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1話「城から追い出され」

 私アイリーン・コレストには婚約者がいる。


 そう、この国の王子である人だ。


 貴い人とされている彼の名はオーウェン・ディル・ブリッジ。

 将来国王となることを約束された青年。


 彼が私を気に入ったことがこの関係の始まりだった。そして今、正式に彼の婚約者となっているが、そのことを良く思っていない人が実は一人いる。それは、オーウェンの妹である、メルリナ姫だ。彼女は出会って間もなくから現在まで私を酷く嫌っている。メルリナが周りに「髪色が一緒で最悪」などと言っていることを知ったいた時には、そこまで嫌われているのか、と、かなり驚いた記憶がある。


 それでもまぁそれなりにやっていければと思っていたのだが。


「アイリーン・コレスト! お前との婚約は破棄とする!」


 ある日突然宣言される。


「オーウェンさん、一体何が……?」

「妹から、メルリナから、話を聞いたんだ。お前、裏で彼女に嫌がらせしていたそうだな」


 彼はそんなことを言うけれど、まったくもって心当たりがない。


「何の話でしょうか」

「認めろ!」

「待ってください、恐らくそれは事実ではありません」

「認めないか!」

「嘘を事実と認めることなどできません」


 そこへ、メルリナが現れる。


「お兄様! 騙されないで! その女は嘘をついているのよ!」

「メルリナ」

「アイリーン、貴女、もう許さないわよ!」


 ええ……、本人まで参加してくる……?


 二人して嘘を使って攻撃してくるなんて。どうしてそんなことがしたいのか、私には理解ができない。何がどうなっていればそんなことをしようと思えるのか、謎でしかない。


「ほらな、メルリナも言っているだろう」

「心当たりがありません」

「我が妹を嘘つき呼ばわりするな!」

「嘘つき呼ばわり、なんて、そんなつもりはありません。しかし、私は、本当に虐めていないのです。人違いでは――」

「お兄様信じないで!! 間違いなく、あたくしを虐めたのは彼女よ!!」


 いや、本当に、一体何がどうなっているのだろう?


「そういうことだ。だから婚約は破棄とする。アイリーン、お前は速やかにここから去れ。城から出ていけ」

「そんな……」

「何だ? 口ごたえする気か? そんなことは許さん!」

「そうですか……分かりました」


 そう言うしかなかった。

 だってそう言うことでしか話が進まないから。


「ですが勘違いしないでください。私は本当に、一度も、虐めなどしていませんので」


 こうして私は城から追放されることとなった。


 用意されていた馬車、それは最後の優しさだったのかもしれない。


 私はそれに乗って実家へ戻る。

 生涯で最大の悲しい旅。

 いや、旅ではないが、大移動だ。


 しかし、まさか、こんなことになるなんて……。


 メルリナに嫌われていることは知っていたけれど、ここまで露骨に嘘をつかれ悪者にされるとは思わなかった。


 刹那、キキィと音がして、馬車が停止した。


「え……?」


 直後、扉が開き、全身のグレーの布で包んだ正体不明の人物が入ってくる。


「ウゴクナ!」

「ジットシロ!」


 何が起きた?

 これは一体?


 はてなマークに埋もれているうちに、私は気絶させられた。

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