前編
恋愛という書いたこともないジャンルに手を出してしまいましたので
自分でも結末がどうなるかわかりませんが
完結はするつもりなのでお付き合いください
キキッーーーーーーという耳に悪い音で
寝ぼけていた頭が働き出す
ちらっと音のした方向に視線を送ると
大きなトラック
そして 運転席で必死の形相で何かをしている人
それがこちらに向かってくる
あ 死んだなと思った瞬間
視界がゆっくりになり
心臓の鼓動、頭の働きが急激に活性化されていくのがわかる
その目覚めた脳でこれが最近はやりの殺人トラックかぁ
などと余計なことを考えながら
私こと、黒崎はトラックに轢かれ
動かぬ肉塊となった
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あぁ〜 疲れた〜
あれ夢かね?
めっちゃ怖くね?
あれ正夢だったりして・・・
ま そんなことないか
私 外でないし ハハハハ はぁ・・・
ん?いや あの時なんで外出たんだっけ
あぁ そうだ
新作の「恋愛感情渦巻く世界で」とかいう
仰々しい名前の乙女ゲー買いに行ったんだっけ
そして・・・・轢かれて死んだ と
あぁ〜 なんか思い出してきたなぁ
死んだなぁ〜 なんか死んでたなぁ〜
でも 何で 私こんなに思考できてんだろ
はっ! そうか
これはあのかの有名な異世界転生もの!
そっかぁ〜 あれ
私が読んでる中だと
異様にチートハーレムの男主人公が多いから
女は貴族転生しかないのかと思ってたけど
ちゃんと 機会は平等なんだねぇ
いらねぇ〜
私みたいなコミュ弱に
二次元キャラのガワを急に着せられて
二次元のイケメンキャラと話すの?
無理無理っ!絶対にむりっ!
せめて 顔面に何か装甲でもつけてもらわないと・・・
んんっ アブラゼミっ!!
はっ!何を口走ってんだ 私
あれ?目の前真っ暗・・・
転生して始めの人生ハードモードですか?
いや まだ 転生が決まったわけじゃない
どっかの掲示板で仮死状態の人がこんな体験を・・・
あ なんか 光見える
何これ
あれ? 手が見えない
ちゃんと動かしてるのに・・・
なぜ?
あっ!もしかして今 手足なかったり?
事故の影響で?
いやぁ〜 そこまで酷くはないと思うんだけどなぁ・・・
コンコンとドアをノックする音が聞こえ
「お目覚めですか」という可愛らしい声が聞こえる
はっ 何だこの可愛らしい声はっ!
テンパってしまった 私は
「お目覚めです」と違和感の感じる日本語で答えてしまった
手 あげた感覚が残ったまんまだけど
大丈夫かな?
まぁ 本当にないんだったら
これから説明してくれるでしょ
そう考えた途端
体が勢いよく持ち上げられる感覚に陥る
「よかったです
いつもはよく眠っておられなので
今日はしっかりと起きてらっしゃって
さて アイシュリー様
今日は 第一王子様が会いにきますよ
しっかりしてくださいね」
「ありがとう アン」
あれ? 勝手に口が動いた・・・
てか さっきから体が勝手に動くんですけど・・・
あ 手が顔の方に・・・・
ふぁっさぁという擬音語が聞こえそうな
髪の毛の量だった
なぁにこれ・・・
私は絶句してしまった
整った顔立ち
モデル並みの九頭身
そして何より
めちゃくちゃな量の銀色の髪の毛
てか さっきのアンってメイド?
鏡ごしに顔を確認すると
私が乗り移ったこの体ほどではないが
多い髪の毛
そしてメイド服
あれぇ・・・転生しちゃったかぁ・・・
しかも令嬢の方に・・・
めんどくさそう〜
「アン」
「はい 何でしょう」
「私帰ってもいいかしら?」
アンは全身で驚いたような表現しながら
目をパチクリさせたような気がする
見えない・・・顔が見えない・・・
「いえ なんでもありません」
「わ わかりました・・・」
「それで?今日はなんでしたっけ?
第一王子が来るんでしたっけ?」
うわぁ〜 絶対めんどくさいよぉ
あれでしょ?
どうせ家庭的な事情か何かで顔を隠してるんでしょう?
それなのに婚姻を結んで来るなんて・・・
絶対やばいやつじゃん・・・
「あの・・・
アイシュリー様」
「ん?何かしら?」
「失礼ながら
愛称・・・では・・・
呼ばないのでしょうか?」
あぁ〜
そんなのあるの?
