六話
「んっ」
遥華と別れてから、一日が過ぎた。必死に一人でひたすら歩くうちにどうやら寝ていたようだ。
そんなことを考えて身体を起こして目をこする、トンネルの中、そのトンネルは山にかこまれた村と外部をつなぐ通路なのだが本人はそれを知らない、人の流れに沿って一人で歩くうちにたどり着いただけに過ぎない。
「どうしよ、どうしたらいいのかな……」
膝を抱えてうずくまる。
「遥華、寂しがってないかな……」
フルフルと首を横に振ってもう二度と会えない唯一の親友のことを振り払う。
「死にたくない……」
「死にたくないのかな……」
遥華と別れて一人で歩き、やがて眠って目を覚ます。日が差し込み伸びる影がやけに暗く見えた。
アンタは生きていきたいっていうの?
「仕方ないじゃない、私は……死にたくない」
アンタなんかが生きてたところで喜ぶ人なんて誰もいないじゃな。
「うるさい! あんたに何が判るのよ!」
またそうやって、だいたい、もう噓つくの辞めたら?
「噓なんかついてないわ……」
「それが噓、アンタは別に生きたいと思ってない。」
「噓じゃない、私は、私は……」
「私は一緒に生きたいの、一緒にいたいの。遥華と、二人で……」
「いやだ、いやだ。離れ離れになりたくないよ……」
「だったら、答えはもう決まってるでしょ? 」
「えっ」
空は曇り始めた。やがて太陽は隠れて、未来の影は消えていた。
「遥華……遥華。」
目をこすり、幾度となく呼んだ彼女の名前を呼ぶ。
「いかなきゃ、私、戻らなきゃ。」
迷いは。なかった。