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第一話「再誕少女 」/ 気がつけば朝がくる

いつぞやぶりに情熱が再燃して書き始めました。

リハビリも兼ねてなのでそのうち色々と再編集もするかと思いますが、お付き合いいただければと思います。


また舞台設定の都合上、ジャンルをハイファンタジーにしておりますが、私自身もっとしっくりくるものを探しております。指摘等があればこっそり変更するかもしれません。

喉が渇いた気がして体を起こした。声を出そうとするが、胸が詰まって唸り声のような音しか出ない。

浅く呼吸を繰り返しても、どうしても咳にしかならなかった。

ベッドサイドには小さなコップと水差し。これは頼んで置いてもらっているものだ。


(またなのね……)


たっぷりと時間をかけて朧げだった意識がまとまっても、寝る前に何をしていたのか全く思い出せなかった。


力がうまく入らない手を伸ばし、ようやく一杯の水を飲み干す。喉を通っていく冷たい水が、空っぽの胃に注がれて音をたてたような気がした。


(今日は何日なの……?)


東向きの大きな窓からは柔らかい光がさしている。ちょうど夜が開けた頃なのかもしれない。そろそろ使用人が見に来る時間になる。


服は問題ない。汗をかいてしまっているが、それはきっとこの後どうとでもなる。今はそれよりもちゃんと目がさめたことを知らせたほうがいいと思った。


呼び鈴を鳴らして少しの間だけ待つ。その間に最後の記憶を探った。


(えーっと…確かお店で話をして、荷物は送ってもらう。帰りの馬車に乗り込んで……)


思えば朝からちょっと熱っぽいような気はしていた。医師からは前兆かもしれないから、おかしいと思ったら早めに対処しなさいと言われている。


ただ、最近は身体が慣れてきてしまっているのか、調子のせいなのか前兆なのかギリギリまでどうなるかわからないことが増えていた。


どうも今回は前兆だったらしい。一緒にいたのが長年一緒にいる女性の護衛で助かった。


胸をなでおろしていると、小さな音がして扉が開いた。軽鎧をつけた女性が入ってくる。

記憶の上ではついさっきまで一緒にいた相手だった。


「お嬢様、大事ありませんか?」

「ええ。大丈夫よ」


扉が開かれたというのに廊下はとても静かだった。まだ今日は始まったばかりなのだろう。


「それで、私はどのくらい寝ていたのかしら」

「お嬢様が倒れてから二日目です」

「そう。まる一日はたっているのね……」


決して短くはない。身体の調子は悪くないけど寝ていた時間が長かったためかだるさが拭えない。


「誰かに見られたりは?」

「幸いにも馬車の中でした。馬車の一部が焦げました(・・・・・)が御者含めて目撃者はいません」

「じゃあ昨日の予定がキャンセルになっただけね?」

「はい…ご友人とのお茶会もありましたが、昨日の朝に辞退を申し伝えております」


頭の痛い話だった。うち一人は寄親の家であるため事情は説明してあるが、何回も突然出席しないとあっては面子を潰してしまう。

特にここのところは発症してしまうことが多く、年間で一回くらいキャンセルをしていた。


(もういっそ先に発作を起こしてしまったほうが……)

「お嬢様、先に倒れようなどと思わないでくださいね?」

「でも……」

「確かに今日から少しの間は大丈夫でしょう。でもそれはいつまでですか?」


それがわかれば苦労しなかった。今のところわかっているのは、冬場のほうが頻度が高いことと少なくとも見た目のダメージがないことくらいだ。


(言ってないこともあるけど、ね……)

