非常に冴えた閃き 解答編
この島で起こっていることは何であるのか?話す時が来た。
彼女はそう言って、目の前に立っていた。僕はギターをチューニングしている最中だった。音楽理論を学ばなかったとしても、チューニングはできるし演奏もできる。だからそこには定理によるものとそう出ないものが混在することになった。しかしながら、僕はわかっていないようで自分では知らないことをしているつもりはなく、ともかく彼女達との景気は順調だった。多くの問題を抱えながらも。
多くの問題とは、ある行為の最中に邪魔が入ることに他ならない。例えば、素晴らしい文章は理路整然として前後はおろか後ろから前に読んだとしてもハイウェイのように意味が通じ首尾一貫としているはずだ。そんな奇跡的なものが僕のうちに存在していれば、ほとんどの事は理論的であっただろう。全てうまく言ったし、なんでも思う通りだったはずだ。しかし実際には何かをしようとすると全く正反対の何かが入り込み、あたかもそちらの行為を僕はしているような気がしてその感じを払拭できなかった。
いい意味で流れに乗ることはあっても、否定的な意味でそれらが引き起こる時、一体何が起きているのか分からないもので、それはきわめて強かった。最も酷くなったのは最近の事である。僕はいい加減この良い流れと悪い流れの存在を知りつつあった。僕が何かをしようという時には、天使と悪魔がいた、という言い方がしっくりくると思う。さらに言えば、スタートダッシュしようという瞬間には「君には無理だ」という声が聞こえる、という風に言えばさらにしっくりくるだろう。彼らはいつも決まった時と場所に現れることに僕は気が付き始めたのだ。そして今まさに僕はそういう狂った実験をまた始めようかな、としているところだった。
彼女がいうには、こういう事であった。
内向的であるということは外側から内側に向かう力のことを言う。そして外向的である、と言うことは内側から外側に向かう力のことである、と。前者は客観的事実であり、後者は主観的事実である。普通、僕はこれらを取り違えている。
あくまで自分が思ったことを相手にするのが外向であり、その人は客観的とは言い切れない。内向とは中心に向かう動きである。放散と収束がここにはある。
人はどちらかに偏る。すなわち、北か南かである。北には北極星が燃え、南には地球の中心がある。人がどちらかに生まれる時、産まれながらそれらは互いに相反し合う。
「あなたははじめ、わたしではない子を一番にしていた。でもわたしが一番だったし、そういう運命だったのよ。」
誰のことを言っているのかというと、我々の部族では明確に自分の片腕を決定することが定められている。普通親の昔のギターだったり、憧れの対象のものがそれであったりする。しかし、自分の一番近くの傍にあるものは潜在的に悪である。それはなんでもないような感じがするし、理路整然としている気がする。だからこそ自分の想像の域を超えないので、既に知っている全てのことは悪そのものである。それは自分の妹であり、出涸らしであるからだ。僕が最高だとすれば妹は少なくともまったく逆の存在である。対偶であると言ってもいい。
ここに兄と姉と弟と妹が存在する。僕が長男だったとすると妹は末の娘である。弟とはまぁうまくやれる。彼の姉ともね。父と母は離婚している。母は結婚生活に耐えられず理性的に蒸発してしまった。あまりにも内的な人物でありすぎたからだ。何というか、何を言っているのか分からなかった。狂っているとしか言いようがない。妹はそのことを黙っているが、彼女はよく母親の世話をしに行く。父はその名目であいつが悪を学びに行っているのが分かっていたし、結局、元々そっちと気が合ったのだ。それは結果が出て見なければはっきりとしないことだったが、元からそうだった。結果が示している通りだ。
私ではない子、とは僕の身内の化身みたいなやつの事である。それは内側から来た母親の手先だ。魔女の娘は魔女だ。この漠然とした、あまりにも巨大な悪の巣窟は、常に僕のする事なす事をけなしこき下ろしてきた。しかし彼女は自分の身元を今日この瞬間まで隠していながら、僕の耳に死の母親を吹き込み続けたかったのである。
彼女は今いない。外に出て行ったのだ。そしてそれから姿が見えない。少なくとも僕は完全に否定され、彼女は新たな真実の男を外に探し求めたのだ。
これがこの島で起きている罪の始まりである。あの全ての化け物は皆、妹の産んだ子なのだ。
僕がその間に何をしていたか?妹と全く同じ事をしていた。僕が彼女の不貞を知ることができないように彼女には何も理解出来ない。彼女の巣はこの島の内側にあるのだが、僕の島は彼女達だ。
したがって外的な事実は内的な事実であり、外的な事実は実際の事実である。僕にとってはね。
妹の強力な独占によって、僕はそれ以外の領域でしか生きられなくなった。内側が地獄ならば外は全て天国だ。それが天の定めた僕に対する法則だったのだ。
これらの事を知った時、ある時が終わって、混然一体となったものが上と下に分かれ始めた。僕はギターを弾いてた。