初デート
家を出るとまるでいつも繋いでるかのように、ルカが手を繋いできた。
「え、えっ?!」と私が驚くと、
「どうした?」と聞き返してくる。
「手を……」なんて言ったらいいか分からず顔を赤くして俯く。
「ああ、ユーカの手は小さくて可愛いな」と言われ、さらに顔が真っ赤になった。
上手く手を離してもらうように言えなかったので、手を繋いだまま歩くことになった。
そう言えば、お母さんとお父さんとも手を繋いで歩いたんだったなんて思いながら、手の温かさを感じていた。
しばらく歩いていくと、昨日行った市場とは明らかに違う高級な店が立ち並ぶところに着いた。
ルカは、なれた様子でその中でもキラキラしていて、高そうなお店に入っていった。
店に入るなり、「ユーカの好きな色はなんだ?」とルカが聞く。
私は少し考えて
「青かな…。ルカの目の色。透き通るような青で宝石みたいに綺麗だから」
ルカは嬉しいような困惑したような顔をして、
「では、俺もユーカの瞳のような茶色みがかかった黒のものを持ちたい。いいか?」
「う、うん!」
獣人にとって、互いの目の色のものを持つことは特別な事であるのは今の優香はもちろん知らない。
そうして、お互いの目の色のイヤリングをルカが買い、2人はただ何となく店を見て楽しんだ。
「暗くなってきた。お腹が空いてきただろう。ユーカ、何か食べたいものはあるか?」
「ないよ」
実際、グロブの食べ物を知らないので何も答えようがなかった。
「チキューの食べ物を出す店もあるが、本当にないのか?」
「うん」
地球の料理は、食べるという作業の対象であったので、好きや嫌いもなかった。当然、愛着も特にない。
「そうか、今日は俺の好きなものに付き合ってくれ。ユーカの好きな物はゆっくり見つけていこう」
優香はルカのその気遣いがとてつもなく嬉しかった。
「では今日はカリカルを食べに行こう。カリカルはムというパンのようなものをつけて食べると美味いんだ」
「楽しみ」優香は少し笑いながら言った。
それを見たルカもまた笑って
「ああ」と言った。
ルクスが見ているときっと「お似合いのカップルかよ」と茶化しただろう。
お店の中に入ると香辛料の匂いがした。
「ユーカは辛いのは平気か?辛さが選べるんだ」
「ううん。苦手かも」
「なら甘口するといい。俺は辛口が好きなんだ」
ルカが料理を頼んでくれた。やってきた料理は、カレーとナンだった。
「これ、地球にもあるよ」
「そうか、耳無しの伝統料理はすごく美味しいからな。いろんなところで広まっているんだ。カリカルもそのひとつだったとは知らなかった。さあ、食べよう」
お腹も満たされて、店を出た。
「そう言えば、少しギルドに用事があったんだ。すまない、ユーカついてきてくれるか?」
「うん。いいよ」と、少しワクワクしながら答えた。