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「てなことがあった」
「なるほど、この学校には河上いちかが2人いるわけか。 そしてどちらも美少女と…… なんかラブコメみたいな展開だな」
俺は駿に電話をして今日あったことを説明していた。
「だけどなぁお前…… クズすぎね?」
「な、なんだって?」
「そりゃそうだろ、最初に好きになったのは保健室登校の河上で、その後奇跡的にもう1人の河上と付き合うことになって色々あってそっちも好きになったってどう考えてもバッドエンドまっしぐらだろ!」
「うぐッ…… そうなんだよ、でも俺どっちにも嫌われたくないしどっちかなんて選べる度胸もないしどうしたらいいんだよ!」
「その言い方だと保健室登校の河上がお前のこと好きみたいな言い方に聴こえるけどお前にそんなに魅力があるのか? 何もかも微妙なお前に本当に魅力なんてあるのか?!」
「や、やめろ! 本当のことだから傷付く。 なのになんで河上は俺なんかと付き合ってくれんだよ? そっこー別れられるかと思ったのに」
「ガツガツし過ぎないところが良かったのかお前みたいな情けない奴が自分に告って河上には新鮮に感じたのか、それとも河上の好きなタイプが特殊なのか…… だが間違いなく言えるのはお前と河上が付き合っているということ! ふっ、俺ならともかく他の男子を敵に回したな」
「え!? お、おい!」
最後に不吉なことを言われて駿は電話を切った。
確かにそうだよな、駿みたいなイケメンなら文句言う奴らはあんまり出てこなそうだけど俺の場合だと……
そうだ! 秘密にしてもらおう、ナイスアイディア。
そうと決まれば竜太はスヤスヤと眠ってしまった。
次の日……
「そういや昨日の朝ここら辺で河上と会ったんだよなぁ。 また会えたりしないかな?」
登校中そんなことを考えていると……
「あッ…」
「へ?」
なんと本当に河上に会えてしまった。 奇跡かこれ?!
◇◇◇
昨日の朝はここで倉橋君と会ったんだよね、今日は遅刻じゃないけど会えるかな?
そう思っていちかは曲がり角で竜太が来るのを待ち続けた。
まだかな? あッ! あれってもしかして……
待ち伏せをしていたいちかはあたかもバッタリ出会ったように竜太と遭遇した。
「あッ…」
「へ?」
「倉橋君、えへへ、偶然だね」
「ああ、ビックリした。 また会えないかなって思ってたんだ」
嬉しい。 竜太の言葉にそう思った。 竜太も自分と同じで会えないかなと思っていてくれたことに。
そして昨日のことも気になっていた。 どうしてあの子と付き合いたいと思ったのか。 どこに惹かれたのか…… ていうのはなんだか想像出来る気がした。 あんな可愛い子モテるに決まってるから。
でも覗き見してたなんて言えないし、どこまでいったのか気になる。 そもそもなんで私は昨日会ったばかりの倉橋君をそんなに気にしてるのか…… だって初めて出来た友達だし。 それをすぐに盗られた気がして。 ああもう、モヤモヤする。
◇◇◇
くそ、今日も可愛すぎかよ河上は。 てかどっちも可愛いんだよなぁ……
「今日は遅刻じゃないね倉橋君」
「河上もな」
「昨日はグッスリ眠れたんだね」
「ああ、不思議とな」
やべ、学校が近付くにつれ緊張してきた。
「ね、ねぇ倉橋君……」
「なんだ?」
「昨日言ったこと覚えてる?」
「ん?」
「一緒に帰ろうって言ってくれたこと」
「ああ、勿論覚えてる」
「ホント? じゃあ今日一緒に帰れる?!」
「まぁ何もなかったら一緒に帰れるけど」
…… 何もないよな? 昨日はたまたま付き合ったばっかであっちの河上とデートしたんだけど。
ってこれってあっちの河上に対して浮気ってことになるのか? いやでもこっちの河上とは付き合ってるわけじゃなくて友達だし。 女の子の友達とこうして帰るのは浮気ってことにならないよな? わからん。
でもこっちの河上は俺が付き合うことになったの知らないわけだし保健室登校だから会うこともないのかも……
でも俺とそんなに帰りたいのかな河上は? 高校入って初めての友達が俺だからそうなだけなのかな?
「じゃあ約束ね、倉橋君!」
「ああ、じゃあ学校終わったらな」
◇◇◇
「倉橋〜ッ!!」
「うっわ! なんだよ桐山!?」
「この裏切り者め!!」
「なんのことだよ?」
「実はな竜太、昨日は桐山のデバガメ根性に付き合わされて告白の一部始終見てたんだ」
「マジかよ……」
人様の告白をこいつらは……
「持たざるもの同士と思っていたのにお前は、お前はッ!」
「お、落ち着けよ桐山、一部始終見てたんならわかるだろうけど俺かなり愛想尽かされてただろ? お情けだと思うからすぐに捨てられるって」
「私をそんな薄情者だと思ってたの君は?」
は? 河上がすぐそばに??
「おー、本人が登場じゃん」
「君達倉橋…… 竜太君の友達?」
「な、名前呼び?」
「だっていつまでも倉橋君じゃ余所余所しいでしょ? 付き合ってんだからこっちの方がそれっぽいし!」
河上の話を聴いてたクラスの連中が俺達に注目する。
「マジ? 今までOKしなかった河上が倉橋なんかと……?」
「嘘だろ?」
「え…… いちかさん男の趣味めちゃくちゃ悪くない?」
「あんなのがタイプだったのかな?」
「野郎…. ぶっ潰す」
教室の空気が変わった、そして俺と河上が付き合っているということはすぐさま伝わった。 てかぶっ潰すとか聴こえたんだけど気のせいだよな? ってすぐ横から聴こえたお前か桐山!
「竜太君、別に私は君の告白にはガッカリしたけど君のこと嫌いじゃないよ? 今思い返してみると悉くセオリー潰されて楽しかったし」
「竜太…… お前どんなデートしたんだ?」
「でもせっかく付き合ったのに竜太君ちっとも靡かないしそれはそれでムカつくんだよねぇ」
…… いや、今となっては好きなんだが。 でも何かあるとあっちの河上の顔が浮かぶんだけど。
「そういうことだから今日休み時間になったらこっちに遊びに来ようかなって」
「マジかよ…… なんか微妙な空気感になってるのに河上それでいいのか?」
駿がそう言うと河上はまた口に人差し指を当てて考える。
癖なのかな? まぁそんなとこも可愛いし。
「じゃあ出来るだけ人居なそうなとこ行こっか」
河上は俺に耳打ちしたのでゾクっとした。