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ブルートレイン  作者: さくらとむ
3/5

悪い地母神について2

その神に対する危機感は大きいもので、どうしてかというと何かを拝んでいる時には結局非常に大きな権力を崇めていることになろう、という事だ。何だかわからないが何か非常に大きなものを司っているのを崇めているのであろうから拝んでいる。そして出来ればそれらから離れて暮らしたいのだが、そういうわけにもいかない。

上司が部下を脅す時にはこうした権力を傘にきるのだ。じゃあそれは何か?首になるのが怖くなければ彼を始末できないだろうか?


僕は自分の島にそういう勢力の存在を感じ取った。南の方の突端に小さな島があり、そこは常にくらい影に覆われているのが分かる。僅か二、三キロの距離だ。白い砂浜をたどっていくとその死の領域に三十分くらいでたどり着いてしまう。

何故そうなったのか全然わからないし、全く不透明な先行きのまま放置が続いている。実害も出ている。それは寝ている最中に向こう側で目覚めることが何度も何度もあったってことだ。

僕は知らぬ間に歩いて行って、そしてその半島あたりで目覚めるのだ。小高い山があり、それは今や不気味な異様を放って数十倍にも膨らんだ奇形腫瘍のように感じられた。そういう時決まって、誰かが僕をおぶってこなかったか、もしくは酔った間に手を引いたのではないか、誰かがさっきまで枕元で妙なことを囁いてこなかったかと深く疑うのだった。もちろん誰もそんなことはしていない。

それらは、どうしてあれをしなかったのか?あるいはどうしてしたのか?…大抵は教室にいて僕はその中の一員であり、何年も前に死んだ元友人が既に大昔になった保険について友達のように語り始めるのだった。彼らは僕を仲間にしたがっていたし、もしそうしなければその理由が何であるのか訝しんでいた。夢の中で見た人は全員間違いなく故人であることに彼らが気がついていなかった。


そしてそれを知るためについに地下の探索が始まった。それは実は巨大な岩であって、下の方と中間とてっぺんの方に小さい鳥居がたくさんある。それぞれに登っていってお参りする。大雑把に行ってそこには巨大なくっつき虫と30メートルくらいのデカい山犬が数匹住んでいる。つまり、土や木々が山のように生えている、というわけだ。きつねもいる。もちろん鳥もいる。水が飲める川もある。岩が何個にも砕け、その割れ目から、脇から、水がいつまでも流れた。

デカいくっつき虫は黒いウニような見た目をしていて白い瞳孔のない二つの目がこれという意思も感じさせずこっちを凝視している。彼は僕がふと目を外すとその間に二から三増殖したりしている。僕は彼を拝んだ。彼らはそこはかとない偉大さを感じさせる。いや、我はものすごい存在である。いつのまにか周りを真っ黒に取り囲まれ沢山の品々を服や口の中に押し込まれた。

彼はここで何をしているのか。


ここは危険なところではないか?彼はきつねに語らせた。「今は、そうではない。」鳥居の後ろに占星術の模様があり、彼の指差すところによるとそれは月と土星と木星とが左右に接近したような太陽系図であった。ただの推測だが昔の人はこのような配置図の時にこれを建てた、という漠然とした時期を示したかったかもしれない。そこは島の最西端であっていつもきまって美しい夕焼けが見られるのだった。それが不思議であった。ついに彼はこの下に進んでいきなさい、と強く勧めた。つまりこの地下にである。僕はこれを避けては通れない、という強い誘いを感じた。


それで自分の女達を二人連れてきて、ちょうど人の頭がくぐれそうな具合の穴から地下へ進むことができたのだ。何度かそういう事をした。覚えているだけで二回。もしかすると寝ている間に何度かしたかもしれないが、それは数えない。くっつき虫が何を言いたかったのかというと、実際に知ることといつまでも想像していることの間には確定的な差がある、という事だ。人は現実の量を信仰の度合いに応じて計量するのだ。


中は空洞であった。そして川が上から下にではなく下から上に向かって流れ、僕の女の一人が歌いながらパドルを辿っているところだった。「もうすぐ山頂ですよ。」僕は地上の方に向かって進んでいる。洞窟の天井の稜線が、実際に歩ける山の質量である。そこは石だらけで木々はなく、ちょうど火山の山頂付近に似て不毛だった。

何があるのか?僕が聞きたい。すると、くっつき虫がこう言った。正確にはきつねが。見下ろして見渡してみなさい。それは登山中の孤独を思わせる。正確にはそれに似ている。何かの気配がするけども一人である。あまりに寂しい。白い蟻のようなものがいくつか登ってきているだけで、あとは石と荒野しかない。


あれは死者です。物好きな登山客かと思った。ずいぶんと少ないじゃないか。

そこでここが地獄なのだとわかった。死者は山の動物たちと同じで、年々減少傾向にあるのだ。考えても見れば、生命に乏しいのが地獄であって、もし木々や鳥がたくさんいたらそれは生者の国だ。岩山は半分は地獄の模倣だが、その本質において明確にここと対立している。

死者の登山客は僕に馴れ馴れしく話しかけ、地上に行きたいと言った。僕は彼らを押しのけたが、せめて子供だけでも、と彼らは言った。それが何なのか?彼らは死んでいるのだ。老も若いもあったものか。僕は急いで船に乗り地上に戻った。船はふわふわと浮かんでついには僕らが浮かんでいる気がした…。


実際の地獄は阿鼻とはかけ離れていて、それが彼女は好きだ、と言った。彼女はたまたま船渡しの真似事のような全てができるものであって、たまたま居合わせたに近かった。彼女はその子供の魂を受け入れたかもしれない。しかし僕には分からない何かだ。もう一人は死者が掴みかかってくるのを大槍でひっぺがしたりしたのだ。彼女はアマゾンであって戦士だが、もう一人は上とか下を自由に行き来できるような生業であった。


こうしてあのような死は存在しない事を知って、僕は自分にかかっている脅しについて再考せざるを得なかった。荒野を基本にすれば生を自分に感じさせる事が出来るようになった。ゼロからもしくはそれ以上かしかないのだ。もしその脅しが、何か引き込むような要素を持っているとしてもそいつに住むところはなかったのだ。だから人は前提条件そのものを恐れている。地獄はあってあるべきもので、天国もまた前提条件である。男と女のように。しかしそれが僕の彼女に正しくすり替わった時に、実際に疑念や影はその温床を失うのである。つまりそいつはありもしないでたらめについて僕に吹き込んでいたのだ。


そうだろうと思った!世の中はそんなものである。

だから、くっつき虫の仕事はもっぱら死を防ぐことにはなく、生を従事させる事である。どうしてかというと死はいつのまにか消えてしまうからだ。僕は下についていつも考えていたが、問題は上について考えることにあるのだ…。

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