手続き
ドアを開けると外の匂いが、風が、体に触れてきた。
「全然違う」
そう、全然違った。たくさんの家が密集して立っていた。どの家も木で作られているようだった。
「ユーカ!!こっち!!」リトくんが大声で私を呼び寄せるので、少し駆け足になってリトくん達の後をついて行った。
「先に手続きをすませましょうね」と言いながら、ずんずんと進んでいく。
気の所為ではないと思うけど、すれ違う人がチラチラ見てくる。
「はい、ここよ〜」と言いながら、リサさんは、役所のような建物のドアを開けた。
そこには数個のカウンターのようなものがあり、何人かの獣人が働いていた。
「ユーカ、ついてきてね」と私を見ながらリサさんがカウンターの方へ歩きながら言う。
「いらっしゃいま…って耳無し? し、失礼しました。耳無しの登録ですか?」
反応を見る限り、やはり耳無しという存在は、この人たちにとっては、珍しいみたいだ。
「ええ、そうよ。名前はユーカ」
「ユーカ、こちらの書類を読んで、サインをして頂けますか。あっ、じゃなくて、耳無しは字が読めないんだった。朗読しますので、大丈夫ならサインをしてください」と係の人が言った。
「私は耳無しである」と、係の人が続けて言った。
え…それだけなの…と思いながら書類にサインをした。
チラリとリサさんの方を見ると私より何十倍もの長さの書類を3枚ほど読んでサインをしていた。
「手続きが完了致しました」と係の人が言う。
「良かった〜。じゃあ、行きましょうか」