ギルド
お腹が満たされ、手を繋いで歩くことにも少し慣れたので、私は周りを見る余裕が出来た。
やはり耳無しは、珍しいようでチラチラとこちらを見てくる人がたくさんいる。
私は、居心地の悪さを感じた。まるで異質なものを見るような目で見つめてくるから。
周りに気を配っていると、その視線が私だけでないことに気がついた。
ルカにも私と同じぐらい、いや、それ以上に視線を送ってくる人がいた。
確かに、ルカはかっこいいから…と心の中で言う。
透き通るような青い目に、お日様のような暖かい茶色の髪、整った顔立ち、私より30cmは高い身長、程よくついた筋肉、白銀の耳と尻尾。
あまり人の醜美に精通してない私でも分かるほど、かっこいいのだ。
そして、それほど視線を集めていても、凛とした態度を取るルカに較べて、私はオドオドしてしまい、かっこ悪かった。
私がルカを観察するように見つめていると、
「どうした?じっと見つめて」
見つめていたことがルカにバレてしまった。
「ううん、なんでもないの。ルカはかっこいいなって見てただけ」
「……」ピンと張っていた耳がたらんと垂れたルカは、照れを隠すように私の手を少し強く握った。
「着いたぞ、ここが冒険者ギルドだ」
そこは、とてつもなく大きい厳かな建物だった。
冒険者ギルドの中に入るとすぐに、こちらに強そうな人達が目を向けてきた。
近くにいた男達がコソコソと話している。
「おい、Sランク冒険者のルカだぜ」「ああ、あの狼の」「なんだ、あのちっこいのは」「耳無しじゃないか、珍しいな」
なんて、こちらに興味津々な様子で話している。
「ユーカ、こっちだ」と呼ばれたのでついていく。
「いらっしゃいませ、ルカ様。なにか御用がありますか」とギルドの職員が言う。
「ああ。しばらく冒険者活動を休止する」と、ルカが言うとギルドの職員は、焦ったようにこう答えた。
「す、少しお待ちください。ギルド長を呼んできます」
職員さんがギルド長を呼びに行っている間にルカに聞いてみる。
「ルカ、お仕事休止するの?」
「ああ、番いに出逢えたら、仕事は1ヶ月ぐらい休むのが普通だ」
「わ、私のせいなの?」
「ユーカのせいではない。俺のためだ。ユーカと一緒に過ごしたいんだ」
なんて、恥ずかしいことを平気で言う。
そうこうしていると、ギルド長がやってきた。
体の筋肉を見せつけるようなピチピチの服を着た、50代ぐらいのおじさんだった。
「おお、白狼のルカ。番いに出逢えたらしいな」
「ああ」
「これがお前の番いか」
「見るな、減る」なんて言いながら、私の顔を手でそっと覆った。
「はっはっは、もうゾッコンじゃないか。ゾッコンゾッコン」
と、ギルド長はルカの背中をバンバン叩いた。