メイドの仕事その1
●準備はメイドの仕事です●
よく晴れた爽やかな日。
ルルド家は朝から、コルヴィン達が五月蠅いのでした。当社比20%。
いつもの騒がしさが倍増しています。
でも、シャーリーは全然気にしていませんでした。
「ホッホッホッ!」
ディランの高らかな笑い声が家中に響き渡ります。
そして、屋根裏部屋の扉が勢いよく開きました。
バン!扉を壊したいのでしょうか、ディランは……。
「ディ……ディラン姉様!?」
シャーリーはディランの迫力に驚きます。
「な……何でしょうか?今からお昼の準備をしたほうがよろしいですか?」
来客でもあるのでしょうか。
「違うわ。……今日は、お城でパーティーがあるの。」
ディランが誇らしげに笑います。
“貴女は行かせてあげないよ”
口には出していませんが、ディランの表情をみればすぐにわかります。
「だから、靴磨き、馬車の中で食べるお菓子を作って!勿論、不味いと許さないからね。それから、ドレスとアクセサリーとメイク道具を全て揃えておいて。もう持っているのは飽きたから、新品にしてちょうだいね。派手で、パーティーで目立つやつを。」
「勿論、私とお母様の分もよ!」
ベルナルドが後から付け加えました。
「はい……。わかりました。」
シャーリーが頷きます。
……どうせ、私は連れて行ってくれないんだろうな……
シャーリーは心の中で呟きました。
「五時には出発するから、それまでに全てやっておくのよ!」
あざ笑うようにディランが言います。
「ちなみに、今日は帰らないから。」
「……ところでベルナルド。エルウッド王子のこと、狙ってみれば?貴女の顔なら十分だと思うわよ?」
ディランが話を変えました。
「え……!?」
ベルナルドが奇声をあげます。そして、苦薬でも飲んだかのように顔をしかめました。
「何でですの!?コルヴィン姉様!私、あんな小さな人、たとえ王子であっても嫌ですわ!だいたい、今日王子を振り向かせれば、結婚ですのよ、結婚!あんな人を夫にするなんて……。私、背の高い人が好みですから、嫌ですわ!」
身長の事を気にしているエルウッドがこの言葉を聞いていたら、ベルナルドは即死刑でしょう。
「あらまぁ、ベルナルド。貴女の度胸には驚かされますわね。よく、一国の王子のことをチビ呼ばわり出来ますわね……。」
ディランが呆れたようにあざ笑いました。
「ですけど、コルヴィン姉様!本当の事ですわ!」
「……まぁ、冗談はどうでもいいとして?シャーリー?さっき言ったこと、さっさと済ませてちょうだい。」
関係ない話を聞き流していたシャーリーは突然呼ばれて我に返りました。
「あ、はい!わかりました。今からとりかかります!」
その言葉の途中で、ディラン達は屋根裏部屋を出ていきました。
バタン……。
扉が閉まると共に、
「ハァ……。」
シャーリーはため息をつきました。
「やろうかな。」
そう言うと粗末なベッドから立ち上がりました。そして、両手に複雑な模様の描かれた白い手袋をはめました。
パーチィーまで後10時間50分……
メイドシリーズ!
シンデレラにはなりたくないですね。ツライっす。