えっとじゃあ・・・
名前・・・思い出せない・・・
やばいねぇ〜
「あぁ〜 えっと〜
大丈夫よ」
全然思い出せないなぁ〜
意外とこの人興味なかったり・・・
「・・・そうですか
失礼しました
これからの予定ですが
第一王子様がアイシュリー様にお会いにくるので
支度をしますので落ち着きましたら
部屋の外に出てきてください」
「わかりましたわ」
愛称・・・
メイドに言われるってことは
言い合わなきゃダメな場面があるってことよね?
どっかに書いてないかしら・・・
あ 見つけた
こんなわかりやすいところに・・・・
でも なんでこんなところに出してるんだろ・・・
あと お嬢様言葉どうにかなんないかなぁ・・・
私が言ってると思うとちょっと気持ち悪いんだけど
まぁ いいや
これで?外に出るんだよね
「おはようございます!」
お屋敷のような長い廊下を歩いていると
大きな声で挨拶をされる
もともとあまりしゃべらなかった黒崎が
死んだ目をして挨拶を返すロボットになっている
周りには見えていないが......
何回目なの!?もう何度も何度も!?
少しうざくない?
てか なんでこの廊下こんなに長いの?
機能性がない!
部屋移動させてもらう?
内心ではいろんな葛藤をしていた
そんな心境を知ってか知らずか
黒崎待望の食卓に着いた
「アイシュリー様
食卓に着きました
すでに お父様 お母様がお待ちです」
「ありがとう アン」
あぁ〜 どうしよう〜
貴族ってこんなにコミュ力がいるの?
しんどい〜
「あら アシュ?
どうしたの?
食べる手が止まっているわよ?
今日はあの第一王子である
コメンダリー様があなたに会いに来てくださるのよ?
体力をつけてしっかり対応しないと
あなたがあまり気が進まないのは
わかるけど彼の方たっての願いなんですから
そこまで悪い方でもないでしょう?」
えぇ?そんな感じなの?
俺の女って感じの?
えぇ〜?
てか コメンダリー?変なネーミングセンスしてるね
あれ?王様に不敬だった?まぁ いっか
あ なんか返事しなきゃ・・・
「・・・はい
今日は精一杯おもてなしさせていただきます」
「・・・・・まぁ いいじゃあないか
とりあえず今は食事を楽しもう
今日は料理長が腕によりをかけて
作ってくれたんだ
楽しまないと失礼だろう?」
「わかりました」
「・・・はぁ」
なんか この家は複雑そう・・・
まぁ でも優しそうだよね
でも まぁ ため息ついて
苦労してそうだよねぇ・・・
どうしようかなぁ〜
王子の接待かぁ・・・
普通でいいのかなぁ?
でもめんどくさいし・・・
いっかぁ〜行くかぁ〜
これで
どうせ10代のやつなんて
顔とかそんなんでしょ
この体目的なら私関係ないし・・・
さっきまでは寝起きみたいなテンションで
柄にもなく興奮しちゃったけど
どうせ 死にかけの私の妄想だろうし
どんな風になってもいいや
なんとかなるでしょ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
うっわぁ・・・
髪長いなぁ・・・
いや確かに綺麗な髪だけど・・・
別に私 髪フェチでもないしなぁ・・・
どうにか髪の長くない人いないかなぁ
「アシュ?どうしたんだい?
そんなに固まって」
「いえ 今日もお美しい髪ですね
コメット様」
「あはは そうかな?
君に褒められると
悪くない気持ちだよ」
何が悪くない気持ちだよ
素直に言えばいいのに
私なんかに褒められていやだって
どうせなんか政略結婚なんでしょ?
私もイケボだからって釣られないし
あのくらいなら配信で聞くことあるし?
こんな髪の毛まみれなところいたくないし?
あと いつ 私の意識目覚めるの?
インターネットもないところなんて
ちょっとどころじゃないほど
いやなんだけど?
あと買ったゲームが無駄になる・・・
意外と 私未練あるんだな・・・
「.......今日はどうしましょうか?」
「え?ああ....」
やべ
どうしようかな
ぼーっとしてたら
急に話題ふってきた
「そうですね...
花畑...に行ってみたいと思います」
口が勝手に動いた
「え?そうですね
行ってみましょうか」
困惑気味に彼は言う
不敬だっただろうか?
しかし なぜこの体は
外に行きたがったんだろう?
お読みいただきありがとうございます