第七話「病院へ行く」
自分の状態に悩み続けて全然眠れないまま翌日を迎えてしまう。
「それじゃあ私も仕事に行くから。安静にしてなさい」
「はい……いってらっしゃい」
お母さんが部屋を出て行く。
そして静かになった部屋の中で天井を眺める。
見慣れた天井は少し安心する。
「ああー……久しぶりに嘘吐いて学校休んじゃった……」
そんな事はなかった。全然心は重いままだった。
眠れずに起きて行ったら心配されて休む事になってしまった。
皆心配してくれるのは嬉しいけれど、出来れば私の意見も聞いて欲しい。
「大丈夫」と言ってはいるのに聞き入れてもらえない。
……ううん、私の事を心配して言ってくれているんだから、こんな事思ったら失礼だよね!
「でも、別に体調は悪くないのに……」
気持ちが落ち込み、どうしたら良かったのかを考えようにも頭が上手く働かない。
「眠たい。けど寝れない」
目を瞑ると余計な事を考えて全然眠れない。
お母さん達には変な子だって思われるし、友達には心配かけちゃったし。
それもこれも全部この変な病気のせい!
「本当になんなの!! このヒビッ!」
その原因に怒りが湧き上がってくる。
「これさえなければあんな目には遭わなかった! 今まで通りに出来ていたのに! なのに……こんなヒビのせいで!!」
手でヒビを触ろうとするけれど、確かに触っているはずなのにヒビの感触がない。
しかしスマホの内カメラで確認してみるとある。
昨日と変わらずヒビが顔の半分を覆い、所々が欠けている。
「本当になんなの……」
理不尽な状態に涙が出てしまう。
しばらくの間声を上げて泣いた。
両親がいなくて本当に良かった。誰かに聞かれたら恥ずかしいし、また心配させてしまう。
一通り泣き終え、涙を拭く。
泣いたら少しだけ気分がスッキリした。
「のど渇いたなぁ」
それと同時にのどが渇き、ジュースを飲みに行くべくベッドから出る。
振らつく足取りで階段を降りてキッチンの冷蔵庫を覗く。
オレンジジュースを飲んでさらに気分が落ち着く。
「ふぅ……」
落ち着いた所でヒビについて考える。
昨夜悩み続けてもそれらしい答えはやっぱりなかった。
だからもう病院に行って徹底的に調べてもらう。
ネットで調べてみて一度病院に行く方が良いと書かれていたので行ってみる事にする。
お金も少しなら貯金がある。
「あ、保険証」
重要な物を思い出し、お母さん達の部屋へ取りに行く。
そして保険証を持って少し離れた所の病院へ行く。
誰かに見られる訳にはいかないから。
隣町の病院まで行き、自分の番になるまで待つ。
「九重さーん。お入りくださーい」
「はい」
看護師さんに名前を呼ばれ、診察室へと入る。
「本日はどうされましたか?」
「はい、実は……──っ」
自分の症状について話すためにお医者さんの顔を見た。
こちらを真剣な表情で見つめる先生の顔を見た瞬間、やっぱり話して良いのかと心配が襲ってきた。
「……どうされました?」
「っ……」
不思議そうな表情を浮かべて尋ねてくる。
慌てて答えようとするも声が途中で止まってしまう。
「……大丈夫。ゆっくりで良いですからねー。いつまでも待ちますから、自分のタイミングで話してください」
そんな私の気持ちを察してくれたのか、先生が優しく告げる。
先生の言葉に安心し、数回深呼吸をしてからゆっくりと口を開く。
「実は昨日から顔に変なヒビが見えるようになったんです」
肩の力が少し抜けた状態で話す事が出来た。
昨日の朝の事から夜に至るまでを全て話す。
「んー……」
私の話を聞き終えた先生は、口を手で隠す様に置いて考え込む。
その体勢で数分程考えた後にこちらに向き直る。
そして私の目を見ながら厳かに口を開く。
「分かりません」
「………………え?」
あっさりと突き放されてしまった。
唖然としている私を置いて先生は慌てた様子で話しを続ける。
「あ、申し訳ない。恐らくですがこれは精神疾患の一種なので、専門にかかる方が良いと思いまして。私では分からない事もありますので」
頭を下げてくれる。
それを慌てて辞めてもらい、気になった所を尋ねる。
「精神疾患、ってどういう事ですか?」
「症状からだけですとはっきりとは言えないのですが、最近食欲はありますか?」
「はい。ただいつも少ない方です」
「……では次に平衡感覚が危うい時はありませんでしたか?」
「平衡感覚、ですか?」
「はい。別に難しく考えなくて大丈夫です。足がフラついて歩き難いや転んだりする事が増えたりなどです」
「あ! それならあります」
「……なるほど。では次に……」
先生はさらにいくつかの質問を投げかけてくる。
過去の自分を思い出しながらそれに答えていく。
「……はい。ありがとうございます。しばらく結果に時間がかかりますので、一度待合室でお待ちください」
そう言われて診察室を出る。
先程自分が座っていた場所が空いていたのでそこで待つ。
そして数十分程して数人のお客さんの後に再度私が呼ばれる。
「お待たせしました。検査の結果ですが、恐らく統合失調症を患っている可能性が一番高くあります。そして次に──」
「え、あの、やっぱり病気なんですかっ? 私」
「いえ、そうではなく。ただ私が症状から考えただけですので、一概にその病気であると断定は出来ません。あくまで症例から私が考えての事ですので、詳しくは精神科医の外来をお勧めします。私では診断書も発行出来ませんので」
「分かり、ました……ありがとうございました」
最後に御礼を告げて診察室を出る。
そして支払いを済ませる。
足取りは重く、沈んだ気持ちで帰路に着く。
申し訳ございません。保存が上手く行っていなかったのか、文章が途中の物を投稿してしまいました。
確認不足も含め、申し訳ございませんでした。