第5話『信じること、疑うこと』
「あの……リゼさん?」
「良いですか?二度とラピスさんに近づいてはいけません」
ミドはリゼから教会から出た後から、ずっとこんな感じで、教会には行くな、近づくなと注意されている。
「敵国の子どもだからですか……?」
「それもありますが、裏切り者なのです」
「え……?」
「裏切り者だから、教会に隔離されたわけです。私達は……あの人達と、手を取り合うことは出来ない」
「フミカさんという女性を亡き者にしたかもしれないからですか?」
「っ⁉︎聞いたんですか……」
「リゼさん!ミド!」
向こう側から走って来たのは、僕っ娘のレルナだった。
「はぁはぁはぁ、良かった無事で……」
レルナは息切れしながら、ハンカチで首の汗を拭いた。
「どうして、場所が分かったんですか?」
「窓から、二人の姿が見えて……教会かと思ったけど、中々帰って来ないから」
「私は上に報告して来ます。レルナさん、ミドさんを頼みますよ」
「うん、任せて」
「杖よ。すぐに私を監視者室に連れて行って!」
そうリゼが唱えると、彼女は光に包まれ、消えて行った。
「あれが戦場で、使えれば良いのに……」
「魔法みたいですね」
「魔法だよ」
「え⁉︎」
「聞いたでしょ?監視者は覚醒者の子どもだから、特別な能力が備わってしまうって。まぁ、人によっては、覚醒者も魔法使えるけどね」
ーー魔法……。
今のご時世に存在するなんて、ミドは夢にも思わなかった。
ステラ国は、元々の風景を守っているが、他の国は、凄い機械が沢山動いているらしい。
「ミド、戻るよ」
……。
「どうして、ラピスさん達のことを信じれないんですか!」
「ミドは、ダメなの……」
「だって、悪いことをしそうにないじゃないですか……」
「ミドはね、人を疑うことを知るべきだよ」
「私達が存在するこの世界、Stone houseは、前居た世界とは違う。私達は、国に守られている国民じゃない。国に見捨てられ、だけど国の為に戦わされている私兵」
ーー僕は……僕は……。
ミドは何を思ったのか、上手く言葉に出来なかった。
「さぁ、帰ろう」
彼女は、笑顔でミドを見る。
国に見捨てられ、国の為に戦わされている私兵になることは、仕方ないという風に。
ーーそんなのおかしいよ……。
一瞬、レルナに恐怖を感じた。
そして、この後ミドは無理矢理、戦場の世界へ行く為の準備を始めさせられるのだ。