛かったな」

「ああ、それ思った」





うるせぇ…… 俺だってなんでかよくわからないのに付き合うことになったんだ。 でも可愛いとは思ったけど好きってわけじゃないのにそんな風に思わせる河上の可愛さはヤバいな。




てかあっちの河上は今頃保健室なんだろうか? 




…… もしかしてあいつのとこにも俺達が付き合ったって噂届いてんのかな? まさかな。






「おーい竜太君」

「げッ、河上……」

「何その反応? 来たら迷惑だった?」

「いや、迷惑とかそういうわけじゃ……」

「ならいいじゃん、昼休みだし一緒に食べよ」




駿は手を振り桐山は恨めしそうにこちらを睨んで送られた。




「んー、ここね!」

「図書室? ここって昼飯食べていいの?」

「なんかこの時間誰も居ないしバレなきゃいいっしょ、食べるだけなら時間もそんなに掛からないし」

「そ、そうか」




置きかけの本に誰も居ない図書室…… まぁうるさいよりマシか。 教室だと食べ辛いし。




「あ、それって竜太君のママ作ったの?」

「そうだけど…… 河上はもしかして自分で作ったり?」

「んー、それがいいならそうしよっかなぁ。 私も自分で用意する時もあるけど滅多にないし」

「え? ならいいよ、朝大変になるだろ?」

「けどママは毎日してるしそのうち私もそうなるのかなぁって思うとやっておいた方がいいと思ったんだ」




へぇ、俺はそんな風に思ったことがなくてこれが当たり前だと思ってたんだけど河上は違うんだな、人として中身も俺より全然上だよな。 マジで釣り合いも取れてねぇ。




「何?」

「河上って凄いんだなって思って」

「ありがと」




ニカッと笑う河上は自信に満ち溢れる笑顔だった。




俺もイケメンとかに生まれたら何事も完璧にこなせるようになったんだろうか? 




「ここ座ろ」




河上は椅子に座り隣の椅子をポンポンと叩いた。 ベンチの時より近くて河上の匂いが強く感じて変な気持ちになる。 仕方ないだろ、俺は高校生で発情期、可愛い女の子がこんな近くに居たら反応してしまう。




しかし河上にはただ純粋に弁当を食べる気しかないので俺の気持ちとは大分差がある。




「そういえば竜太君の友達のイケメン君居るでしょ? 名前はええと……」

「駿?」

「そう、その駿君ってさ、結構モテるでしょ?」




何故駿の話題がここで出るんだ? しかもモデルでしょ? って。 




「私の友達がさー、彼のこと好きみたいでどんな子が好みとか訊いてくれない? って頼まれてたりもしてたんだけどあんまり話したこともないし。 竜太君友達なら知ってる?」




なんだそういうことか、相変わらずモテるな駿の奴は。 あいつの好みって確かお淑やかでうるさくなくてそれでいて美人でとか凄く理想が高かったよな。




河上のことはタイプじゃないみたいだし…… そこに至って俺はハッとした。 なんかもうひとりの河上のことが思い浮かんでしまった。




いやいや、いくらなんでもそれは…… でも河上の好みのタイプがもし駿だったら? それはありえる! あいつイケメンだし。




「おーい、考えてるのはわかるけどなんで深刻な顔してんの? もしかしてドン引きするくらい変な性癖あるとか?」

「や、違うって。 お淑やかなのがタイプって言ってた」

「お淑やかかぁ…… それで居て美人とか?」

「あ、うん。 よくわかったな」

「なんかそう繋がる気がしたから。 まぁいっか、結局本人次第だしね。 私も昨日の今頃なんて君と付き合うなんて思ってもみなかったしさ。 あ! 早く食べちゃわないと」





そうして弁当を食べ終えると俺の視線はふいに図書室の本棚に向いた。




「竜太君は本とか読むの?」

「ううん、基本的には漫画とか。 あとたまにラノベくらいしか読まないかな」

「あー、私と同じだね」




俺が視線を外の方に移して少し会話が止まった、横目に俺を見た河上は俺の視線に目をやっているようだった。




ここからじゃ保健室は見えないな。




「何かあったの?」

「ううん、ただなんとなく」

「もしかして気になる子とか?」

「はあ!? な、なんでだよ?」

「冗談だよ、あははッ、本気にしたの?」









◇◇◇








竜太君と付き合ってこうして接してみたけど最初は何こいつ? って感じで告白もムカついた。




フラれるのが前提みたいな適当な告白をしてきたから。 だから意地悪でOKしてみた、案の定焦ってたからざまみろと思ったけどそれから情けない姿をこれでもかって見せられて私すぐ愛想尽かすんだろうなって思ったけど……




その情けなさが面白くてそれでいて変にカッコつけようとしてドジする姿にちょっとだけ可愛いなって思った。




私って変な趣味してるなぁ、告白されてもピンとこなさすぎて拗らせたのかもしれないと思いつつもそのまま竜太君と付き合ってみることにした。




けど彼は本当は私のことが好きじゃないかもしれない。 好きな人が他に居るのかもって思ってしまうくらい上の空になるんだよね。




不意に訊いてみたら凄く焦ってたし。 もし好きな人がいて私に告白してきたのなら何のため? 竜太君の人柄を見ていると別に深い理由でもない気がする。




なら本命に行った方がいい気がするけど竜太君が一方的に良い思いして私はポイか。




あはは、だったら私をここまで粗末に扱うなんて初めてだな、なーんて。 




ま、そんな相手に本気になるわけないか私が。 






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