第4話『天使と悪魔』
白い翼の天使と黒い翼の悪魔。
今、ミドの目の前に居るのがそれだ。
「あれぇ?驚いてるなぁ?」
「実際に天使と悪魔が現れたのだから、驚くのが普通です」
「いちいち、自分が正しいみたいに言うな」
「僕が正しいですよ」
「なにぃ?」
「まぁまぁ、落ち着いてください」
みんなについていけない。
ラピスは、天使と悪魔と普通に会話してしまっている。
「あの……」
「紹介するね。僕と契約している悪魔のネビロス。ネビロスを監視する天使のミカエルだよ」
「地獄の監察官、ネビロスだ」
「天使のミカエルです」
「え、えーと……」
ーーラズ君とルズ君は驚いていないし、知っていたのかな?
「とりあえず、お茶を飲んでください!」
「僕たちが丁寧に育てた、ハーブを使ったお茶ですから」
「う、うん。いただきます」
口に含むと、ふわぁっとミントの香りが広がる。
「美味しいです」
「良かったです〜」
小さな二人は、とても喜んでいた。
「ミドさん、あなたは何故、ここに?」
「……お母さんが亡くなったんです……」
「っ⁉︎」
ネビロスは驚いている。それに対して、ミカエルは知っていたような素振りで、けど、悲しそうにしていた。
「それはお気の毒に……」
「外に出られないんですか?」
「説明を受けたでしょう?ずっと、この檻に囚われ続けるって」
「……あなたも、覚醒者の子どもなんですか?」
「いいえ。僕らは負けた敵国の子どもです」
「え……?」
「フィル国はご存知で?」
「はい。名前だけは……」
「フィル国は、ステラ国との戦争に負けました。僕らも戦場に出ていて、国に捨てられたんです……Stone houseに所属している、ツクナさんという女性の方に救われたんです。ただ、敵国のこととあの事件で……」
ラピスは、溜め息をついた。
「フミカさんという女性がある戦いで、亡くなってしまったんです。僕らがフミカさんを殺したのではないかと、疑われていまして……」
「そうだったんですか……」
そう言うと、ラピスは驚いた顔をした。
「やべ!来る!」
「一旦、退きます!」
ミカエルとネビロスは、一瞬にして、消えてしまった。
「杖よ!閉ざされた扉を開け!」
リゼの声が聞こえると、教会のドアが勢いよく開いた。
「この勝手な行動は、上に報告します。もう二度とこのようなことがないように。さぁ、ミドさんはこちらへ」
「あ、はい」
ミドはリゼの方に向かって、歩いて行く。
振り返ると、軽く注意されたラピスはニコッとしてミドを見送ってくれた。
♢♦︎♢
「ったく、忘れてんのか」
「しょうがないですよ」
ヒョイっと、ミカエルとネビロスが出てきた。
「みんなに隠され続け、何も知らないままが、幸せなのか」
「全部を知った方が幸せなのか」
「分からない(です)」
「ミドさんは、本当の自分自身のことさえ、
覚えていません。それは悲しいと思います」
「まぁ、いつかは知ることになるさ」
「嫌でもね」
「そろそろ、別の仕事に戻ります」
「俺も地獄に戻るわ」
ミカエルとネビロスは、また一瞬にして消えた。
今度は姿を消したのではなく、それぞれの場所へ一旦、帰って行ったのだ。
「ラピス様……ミドさんも、僕達のことを嫌いになってしまったでしょうか?」
「ラズ、安心して。ミドさんは、僕らを信じてくれるさ」
「そうですよ。僕達が入れたお茶を飲んでくれる人なんですから」
ルズは自慢気に言った。
『君の想いは、守るからね』
『これは、俺達の償いでもあるから』