うまいビール
最近の若者はつまらない奴が多い。
酒もしない。タバコもしない。ギャンブルもしない。
しない、しないの、しないずくし。
そのくせツイッターだ、インスタグラムだ、表面上の付き合いだけを求める。
わざわざ上司である私が飲みに行こうと誘ってやっても、平気で断るような奴ばかり。
それこそ奢ってやるとまで言っているのに・・・
だからこそ、先月入社したばかりの若手社員から、一緒に飲みに行きたいと言われた時には驚いた。
そして、嬉しくなった。
この歳になって初めて部下に飲みに行こうと誘われたのだ、無理もないだろう。
花の金曜日。仕事を終えた私とそいつは夜の繁華街へと旅に出る。
もちろん。財布にはパンパンになった現金とカードを忍ばして。
そして、何件梯子したことか?
居酒屋、割烹、お姉ちゃんの出てくる店、どこに行っても二人してしこたま酒を煽った。
そして、四件目を後にしてそいつが言ったのだ。
「課長!!うまいビールが飲みたいっす!!」
こんなに付き合いの良い奴がいるだろうか?
私たちはお互いに真っ赤な顔を見合わせながら、今日は朝まで行くぞと気合を入れ直した。
そこまで・・・
そこまでが私の覚えていることだ・・・
うまいビールを飲みに行く。
確かにそう言った。
けど、ここまでする必要があるのだろうか!?
隣で幸せそうな寝息を立てる部下をよそに、私は憂い顔で窓から外を眺めるが、
雲は遥かその下を行く。