明日の予定
68 明日の予定
午前中にギルドの食堂に行って、使っていない鍋などを借りて来た。フェルと2人で野菜の下拵えをして、切った野菜はお皿やザルなどに入れておく。
出汁はもう最初に仕込んである。
一昨日に大量にホーンラビットを狩っていたので今日は狩りに行く必要はない。その代わり朝の訓練はフェルと一緒にみっちりとやらされた。
ホーンラビットのスープを丁寧にザルで濾して、均等に分けて4つの鍋を用意した。
これはフェルにやってもらって、僕はその間お米を炊きはじめた。
はじめに2つの大鍋を使って雑炊を作る。いっぺんに作ろうとすればどうしてもコンロが足りなくなるのだ。
肉と野菜を炒めたり、お茶も作らなきゃいけないし。今はこの数のコンロでやるしかないから段取りよく作っていかないと。
最初の鍋2つを仕上げて次の鍋に取り掛かる。火加減を見ながら煮込んでいると知っている声がする。
「あんたたち、本当に炊き出しやってたんだね。なんか大変そうじゃないか」
セシル姉さんが近づいてくる。
「明日の集合時間と簡単な連絡があって来たんだ。料理はもうすぐできるのかい?私もなんか手伝うよ。配膳くらいならできると思うからさ」
セシル姉さんも手伝ってくれて、今日の炊き出しを開始する。
「今日は少しだけだけどおかわりもあります。足りない方は後で言ってください。取りに来れない人がいたら教えてください。その分を届けますので」
あっという間に行列ができる。
フェルとセシル姉さんがお茶と、雑炊の入った器を渡す。
配達なら任せてよと、姉さんが場所を聞いて食事を届けてくれる。
「おかわりする人はいますか?まだ少し残ってますよ」
「ガキどもちゃんと食べたかい?遠慮してるんじゃないよ。体が小さいうちはとにかく我慢せず食べな。そうじゃないと強くなれないよ」
セシル姉さんが言うと遠慮していた子供達が器を持って集まってくる。
10人くらいの子供達に雑炊を渡して、残ったものを僕たちもいただく。
「なんだいこれ、すごく美味しいじゃないか。リックがあれからおにぎりをよく作るんだ。なかなか美味いもんだと思っていたが、こんな風に汁物に入れてもいけるんだね」
「今日は調味料を少し奮発したんです。実は市場の人たちが協力してくれて、かなり安く食材を卸してくれるから、原価は銀貨1枚とちょっとくらいしかかかってないんですよ」
「しかしあんたら2人だけじゃ大変だろう。暇な奴らに声かけておくよ。休みに昼から飲んでるくらいなら炊き出し手伝ってこいって」
「いや、人を雇うなんてできませんよ。せいぜい炊き出しの料理を振る舞うくらいで」
「それくらいでいいんだよ、みんな炊き出しとかに世話になって一人前になって行ったんだ。アタシたちだって稼ぎがない時はもらって食べてたよ。雨がよく降ったときは最悪だった。そんなときにはよく助けてもらったものさ」
「セシル姉さん。それで要件はなんですか?」
「忘れてたよ。明日の予定を話しに来たんだ。明日9時にギルド前に集合だ。同行パーティはアタシたち赤い風とアタシらと同じBランクの黒狼の牙。あとは新人のなんて言ったか、忘れちまったけど3人組のパーティが参加する」
けっこう参加するんだな。僕たち以外にも新人のパーティか。狩り場は足りるのかな?
「基本的に2組に分かれてやっていく予定だが、初めはあんたたちのやり方を見せてもらって、それから二手に分かれることになるはずさ。今回は効率のいい狩り方を試すと同時に、それぞれの戦い方の指導、連携を中心とした訓練を行うんだ。その指導係ってことでアタシらBランクパーティが呼ばれているってわけさ。初日は狩りの方法を教えてもらってそれぞれ個別に訓練だね。2日目から本格的に狩りをする。昼過ぎまで狩りをしたら夕方次の場所に移動して全部で4ヶ所の地域を回って王都に戻ることになってる。王都に戻ってくるのは6日後。5日目は宿に泊まって次の日はゆっくり王都に帰還する感じかな。3日目と4日目は野営することになるのでその装備も忘れずに持ってくるように」
「野営の時の食料は各自持参ですか?」
「アタシとしてはケイに作ってもらいたいところだが、今回はきちんと当番制にする。野営の訓練も兼ねているからね。食材はギルドから支給されるが、持ってくるなら受付に一言言っておいてくれ。後で精算してくれるってさ」
「わかりました」
「じゃあアタシは戻るよ。明日からよろしくな」
「はい。よろしくお願いします」
セシル姉さんは洗い物までしっかり手伝って帰って行った。
訓練も一緒にやるのか。もう僕らのやってたような狩りとは違うものになりそうだな。野菜とかは現地調達できるとして、調味料はどうかな。少し買い足しておこうかな。
後片付けした後で市場に行って足りないものを補充する。
そのまま公衆浴場に行ってお風呂に入った。
「今日の炊き出しも大変だったねー。付き合ってくれてありがとう」
今日は夜でも少し暖かかったから、外のテーブルに座ってフェルとお茶を飲んだ。
「疲れていないか?今日もずっと立ちっぱなしではないか」
「特に料理をしてて大変だ、とか疲れたっていうのはないよ。フェルも手伝ってくれるし、自分のペースで作業できるし」
「ぺーすというのがよくわからんが、無理なくやっているということか?」
「うん。前回よりも効率よくできたからその分楽に作れたよ。セシル姉さんが配膳を手伝ってくれたのも大きかったかな」
「セシルはああ見えて気の利く女性なのだな。私の方がむしろセシルに支えられていたように思う」
「けっこう気の付くすごい人だからね。だからなんとなく姉さんって呼んじゃうんだ」
「確かにその気持ちはわかる気がするな。明日は他にも冒険者が来るのだったな。少し訓練の時間が楽しみだ」
フェルは訓練が大好きだもんな。そうじゃないとこんなに強くなれなかったろう。僕も明日は頑張らないと。
明日の朝はオムレツが良いとフェルが言ったので、明日の朝はタマゴ料理だ。
布団に入ってまた寄り添って眠った。
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