出発進行
あれから、約1ヶ月がたった。
優香は、グロブでの生活にもようやく慣れてきた。
ルカに文字を教えてもらったり、子供用の本を読んだり、ルカと一晩中話したり、そんなありふれた、それでも幸せな日々を送っていた。
そして、朝ご飯と晩ご飯を作るのが日課になってきた。
チュンチュンと窓の外から小鳥の鳴き声が聞こえる。
優香は、ゆっくりと目だけ開けた。
この約1ヶ月間でルカがどれほど敏感なのか気づいたからである。
そして、そおっとルカの方を見る。
そこにはいつも通り、ふわふわの白銀の耳があった。
眠っている時は、体の力が抜けてるのと同様に、耳も力が抜けて、ぺたっとなっている。
見る度に、もふもふしてみたいと思っていた優香だったが、なかなかその機会を掴めなかった。
魔が差した優香は、勝手に触るのは、駄目だよね…。なんて思いながら、耳に手を伸ばした。
その瞬間、パシッとルカに手をとめられた。
「お、起きてたの?!」
「ああ、耳に物凄い視線を感じたからな」
勝手に触ろうとしたのがバレたため、気まずい空気が流れる。
「あ、朝ごはん作らなきゃ。ルカも今日からお仕事だもんね」と、優香は、不自然なぐらい素早く立ち上がって、部屋を出た。
「……」 ルカは何かを考えているようだった。
獣人の、とりわけルカのような狼獣人は、肉を好むので、朝はかなりの割合で、優香は、肉を焼いていた。
優香には少し重たいので、優香はご飯と味噌汁がメインだ。
今日もいつも通り2人で、食卓を囲む。いつもと違うのは、これからルカは仕事に行かないといけないことだ。
「いいか、誰か来ても絶対に開けないこと。外に出る時は、リサを誘え。明るいうちにしか、外に出るな」
「もう、耳にタコが出来たよ」
「本当に大丈夫か」
「大丈夫!!子供じゃないんだから!!」
なんて、話しながらご飯を食べ終えた。
「じゃあ、行ってくる。いいか、」
「誰が来ても絶対に開けない。外に出る時はリサさんと。暗くなったら外に出ない」
「ちがう、暗くなりはじめる頃には家に帰っておいてくれ」
「うぅ、分かったよ…。ほら、いってらっしゃい」
「行ってくる」と、名残惜しそうに優香を見つめて出ていった、




