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フェル 森で偶然助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと暮らしていく話  作者: カトウ


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製氷

 93 製氷


 ガンツのところに急いで向かう。あんまり遅くなってもガンツも困るだろう。


 フェルは今日オークを狩ったのだそうだ。今日の依頼は王都の東の方にある村にときどき現れるゴブリンの駆除だった。


 巣には20体もゴブリンはいなかったそうで、うまく連携して処理をしていたら、そこにはぐれのオークが現れた。

 エルビンとベリンダが素早く残りのゴブリンを切り捨てて、フェルはオークの攻撃を引きつけたらしい。

 そしてそこにエミリーさんが残りの魔力を全部使い、強力な弱体魔法をかけ、動けなくなったオークの首をフェルが斬り落としたそうだ。


 エミリーさんはそのあと気絶して、みんなで慌ててマジックバッグに死体を詰めて村に戻った。

 幸いエミリーさんはすぐ気がついて、持っていたマジックポーションを飲んだら、しばらくして動けるようになったので、無理はせず依頼票にサインをもらって帰って来たそうだ。


 メンバーの1人が魔力切れになり、周辺の偵察がきちんとできていなかったけど、依頼は達成したという扱いにしてもらえて、オークが出た不測の事態を逆にギルドから謝罪されたそうだ。


 この村には後日ギルドから改めて依頼を出し、周辺地域の調査と警戒をすることになった。


「オークの報酬の半分はエミリーに渡すことになった。自前のマジックポーションを使うことになってしまったからな」


「それでいいと思うよ。そのおかげでフェルも無事だったわけだし」


「調査には黒狼の牙が出るらしい。実はそのメンバーに私も誘われている。来週の月曜日だが、行っても構わないだろうか?」


「大丈夫だよ。僕もいろいろ街でやらなきゃいけないことがあるからね。無理して休みの日を合わせることもないよ。夕ご飯は美味しいものを作って待ってるね」


「明日は朝から狩りに行くのだろう?やはりゴードンの集落か?」


「それがね……夜来た冒険者の人がね、ホーンラビットの肉をいっぱい持って来て、肉をやるから俺たちにも作ってくれって。なんかその人たちにも唐揚げを作らなきゃいけなくなっちゃったんだよね。材料を渡すから作ってくれって言って。それも1人だけじゃないんだ。来る人来る人みんな持ってくるんだよ。20匹くらいあるんじゃないかな」


 もらったホーンラビットの肉はマジックバックに入れてある。帰ったら何か冷やす物を用意しないと。

 定食屋ミナミからガンツの工房まではそこまで遠くはない。中央に出て乗合馬車を使うと少し遠回りになってしまう。

 中央通りを横切って小熊亭の前を通り過ぎればガンツの工房はもう近い。

 小熊亭は相変わらず繁盛していた。夜はお酒も出してるもんね。


 工房のドアをノックするとすっかり顔見知りになったガンツのお弟子さんがドアを開けてくれる。


 ガンツは工房の真ん中で、何か作業していた。僕に気づくと作業をやめて、工房の一角に案内してくれる。


「言われておったのは精米器と泡立て器、それからピーラーじゃな。他に何か欲しいものはあるか?」


「ガンツ、精米器だけどまだ在庫はある?お世話になってる農家の家族の贈り物にしたいんだ」


「在庫はあるから構わんぞ。あとで持って来させよう」


「それからまた相談があるんだ。氷魔法を練習しているんだけど、なかなか上手くできなくて、水を張れる金属の容器があればうまくいきそうな気がするんだ。なるべく温度が伝わりやすい金属で、錆びにくいものがいいんだけど、何かあるかな」


「ん?よくわからんな。氷を作るのに容器が必要なのか?木のコップではダメなのか?」


 そう言われて、ガンツにまだ未完成の氷魔法を見せる。水はしっかり凍ったけど、木のコップは割れてしまった。


「こんな風に木のコップだと耐えられなくて割れちゃうんだよ。それに氷も取り出しにくいし。小分けに仕切ってある受け皿みたいなものが作れたらいいんだけど、こんな感じで」


 そう言ってノートに製氷皿の絵を描いた。


「オヌシの魔法は少し人と変わってるの。じゃが魔力の弱さを何か道具で補うという発想は悪くない。それを突き詰めると魔道具の効率化につながるんじゃ。なるほどの、この容器に水を張って、魔道具で温度を下げていけば、氷を作る魔道具になりそうじゃの。量産化できれば欲しがる者は多いかもしれん」


「特許って言い出すのはやめてね。そういうのはガンツに任せるから。僕が欲しいのはあくまでその製氷皿だから。でもその皿にレバーをつけて皿から外した氷が下に落ちるようにすれば少しの労力で氷が量産できるかもね」


「全く、オヌシはまたそうやって……まあ良いじゃろう。その辺は今更言っても仕方ないしの。金属の皿だったか、ちょっと待ってろ」


 ガンツはそう言って工房の奥からいくつか金属のインゴットを持って来た。


「錆びにくいものとなるとこれとこれじゃな。温度変化がしやすいものじゃとこれとこれになる。鍋などはこの金属とこの金属を合わせて作ったりするの」


 手触りがアルミのような金属はガンツが温度変化がしやすいものといった金属だ。


「ガンツ。これはどう?」


「これは良いとは思うが、このままでは使えんのでな、何か他の金属と混ぜて強度を出すのだ。そうすることで少しサビやすくなるかもしれん」


「別にすごく丈夫なものにする必要はないんだ。少し落としたくらいで壊れたりしなければ」


「それなら、まあいけるかもしれんな」


「小分けにする形が無理なら格子状に仕切りを作るだけでもたぶんいけそうな気がするんだ」


「それじゃと逆に薄く伸ばすのが大変じゃ、強度がもっと必要になる」


 ガンツと製氷皿についていろいろ意見を交わした。けっこう大事になっちゃったかな。


「鋳型を作るのは大量に作るわけではないから無理じゃの。鍛造になるな。銀貨1枚だ。数は2個ぐらいあれば良いのじゃろ?」


「ありがとう!あと保温箱をもう1つ作ってくれない?少し足りなくなって来たから」


「保冷庫を買えば良いではないか。だいぶ蓄えもできて来たのだろう?」


「もしもの時のことを考えて、お金を貯めておくのは大事だよ。僕だってフェルだっていつ怪我して働けなくなるかもしれない。それに王都に部屋を借りたいし節約は大事だよ」


「そうか、必要になったら言うのじゃぞ。良いものを作ってやるからの」


「うん。部屋が決まって余裕があったら家具とか少しずつ集めていくつもり。その時は相談するよ。安くしてね」


「わかっておる。オヌシと商売する気なぞありゃせんよ。遠慮なくなんでも言え。わしもお前に頼られて嬉しいのじゃ」


 そう言ってガンツは優しい顔になる。


 魔道泡立て器の試作品を僕ももらって、ガンツにお金を払って工房を出た。


 公衆浴場に寄って家に戻る。


 僕がホーンラビットをどうやって冷やしておいておこうか悩んでいたら、フェルが外に置いておけばいいと言う。そうか、充分夜は冷えるし、悪くなることもないか。野良猫とかにやられないように、袋に詰めてテーブルの上に置いておいた。

 

 明日は唐揚げ何個作ればいいんだろ。

 大変だ明日は。







 

読んでいただきありがとうございました。

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