解ける
なにかに包まれてるようなそんな気がしながら優香はゆっくり目を開けた。
唇が触れそうなほど近い距離でルカの顔があった。
あまりに驚いたので優香は仰け反った。
「起きたのか」
寝起きの少し掠れた声でルカが言う。
ルカは、優香を抱き締めているその手はそのままに、顔を動かし、窓の外を見て明るくなっていることを確認した。
「起きれるか?」
私を見つめながら頭を撫でてくるルカ。
「う、うん」
昨日の今日で、かなり気まずかったので、眠気は多少あるけれど、ガバッと起き上がった。
お互い無言でルカに手を引かれながら、部屋を出て、机に座った。
気まずい中ルカは口を開く。
「どうして、出て行ったんだ」
「……」
「教えてくれ、頼む」ルカは辛そうにそう言う。
「私がいると、ルカが…」
「俺が、どうした?」
「不幸になると思って」
ルカは驚いた顔をして言う。
「どうしてそう思ったんだ」
「弱い番いなんて絶対嫌だって」
「誰が言ったんだ」
「ギルドで…」
ルカはそれを聞いて納得が言ったような顔をする。
そして、俯く優香を見つめながら言った。
「それは俺の言葉ではないだろう」
「冒険者は、番いがいない獣人がほとんどなんだ。番いとはなにかを知識でしか知らない。俺もそうだった」
「ユウカに会うまでは…」
本当の意味で名前を呼ばれた優香は顔を上げた。
「ああ、昨日の夜、練習してたんだ」と、少し誇らしげにルカは言った。
「ユウカに出会って俺は変わったんだ」
「でもそれは番いだからでしょ?私じゃなくても番いだから…」
「俺はユウカがたとえ番いじゃなくても愛していたと思う。実際番いなのだからこんなこと言っても仕方ないが」
「嘘、だって私なんて何もいい所ない」
「自分を卑下することなんて二度と言うな。俺はユウカを、お前だから好きなんだ」
「私だから…」涙が自然と出てくる。
「ああ、そうだ」私の涙を拭いながらそういった。
「言葉にすることが大切だと、ようやく分かった。これからは俺がどれだけユウカのことが好きか教えてやろう」