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フェル 森で偶然助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと暮らしていく話  作者: カトウ


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幸せにする魔法

 73 幸せにする魔法


「じゃあ明日は7時に集合な。明日はケイたちは黒狼と、新人パーティーはアタシらと動くよ。じゃあお疲れ。今日は解散だ」


 今日の宿には食堂がなかったのでみんなで町の酒場に行き食事をとった。

 出された料理は少し味が濃かったがまあまあ美味しかった。お腹いっぱいになったところで解散して自由行動になった。

 僕たちはお酒を飲まないから、少し町を散策して宿に戻ることにした。町の中心には小さいけれど公衆浴場があった。宿に風呂はついてなかったから寄っていくことにする。


 公衆浴場から宿まではけっこう近かったので部屋に戻ってから髪を乾かすことにして宿に戻る。

 ベッドに座ってフェルの髪を乾かす。

 魔力循環ばかりやらされていたからだろうか、風を操るのが楽だ。風の強さも温度も変わらないけれど。風を操り優しく髪を乾かしてあげる。


「ケイ。魔法が少し上達したのではないか?いつもより風が心地よい。いつもそうだが今日はなにかやわらかい感じがする」


「魔力循環ばかりやらされてたからかな。風を操るのが楽なんだ」


「弓も凄かったな。あんなに遠くから放った矢が次々と的に吸い込まれていくのだ。狩りの手を止めて思わずみんなで見入ってしまった」


「止まってる的に当てるのが得意なだけだよ。実際にはあんまり役に立たない曲芸みたいなもんだから」


「そうか?森の中だからそうなだけで平原のオークならばかなり有利な攻撃ができそうだが。そうだ、今度オークを狩りに行ってみるか?ケイならオークを狩り放題かもしれないぞ」


「無理だよ。矢が外れてオークが向かってきたら僕なんてすぐ殺されちゃうよ。」


「そうか。心配しなくても近付いて来るやつは私が対処するから問題ないと思うがな」


「それだとフェルが危険でしょ。近接戦闘ができる人たちが何人かいればいいけど、僕たち2人だけは無理だと思う。危ないよ」


 フェルの強さならオークに遅れをとることもないと思うけど、僕はオークを見たこともないからな。お肉は美味しいけど進んで危険な狩りに挑戦するのは少しためらわれた。


 僕の髪も乾いて明日のためにもう休むことにする。

 部屋には小さなベッドが2つ。他には何もない。それぞれベッドに入ったが、フェルがなんか落ち着かないといい、僕の布団に入ってきた。小さなベッドだからフェルと密着してしまう。


