41-45
41明日と今日
明日やろうと思うことを
今日やってしまえば
明日は楽になるにちがいない
けれど
今日やってしまうと
明日のことが忘れられて
明日が大事ではなくなるから
やらないでおこうと
思ったりしている
今日は今日で大事なことがあるはずだ
それを大事にしないで明日の大事を
やってしまえばどうなるか
わかったものではない
つまりはこれを屁理屈という
といっても
おならはしていない
地下アイドルだしね
嘘ついた
42春
春がいよいよ到来してきた
桜が蕾から芽吹き始めて
きれいな花を咲かせ
人は樹を見上げて
本格的な春の訪れを待ち遠しくしてる
待ちわびた手紙
花びらという手紙
差出人の名前はないし
切手や消印もないけれど
届けてくれたのは誰か知っている
宛名もないがそれがじぶんだとわかる
自然とやりとりする瞬間
その人は無自覚な主人公となっている
43光線銃
光線銃を試し撃ちしたかったので
彼女を標的にして撃ったら
死んでしまった
ぼくは彼女を抱き起こして助けを求める
やって来たのは彼女だった
誰よ、その女
というので
いや、彼女だけど
と答えると
それも、そっか
と納得した様子
これ、どうしようか、このまま捨てておくわけにもいかないし
彼女の処分に困っていると
それならわたしが代わりに捨ててきてあげる
と彼女は彼女を抱えてゴミ捨て場に向かう
まさかゴミにするつもりじゃないだろうな、彼女なんだし
と言うと
じゃあ、わたしと彼女どっちが大事なの?
と問いただすので
もちろんキミに決まってるじゃないか、捨ててきていいよ
と返すしかなかった
死んだ彼女のことが気になって仕方がないが
彼女の前でその気持ちを表にだすことはできない
彼女はあっさり彼女をゴミとして扱った
さすがにぼくにはできないことをやると感心した
彼女はもう何度も死んでいる
その傷跡は左腕に幾重にも刻まれている
彼女はそこらへん経験者だった
死んだ彼女はどうなったかといえば
四角い箱の中に無造作に入れられ
両脚が箱から飛び出ていた
ぼくはどうやら二人を愛してしまったようだ
一人なんだが二人
この気持ちをどこへやったらいいのか
わからない
捨てられた彼女を見ていると
愛が溢れ出てくる
一方生きてる彼女には優しさがこぼれてくるというか
気遣いする心が湧いてきていた
ぼくは光線銃でじぶんを撃ち抜いた
こうすれば一人が二人になるからだ
だが、ぼくは死に損ねたようだ
半身不随になって自由に動けなくなり
彼女に愛想を尽かされて
振られて終わった
ぼくは今、半身不随の身体で実体験を書いているが
嘘だと思うなら嘘でいいだろう
嘘は美しく都合よく語るべきものであり
事実はありのままの形をぐちゃぐちゃに反射して写した
虚構の万華鏡なのだ
44古代
古代
異邦人はまだらだった
古代
日本人は鉄製のキツツキだった
古代
九州人は窮屈だった
古代
地球は二つだった
古代
宇宙は気が大きくなりすぎて尊大で不遜だった
古代
宇宙をつくった元の存在はぼくより小さく
公園でなわとびをして遊んでいた
45メリークリスマス
春に
メリークリスマス
季節が外れている
冬はもう過ぎたかまだ先だ
だけど
メリークリスマス
春なのに
メリークリスマス
メリークリスマス
メリークリスマス
春だから
メリークリスマス
理由があるかもわからない
言葉のしっぽなんだ
メリークリスマス