「とりあえずお風呂に入ってもいいかしら」

「ダメです。少なくとも倒れていたのは事実ですから、今日は体を拭くだけにしてください。そうでなければ周りへの説明が成り立ちません」


仕方がないこととはいえ、さっぱりしたかったのが本音だ。この様子では部屋の外に出ることすら許してくれないだろう。


「結構気持ち悪いんだけどな……」

「お嬢様……」

「わかってるわよ。それでも言いたかったの」


視線を背けるけど、小さくため息が聞こえた。呆れているのか、苦々しく思っているのか。

それを見る勇気はなかった。


「お湯とタオルを持ってきます。その後、朝食を持って決めもらいますが――」

「麦粥でしょう? 干し肉くらいなら隠してあるからどうにかするわ」


周りは単純に病弱だど思ってるはずだから、病人食を拒否できるはずがない。苦肉の策として本来なら旅行や遠征で使用される携帯食料からいくつか見繕っていた。


出てくる食事の味が薄くともどうにか満足できるように。


「それでは行ってまいります」

「ええ。できればお菓子も持ってきて」

「……ビスケットくらいでよろしければ」


再度扉が開かれるとちょうど通り過ぎて行く使用人がみえた。流石に仕事が始まっているようだ。


彼女が出ていった後、もう一度水を飲み干すとあまり時を待たずしてお湯とタオルがやってきた。流石に背中は自分一人では拭けないので拭いてもらった。


「お嬢様は本当にきれいな肌をされてますね」

「……ありがとう」

「昔は結構お転婆だったと聞きましたけど、本当なんですか?」


この子はここ二、三年で入った子だ。使用人の中では私に年齢が近い。優秀だからこういった役割も任されているのだが、年齢の近い相手というのは貴重なのだろう。こういった一線を越えかねない質問もしてくるのだった。


「小さいときのことは私もあまり覚えていませんよ」

「そうですか…はい。終わりました」


こんな話をしていたと周りにバレればきっとまた小言を貰うんだろう。同情はするが、そこは仕事だと割り切ってもらいたい。


「それでは失礼しますね」

「ええ」


扉の外で待っていたのか、入れ替わりに朝食が運び込まれた。

厨房からは少し離れているため、表面が少しだけ乾き始めているのはいつものこと。机の上に並べられた食事をゆっくりと噛み締めた。


「ひとまず午前中は部屋で寝ていることにしましょう。大きな音をたてなければ自由にできます」

「ビスケットはあるの?」

「こちらに。少ないですがご勘弁ください」


渡されたのは五枚ほど。本当に携帯食料でしかない…。


「わかった…とりあえずゴロゴロしてる」

「午後のことは奥様と相談してきます。また来ますね」

「……」


軽くお辞儀をするとワゴンを押して出ていった。

しばらくそのまま座り込んでいたが、ノロノロと立ち上がると私はベッドに倒れ込む。


天蓋付きのベッドは全身を余すところなく受け止めてくれた。一人で寝るようになってからこのベッドはすでに三代目だ。二度も燃やして(・・・・)しまった。


(どうして私はこうなのだろう……)


最初のうちは怖くて仕方がなかった。今でも恐怖は拭えない。

専属の護衛がつくようになってからようやく比較的自由に動き回るようになったが、それでもこの街の一部だけ。いつ何時発作を起こしてしまうか。それだけのことなのに恐ろしくて仕方ない。


そのうち良くなると聞かされ続け何年たったのか。もう考えたくもなかった。


(もう消えてしまいたい……)


友人どころか家族にも迷惑をかけ続けている自覚はある。

今回も馬車が焦げたという。うちにある二台のうちの一台だ。不便になることは間違いない。


憂鬱な気分が晴れないまま時間だけが過ぎていく。発作を起こしてしまったから、午後からは診察を受けなければいけないかもしれない。

今まで前向きな話は聞けなかったから、今回もあまり期待できていない。これも気分が塞ぐ原因だった。


(私はどうすればいいの……?)


悩みは深く、誰の目にも触れない場所で凝っていた。

陽の当たらない心の奥底で。

読んでいただきありがとうございます。

第一話はおおよその構成はできておりますが、時間が取れないため毎日投稿は難しいかもしれません。

少なくとも切りのいいところまでは書き上げるつもりですので、お待ちくださいますようよろしくお願いいたします。


話の順番が納得行かずに無理やりねじ込みました。

そのうち修正します……

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