 まあいいか。いつもこんな感じでくっついて寝てるし。

 フェルはもう寝息を立てている。

 僕も目を閉じたらあっという間に眠りに落ちていた。


 次の日起きたら疲れもなく、体の調子がいい。よく眠れたな。フェルが隣にいたからかな。

 それはフェルも同じだったようで、交代で着替えたら走り込みに出かける。

 フェルも魔力循環をやりながら走ってみると言って僕のペースで2人一緒に軽く流して走る。


「ケイ。意外とこれは難しいな。身体強化をせず、ただ薄く魔力を循環させるこの加減が難しい」


「そうなんだよ。ちょっと気を抜くと途切れちゃうからね。呼吸するみたいに自然にできないとダメだって、昨日ローザさんに言われたよ」


「これは良い訓練になるな。これからも私もやってみることにする」


 そのまま15分くらい走って宿に戻る。僕は汗だく。フェルは汗一つかいてない。

 僕だけ着替えて、朝食を食べに行く。


 スープとパンの簡単な食事を、目についた食堂で注文して食べる。朝食にパンは久しぶりな気がする。スープとパンで銅貨3枚だった。


「たまにはパンもいいが、私はケイの作る朝食が良い。滋養がありいつも美味しい。明日からは野営だからな。また美味しい朝ごはんを作ってくれ」


「いつも簡単なものしか作ってないんだけどね。でも自炊した方が安上がりだし、美味しいからね」


 フェルとそんな話をしながら宿に戻る。もう部屋はチェックアウトしてるから宿の前でみんなを待った。


 この町は王都の南の森からさらに南に行ったところにある。ここまでは道が整備されているから王都からは馬車で休みなく走ったら丸一日でたどり着けるそうだ。

 農業だけでなく、酪農も盛んらしい。朝市で牛乳とタマゴを買った。王都より少し安かった。


 馬車で町から20分ほど行った先が今日の狩り場だ。けっこう果てしなく続く草原に柵が用意されていた。

 材料をどうしたのかはわからないけど、いつもより長めにその柵は作られていた。


「この辺りからけっこう広範囲にホーンラビットが生息してるらしいな」


 黒狼の牙のルドルフさんが書類を見ながら言う。


「ケイ。こう言う場合はどうしたらいいと思う?エサは広い範囲に撒いた方がいいのか?」


 ルドルフさんは僕に意見を求める。


「エサは広い範囲に撒いた方がいいかもしれませんけど……ある程度はホーンラビットを誘導したいですね。柵の近くに集められれば効率的に狩りができると思うんですが……」


「ホーンラビットの嫌がる匂いをばら撒けばどうだ?魔物避けの香を炊いてみるとか」


 オイゲンさんが提案する。


「いいかもしれません。でも魔物避けの香って高いんじゃないですか?あんまり費用をかけると狩りの収入が減っちゃいますよ」


「そりゃ、買うと高いが、簡単に作れるものもあるんだぜ。野営で虫除けに使ったりもする。その辺の草で作れるから教えてやるよ」


 オイゲンさんから魔物除けに使える草を教えてもらって大量に集めた。これを乾燥させて燃やせばいいらしいんだけど、とりあえず僕がドライヤーの魔法で乾燥させた。


 草むしりの魔法も大活躍で、オイゲンさんに便利なやつだなと褒められた。

 

 できたばかりの魔物よけの草を、こちらの様子を見にきたロランさんに頼んで向こうの班に持って行ってもらい、僕たちは馬車で柵の向こう側の草原に移動して、程よい間隔でその草に火をつけてばら撒いた。10本くらいを1束にして火をつける。けっこう集めたつもりだけど、魔物避けの草はあっという間になくなった。


 煙を僕の弱っちい風魔法でなるべく広範囲に広げて柵のところに戻った。

 柵のところに近くの農家の人たちが見物に来ていた。何人かいた子供たちにお小遣いをあげるからと言って手伝ってもらい、魔物避けの草を集めることにした。


 フェルはこれから盾役や剣士複数人との集団戦の連携の練習をするらしい。

 ルドルフさんは任せてしまって悪いなと言って、子供達にお駄賃であげる銅貨を僕にくれた。


 1時間くらい農場の周りを探せば、麻袋3枚にぎっしり草が集まった。

 農場の雑草抜きも兼ねていて、柔らかくした土から子供たちがどんどん雑草を抜いて行き、農場の人にとても感謝された。

 ホーンラビットを駆除できたら、狩り場の雑草を抜くのを手伝ってくれないかと言われる。

 今回のリーダーが許可してくれたら午後手が空いた時にやりましょうと約束した。


 今回の狩り場の向こう側に農場を広げたいと前から思っていたが、ホーンラビットがいるので今までなかなか手がつけられなかったそうだ。


 集めた草をドライヤーの魔法で乾燥させる。麻袋の中に適当に草を入れてぬるい風を送り込み、それを循環させると効率よく草が乾いていく。

 子供たちが乾いた草を束にしてくれる。出来上がって、1人銅貨3枚、お小遣いをあげる。少ないかな?それでも子供たちは大喜びで親のところに戻っていった。


 僕も自分の力でお金をもらえた時は嬉しかったな。そのお金で何を買ったっけ?確かお砂糖だったかな。


 魔物避けの香をまたさっきより広範囲に撒いた。ぼんやりとしかわからないけど、ホーンラビットの気配が柵の方に移っていくのを感じる。またロランさんに追加でセシル姉さんの班に持って行ってもらって柵のところに戻ったら、フェルはいったん休憩で、今度は僕の番だと言われる。


