ありがとう
●感謝の気持ち●
空には、月が昇っています。
「うっ……!」
屋根裏部屋に響くのは、シャーリーのすすり泣く声でした。
「今頃お姉様達は……。」
シャーリーはそう言うと、派手なドレスを身にまとった姉達が騒いでいるところを想像しました。
「私も王子様に会いたいわ。」
独り言のように呟くシャーリー。
「元気をお出し。」
涙を浮かばせたシャーリーに、ブロッサムは優しい言葉をかけました。
心配そうに顔を覗かせます。
「うん、大丈夫だよ。」
無理に笑うシャーリーですが、どこか悲しそうです。
「……。」
ブロッサムは言葉に詰まって黙ってしまいました。
「あ、そうだ。」
シャーリーは涙を拭うと、明るい声を出して笑顔を向けました。
「クッキーを焼いたの。内緒で多めに作ったから、ブロッサムばっちゃんも一緒に食べようよ。」
そして、ボロボロのエプロンのポケットから袋を取り出しました。
シャーリーが袋を開いて床に置きました。変わった形をしたクッキーが現れました。
ブロッサムはクッキーを砕いて欠片を手に取ると、食べ始めました。
「美味しいよ、シャーリー。」
ブロッサムの言葉を聞いて、シャーリーの顔がパッと明るくなりました。
「有り難う、ブロッサムばっちゃん。」
「ところで、このクッキーは何の形なんだぃ?」
ブロッサムが尋ねると、シャーリーは、
「錬成陣だよ。」
と即答しました。
そのクッキーは丸いともいえ、三角ともいえる妙な形だったのです。
ブッロサムにとって、初めてみた形でした。
ポリポリポリポリ……
音と共にクッキーの形が消えていきます。
クッキーは高級な小麦粉と卵、牛乳を使用していました。バターの甘い香りが口の中に広がります。
どれくらいたったでしょう。
お腹をパンパンにしたブロッサムとシャーリーがベットに寝っ転がっていました。
「有り難う、ブロッサムばっちゃん。」
「いや、こちらがお礼を言いたいよ。シャーリー。」
改まっているブロッサムに、シャーリーはどう反応していいか戸惑います。
「憎まれ口ばかりの私にも優しい言葉をかけて……それだけじゃない。毎晩のように私に面白い話を話してくれた。笑顔を向けてくれた。いつも一人だった私にゃ、嬉しくてたまらなかったよ。」
「ブロッサムばっちゃん……。」
ブッロサムの言葉にシャーリーは胸をしめつけられたような、心温まるような思いを感じました。
「それは……私も一緒だよ。私も気がつくと一人で、ひたすら家事をやっていたし、家族にもヒドイ扱いを受けて、町の人と話すことさえ出来なくて……。ブロッサムばっちゃんには、いつも感謝している。心配かけてごめんね。」
苦笑しながらいうシャーリー。目元にたまった涙がキラリと光りました。
しばらく、静かな時間が続きました。
そして、ブロッサムが淡々と話し始めました。
「どうだぃ、シャーリー。私からのお礼を受け取ってはくれないかぃ?」
「お礼?」
シャーリーは「え?」と首をかしげました。
「あぁ。私の知り合いでね、本の虫がいるんだ。」
「本の……虫?」
「私じゃ力になれない。でも、彼女にはそれなりの力がある。なら、私は彼女を呼んで、お前さんを幸せにできる……。」
「いいよ。そんなことしないでも。」
シャーリーは首を左右に振りました。
「これ以上、ブロッサムばっちゃんに迷惑をかけたくないもの。」
「嫌だね。それじゃ、私の気がすまないよ!」
頑固なブロッサムには、シャーリーの言葉は無意味でした。
「大丈夫さ。時には人に迷惑をかけるくらいじゃなきゃ、楽しい時間なんて手に入らないんだ。」
「う〜ん……。じゃぁ、まかせるよ。」
ゆっくりとシャーリーは頷きました。
そして、その瞬間。
「わぁ!!!」
部屋の中に光が溢れ、ボン!と爆発しました。
少しして煙が晴れると、そこには一人の少女が転がっていました。
「着地失敗……。って、アレ?ブッロサム師匠!?あ、こ、こここ、こんこん今晩和。」
かみすぎです。
パーチィーまで後2時間25分……
ようやく完成〜。ここ最近毎日更新できてうれしいですw
がんばって書くので読んでくださいね〜〜〜!