男女の違い
「ねーねーおかーさん、男の人と女の人の違いってなあに?」
ある日。娘がそんなことを尋ねてきたので私は困り果てた。
子供は稀に奇怪な質問をするものである。特にうちの娘は好奇心が強く、よくそういう質問を投げかけられるのだ。
まだ幼い娘に、性器の違いについて教えるのは無粋だろう。彼女が問うているのは、もっと内面の話に違いない。
近年、男女平等という思想が広まっている。
私もそれに賛成である。が、実質平等とは思っていない。
男女にはそれぞれ役目があるのだ。
「ええとね。男の人は狩りをするの。食べ物を摂ってくるのよ。それで女の人は、ご飯を作ったり子供のお世話をするの」
「ふーん。でも、隣の家のお父さんはお家でご飯作ってるよ。あれは女の人なの?」
またも手厳しい指摘。そう簡単には逃してくれないらしい。
私は深く考えて、次の答えをしてみることにした。
「男は女を助けるためにいる。女は子供を増やすためにいるのよ」
「でもでも、女の人を助けない男の人もいるよ。それに子供を産めない女の人もいるでしょ?」
図星だった。
この子は将来、哲学者になるのではないか。そんなこと思いながら私は適切な答えを求めた。
その時、ふと閃いた。
「――そうだわ。男はね、理屈で考えるの。女は気持ちで考える。これが、男と女の違いなのよ」
娘はようやく納得したように頷いた。
「お母さん、すぐ怒るもんね。それは気持ちで考えるからなんだね!」
なんだか少し腹が立ったが、まあそういうことだ。
私は確かに感情的である。これは女のサガと言えるのかも知れない。
その後。
私は洗濯物を畳みながらふと思う。
でも理屈っぽい女もいるし、感情的な男もいるではないかと。
結局、差なんてないような気もする。けれど同じだともやはり思えない。
世の中には確かに男女の仕切りはあるのに、それが透明で皆よくわかっていないのだ。それをはっきりさせないから差別が生まれるのではないかと私は考える。
一体全体男女の違いとは何なのだろう。私は思考の海へと深く沈んでいった。