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3012年。世界は今、大転生ブームである。
「余生は転生して異世界に!」なんてスローガンを政府が掲げてしまうほど、世界は転生で溢れている。
少子高齢化大国ニッポンもこの転生政策を取り入れ、今や転生大国とまで呼ばれる始末。転生先には夢と希望とチートが溢れ、少子高齢化もバッチリ解決!メリットしかない、ステキな転生ライフを満喫する人間がごまんといるこのご時世。
僕、吉田拓人もそんなステキな異世界転生に憧れを持つ男のひとりである。
28歳サラリーマン独身。
転生に向けてそこそこお金を貯めた男性が、転生するにはうってつけの年齢だ。
吉田拓人もその一人、転生のために人生を費やしたと言っても過言ではない。転生先ではドラゴンと戦う勇者になることは望んでなくとも、慎ましく異世界で魔法を使いながら生活をすることに小さな頃から憧れて今日に至る。
なのに、なのに…
「一体全体どういうことなんだあぁああああぁあぁあああ!??」
***
拓人が転生申請を出したのは1ヶ月前。
仕事も辞め、親にも「淋しくなるわね、だけど夢への第一歩。頑張ってちょうだい。」と握手を交わし、市役所の「異世界転生課」に書類を提出した。
そして今日、いよいよ拓人は異性に転生した。
そう、したはずだった。
俺が望んだ街は「時の惑星エデン」
なのに見覚えのある電柱と、のどかな田畑、じんわりと汗ばむ夏の太陽。
そうだ、ここは…ここは…
ニッポンの、ど田舎だ。
そうと気づくと頭の回転がフル回転なる。
何故だ?同世界の転生は法律でも禁止されている。
書類にも行き先の不備や年齢や性別にミスはなかった。なのに、どうしてど田舎ニッポンにまだいる…?そして、なぜ?何故女性になっているのだ…?
頭を抱えたままひらりとスカートをなびかせる。
あぁ、可愛い制服だな、なんて頭をちらつかせたが、心ここに在らずだ。
どうやら、吉田拓人は異世界転生の中でも稀中の稀。
転生大国ニッポンのど田舎に転生をしてしまったようである。