愛す者と愛される者、愛されるべき者と愛されない者
一人の男と思いつめた顔をした少年が一人
両者の立場をわきまえた上で対面していた
「父上・・・いえ 陛下
一つ お願いしたき儀があります」
少年がそう言った瞬間
もう一人の男
つまりはこの国の王であり
少年の父親でもある男の眉毛が
ピクッと跳ねた
「ダメだ」
「っ ちちっ
・・・陛下
なぜでしょうか?」
「どうせ貴様は
あの女のことだろう?
最近はそればかり考えているようではないか」
「そんな・・・ことは・・・」
ない・・・とは言い切れなかった
それほど彼は彼女を愛していた
その彼女が死んだと噂される
今でも その思いが廃らないほどに
そして同時になぜだという疑問が彼の中で渦巻き
最近の彼の生活に支障をきたしていた
これは彼には関係なく
彼女自身の中身の問題なのだが
彼は知らない
自分に問題があったのかと
ずっと自問自答を繰り返す
そんな生活を送っているのを
目の前に座っている男は
たしなめたのだ
「そのように過去にすがっていては王にはなれんぞ」
「・・・はい
ですが 今回は彼女のことではありません」
嘘である
実際は彼女のことしか考えられていない
そして今回のことも
彼女のことを考えるために
考えたことだ
「ほぉ?そうか
余の勘違いであったか
申してみよ」
彼女のことではないと言った瞬間
雰囲気が一変する
それは国家の主人として
臣下の意見が役に立つかどうかを見定めるものであった
「はい この度は
私の留学をしたいと思う
気持ちを申し上げにきました」
「・・・・どこにだ?」
「アウサー王国のフィネス学園です」
彼があげたフィネス学園はこの世界では
有名な権謀術数の渦巻く
貴族の裏世界の縮図と言っても過言ではない場所であった
そして 偶然にも
彼の愛する彼女の中身が買った乙女ゲーム「恋愛感情渦巻く世界で」
の舞台であった
「・・・・いいだろう」
国王から正式に許可が出され
一人の少年が
建前上は成長するための留学
裏では彼女の考えを考えるためという
二つの感情を抱え
人生と国の出発点に立った時
もう一人
希望を胸に抱き
新しい人生の出発をしている人間がいた
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あ イタタタ・・・
やっぱり この崖大きかったかなぁ?
危なかったなぁ
あともう少し深ければ
魔力が切れて死んでたね
さ〜て
ここまで落ちて来たわけだけど
どうしようかなぁ
私森の中でサバイバルとか初めてだけど
大丈夫かな
がさ がさ
わ〜お・・・
これは私ピンチかな
おっきいねぇ
私こんな経験初めて・・・
「おい 何してるんだ?」
キェェェェェェェッ!!!
シャベッタ〜!?
おっきい狼なのに!
「えっあ いや 別に何もしておりませんよ?」
あ でも
しゃべれるんだったら大丈夫かな?
まぁ逃げても死ぬだろうし・・・
「ほぉ?
ここまで来たのに何もしてないと?
まぁ いい
どこから来たんだ?
その様子だと 落ちてそんなに時間は経ってないだろう?
送っていってやろう」
「いえ その必要はありません」
「・・・じゃあ どうするんだ?」
「どうしましょうか?」
「・・・はぁ
俺の背中に乗れ
この辺は危ない」
「え?外には出さないでくださいね?」
「あぁ 大丈夫だよ
どうせそのうち帰りたくなるだろう」
「・・・それでは失礼して」
もふもふ〜
あぁ〜これは天国だなぁ〜
いやわかりきってたけど
これはすごいわ
このまま一生いたくなるね
っあ? いつのまにか寝てたの?
まぁ仕方ないか
めちゃくちゃに気持ちよかったからね
もうちょっと感じてたかったけど・・・・
それにしても
ここってどこなんだろ?
あの狼にしては立派な家持ってるけど
外は相変わらず森の中で鬱蒼としてるし・・・
「お やっと目が覚めたか」
・・・誰これ?
「あのどなた様でしょうか?」
「お前を運んだんだが」
「あなた人化とかできるんですね」
「いや もともと人だ」
「じゃあ なんでこんなところに?」
「それは・・・
いや お前が異常なだけなんだよ
俺を見ても逃げようとしなかっただろ?」
「いや それは逃げても無駄だろうなぁって」
あれ? 話をすり替えられたな?
まぁ 聞いて欲しくない話なんだろうね
まぁ そのうち聞く機会があるでしょ
ここに住むんだったら
「・・・俺はお前の想像してるようなやつじゃないぞ」
「大丈夫ですよ
さっき わかりましたから」
「・・・そうか」
そうして彼は髪の伸ばしていない顔の口を緩ませた
ワァオ いけめ〜ん・・・
こういうのがよかったんだよねぇ
意外と私の口も開くし動くし
こんな感じでよかったんだよねぇ
のちに有名になるには時間はかかったが
次第に広まっていく形で広まったのがよかったのか
彼女の家族や国には知られても調べられなかった
今日も有名な獣と呼ばれた男と普通の人間との
格差婚の有名な代表例である
ここまで読んでいただきありがとうございました
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