 いろいろなパターンで弓矢での援護をさせられて、いい勉強になった。ここだと思うところに矢が決まるとなんか嬉しい。

 少し余裕ができたので魔力循環をしながら支援してみる。これはちょっと難しいな。でもできなくはない。

 だけど15分もやると頭が疲れてきてギブアップした。


 お茶を飲みながら休憩する。

 今はフェルと剣士2人、ルドルフさんとドミニクさんの3人で途中何度か立ち位置を変更したりして連携をとっている。

 それを見ながら、僕ならここに矢を撃つな、とか考える。

 オイゲンさんは昼食を作っている。

 解体係のギルドの職員さんは大変そうだ。でも町で何人か応援を頼んだみたい。肉屋っぽい人が2人、解体に参加している。


 けっこう狩れたなと思って最後に聞いたら、この日だけで500体以上のホーンラビットを狩ったらしい。ほとんどフェルの力だと思うけど。


 オイゲンさんはウサギ肉をぶつ切りにした鍋とパンをみんなに配って、昼食にした。塩と胡椒で味付けされて、臭み消しに香草を適当に放り込んだ鍋は、見た目に反してけっこう美味しかった。


 食後は狩り場の草原の草むしりをする。

 僕が魔法で土を柔らかくしていって近隣の農家総出で草を抜いていく。

 フェルがその抜いた草をマジックバッグを使って選別してくれる。

 魔物避けになる草と、薬草とただの雑草。雑草は肥料になるそうだ。

 2時間くらいやればけっこう広範囲で雑草が抜き取られた。柵は後で別の場所に作っておくそうだ。農場の男の人たちが柵の解体をしている。

 オイゲンさんが僕の周囲を一応警戒してくれていた。


「ケイ。お前ほんと便利な奴だな。今度一緒に南の森の調査の依頼を受けようぜ。ゴブリンの一件から定期的に調査の依頼が出ることになったんだ。いい小遣い稼ぎになるぜ。まだ人の手があまり入ってねーから採取でもしながら森を探索すればかなり儲かると思うぞ」


 オイゲンさんがそう僕に提案してくれる。狩りに連れていってやると言われたことはあったけど、一緒に依頼を受けようと誘われたのは初めてだった。なんか一人前の冒険者として扱われてるような気がして嬉しい。

 

「いいかもしれませんね。フェルも連れて行きたいから後で相談してみます」


「なんかセシルに聞いたが、料理も得意らしいじゃねえか。お前を連れてくとなんか快適に依頼をこなせそうだ。その便利な魔法もあるしな」


「戦闘の役に立たない単なる生活魔法ですけどね。もっと強い魔法を使えたらいいんですけど」


 オイゲンさんは僕の方を振り返り、その顔に似合わない優しい声で僕に言う。


「俺はその魔法、いいと思うぜ。誰かを傷つけることなく、生活を豊かにする。そりゃ確かに地味だし、戦闘の役にたたないかもしれねーが、その魔法は誰かを確実に幸せにする魔法だ。きっとお前は神様に愛されてるんだと思うぜ」


 あたりを見回すと、この広い荒れ地の雑草を抜く集落の人たちの姿が見える。

 子供たちが抜いた雑草の山に飛び込んで遊んでいる。

 女性たちがお茶を淹れ、休憩している人たちに配って回っていた。

 この集落に住む人たち総出で狩り場の雑草を抜いている。

 みんなが笑顔で、楽しそうに作業をしていた。


 僕の魔法のことをそういう風に言われたのはフェルの他にはじめてだったので、オイゲンさんのその言葉はすごく嬉しかった。

 

 




















読んでいただきありがとうございました。

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