さよなら、今世
私は、今日、自殺した。
思い返せば、つまらない人生だった。
両親には子供の頃に先立たれ、親戚をたらい回しにされ、生きてきた。
ようやく定まった私の役割りは、ある家族の奴隷だった。血の繋がりがほとんどない「母」と同様に、その妹は、私のことをモノ扱いしてきた。母や妹に意見することの無い「父」は、私のことをいないように扱った。
学ぶ機会すら与えられなかった私は、義務教育を終わらせると直ぐに働かされ、給料は全て家庭に入れさせられた。
もう、限界だった。
それでも死ぬという選択肢さえ思いつかないほど洗脳されていた。
そんな時、「家族」が見ていたテレビから
「芸能人×××が自殺 大人気な彼女が自殺した理由は?!」なんて流れてきた。
それを見た母は
「あら、まだ若いのに自殺なんて可哀想ねぇ」
なんて言うと、妹は
「え〜〜まじで〜、好きだったのに〜。でもさ〜、自殺ってすごい勇気いるらしいね〜。 でもさ〜、じ、さ、つしそうな人といえば、うちにもいるじゃん」
と、くすくす笑いながらこちらを見てくる。
続けて妹が言う。
「あ〜、でも、こいつには自殺する勇気なんてないか」
それを聞いた私は、腹が立つこともなかった。ただ単に死ぬという選択肢があることを知った。
その日の夜、私は決意した。死に方なんてなんでもよかった。ただ確実に死ねる方法を考えた。
それは、なんとも簡単な方法だった。
「首を吊るだけか…」
奇しくも、件の芸能人と同じ死に方だった。
苦しいのは初めだけだった。
ただ最後に思ったのは、幸せだった家族と過ごしたあの日々だった。