第八話「独りで悩んで」
家に着いてから自室で精神疾患や統合失調症について調べてみる。
「うーん……イマイチ分からない」
しかし内容が難しくて淡々と書かれている文から病気を理解するのに苦戦する。
ある程度の内容を自己理解の範疇で理解出来たし、症状的な物もいくつか思い当たる部分がある。
ただ、先生も言っていたけれどやっぱり専門医に訊いた方が確かかな。
症状が合っていても似た症状を患う病気がいくつか候補として出てきたから、当然ながら素人では分からない。
それにネットの自己問診では『適応障害』と出る。
どちらが正しいのかも含めて病気については分からない。
「これってやっぱり、お母さん達に相談した方が良い……のかな? した方が良いよね」
病気ともなれば一人ではどうしようも出来ない。
でも相談すれば病気にかかった事で叱られるかもだし。
それも精神的な病気だから、情けないとか心が弱いからとか思われそうだし。
もちろん今の時代にそんな事を思う人がいないのも、精神病は多くの人が誰にでも起こるっていうのは分かっている。
分かっている、けど……
「本当に大丈夫なのかな……ママにまた、出来が悪いって思われないかな……」
身体が熱く、震える。
気がつけば涙が頬を伝う。
「ごめんなさい。ごめん、なさい…………」
何も言われてはいないけれど、ママが何を言ってくるのかを予測してしまい謝罪を述べる。
しかしその言葉は、ただ静かな部屋で空虚に消えて行く。
顔にヒビが入っているだけ。だから生活に支障もないし言わないという選択肢だってある。
お母さんだって理解してくれる。
だから大丈夫──
「大丈夫、だがらぁ……大丈、っだから……」
枕の横に置いてあるウサギのぬいぐるみを抱きしめて自分を励ます。
ずっと泣き続け、気がついたら夜になっていた。
お母さんが先に仕事から帰ってきたタイミングで目が覚めた。
「どお? ご飯お粥かうどんにするけど、食べられそう?」
「大丈夫。全然食べられる」
食欲の確認をしに来たお母さんに、しかし顔を見て話す事に少し躊躇いを覚えて壁の方を向きながら返事をする。
お母さんもそれだけ確認するとさっさと部屋を去って行ってくれる。
安堵と罪悪感、それと少しだけ寂しい気持ちを抱きつつ瞼に触れる。
泣いて寝てしまったために少し腫れているのが触っただけで分かる。
こんな姿を見せてしまえば、また心配をかけてしまう。それに何故泣いたのかを聞かれるかもしれない。
そうなったら病気になった事を言わなければならない。
せめて心の準備が整うまでは黙っておきたいから出来ればバレたくない。
そんなわがままが叶う事を神様に祈る事しか出来ない。
たださらにわがままを言って良いのなら、どうかこの病気を治して欲しい。