メイドの仕事その2
●準備はメイドの仕事(ベルナルド視点)●
今日の朝早く、私の家に一通の手紙が届いた。内容は、こう。
今日の夜九時から、王子エルウッドの婚約者を決めるためのパーティーを開きます。
是非とも(強制的ですが)我が国の女性の皆様には、城にお集まりいただけると光栄です(笑)
それでは、お待ちしております。
会場・城大ホール・ロザリアの間・ロザリオの間
アルフ=ハイラル・8世
どこが、(笑)なのだろう……。
半強制的に王子の婚約者決めパーティーに参加させられた。私も、母様も、姉様も、シャーリーも。
気にくわない。どうしてシャーリーまでパーティーに招待されるのだろう。
絶対に、シャーリーはパーティーに行かせてやらない!
私は別に結婚なんて興味なかった。王子は美形らしいけれど、身長は小さいらしい。
美形でも背が低くては、私は惚れない。
それよりも、私はお城のパーティーに出て、美味しいものをたくさん食べたかった。
……パーティーには何を着ていこう。
自分で用意するのも面倒くさいし、全てシャーリーに任せるか。
心の中で、独り言を繰り返す。
あ、今日紅きティンクトゥラの発売日だ。
『紅きティンクトゥラ』とは、私が前から欲しかったアクセサリーの事。
滅多に手に入れることのできない紅い綺麗な石を使用していて、値段は高い。
私が欲しいのは『紅きティンクトゥラ』の『ドラゴン・リング』
ドラゴンを象った(かたどった)指輪なのだが、『紅きティンクトゥラ』のシリーズで一番安い。
9800万円
母様が何とか買ってくれると約束してくれて、この間お店に予約したから取りに行けばいいだけだ。
母様は言っていた。お店が無料で『ドラゴン・リング』をくれるって。理由は教えてくれなかったけど。
(A・お店の人がコルヴィンを恐れて、一円でも金をとれば、呪い殺されると思ったから。)
……今日のパーティーにしていこうかな?
私は、『ドラゴン・リング』を買いに行くために町中へと飛び出した。
まだ朝早いためか、外は少し冷えていた。私は、商店街をウロウロしていた。
「お店……どこだっけ?」
小さく呟く。
決して私は方向音痴というわけではない。ただ、指輪の予約をしたのは母様だ。
私は、店の居場所を知らない。
「無駄足じゃない!」
店の名前は知っている。
【ソリティア=アクセサリーショップ】
町の人に聞けば分かるかしら?
「おぃ、じいさん!」
「じ…じいさん!?」
どこにでもいそうな若者が振り向く。それも、顔を引きつらせ。
「君、口には気をつけた方がいい。知らない人に“じいさん”なんて……。」
若者が振り返りながら叱る。
しかし、私を見た途端口を閉じる。顔色は悪く、白くなっている。
「あぁ!?なんだよ、じいさん。文句ある?」
「(ルルド家次女、ベルナルド!別名、合成獣の殺人者ベル!)」
若者は深く後悔する。ルルド家の娘を叱ってしまったことに。今日が人生最後の日であろう。
「あ……ありません、ベルナルドさん。いえ、ベルナルド様?」
「あらそう。ならいいけど……ところでじいさん。ソリティア=アクセサリーショップ知らない?」
私は笑顔で言った。人にものを尋ねるときは、笑顔が基本よね。
「お……、お城の近くにあったとか……。ここの商店街ではなく、城下町の中にある商店街です。ハイ。ベルナルド様。いえ、ベルナルド姫様?」
逃げ腰で言う男。膝がガクガクしている。
「そうなの。どうも。」
私はそう言い残して、ゆっくりと城下町の方へ歩み始める。
「道中お気をつけ下さいませ!ベルナルド姫様。いえ、ベルナルド女王様!?いや、もはやベルナルド皇帝!?」
若者が何か叫ぶが、私の耳には届かない。
ベルナルドが立ち去った後、若者はその場に座り込んでしまった。
まるで、生気を失ったかのように気絶していた。
城下町にある商店街に来てみたものの、先ほどいた商店街とは比べものにならないくらい、やたら広い。私はしばらく歩いてみたが、ソリティア=アクセサリーショップは見つけることができなかった。
商店街を通り過ぎ、城の手前にまでやってきた。店はなかった。
あのじいさん、嘘つきやがったな!!!
人気のない所に、一人の少年がいたので声をかけてみる。
「おい……。」
「ん?」
少年が振り向く。
「うわ、小さい……。」
私のこの一言を聞いて、少年は拳を固めて飛び込んでくる。しかも、
「誰がチビだ、誰が!貴様、死刑になりたいのか!?」
と、叫びながら。
初対面の人に何するのよ……このチビ!
私は少年の攻撃をサッとかわすと、
「ここに居ても時間の無駄ね。お店もみつからないし、そろそろ家に帰ろうかしら?」
と、あざ笑い、城下町の方へ方向を変える。
「サヨナラ、おチビさん!」
「待てぇぇぇ!女ぁぁぁ!」
後ろで聞こえる声は無視しよう。私はそんなことを考えながら家へ帰っていった。
「おかえり、ベルナルド。」
姉様がシャーリーの入れた紅茶を飲んでいた。
「ドラゴン・リングは手に入れたの?ベルナルド?」
姉様が聞いてきた。
「ありませんでしたわ。店の場所を聞いても嘘つかれるし、その後も変で無礼な少年に出会いまして……。」
私は左右に首を振りながら言った。
「変で無礼な少年?」
「そうですわ、チビな少年ですの。私が小さいって言ったら、目つきを変えて殴りかかってきましたの。私、怖かったですわ〜。」
「チビな……少年。それは大変でしたのね、ベルナルド。まったく、初対面の乙女に殴りかかってくるなんて、どこの無礼者かしら。母様に言いつけましょう!」
「それはどうでもいいですけど……。」
姉様に文句を言ってすっきりした私は一息ついていた。
「ところで姉様。ドレスの準備はどうしますの?」
「ベルナルド、当たり前の事を聞かないでくださいませんこと?そんな面倒なものはシャーリーに押しつけるに決まっているじゃない。」
「そうですわね。」
口元を歪めて笑う姉様。私も答えるように黒く微笑む。
「ホーッホッホッホッ!」
屋根裏部屋の扉を開く。姉様がいきおいよく開けたせいで、扉は不気味な音をたてている。もうすぐ、この扉は壊れるだろうな。
「ディ……ディラン姉様!?」
シャーリーは驚いて、腰を抜かしていた。
まぁ、突然の事だし、仕方ないだろう。
「……何でしょうか?」
シャーリーに命令をしておく。今日もかなりの量の仕事を押しつける。
これを全てサラッとこなすのだから、余計憎らしくなっちゃう。
「……ところでベルナルド、エルウッド王子のこと、狙ってみれば?」
はぁ!?
姉様ったら、一体何を言い出すのだろう……。
王宮での、優雅な時を過ごして一生を過ごすのも悪くない。
でも、あんな小さな人は夫にしたくない。
恋愛対象ではございません。
「……まぁ、冗談はどうでもいいとして?シャーリー?さっき言ったこと、さっさと済ませてちょうだい。」
姉様が言うと、シャーリーはさっそく仕事に取りかかった。
……これで自由な時間がしばらくある。
呪い人形でも作っていましょうか?
パーチィーまで後12時間……
むかつくお姉さんですいません、、、。
作者はこのキャラ嫌いです。笑。