第38話『リーダー』
「俺は……何度も、大切な人達を守ることが出来なかった……」
「あなたは、どれだけ人を殺めても、気づくことが出来なかった。己の罪を一度は理解した筈なのにそれを放棄し、殺戮の衝動に駆られ、己の仲間を失った。そして、あなたは大切な人の苦しみに気づいてもあげられなかった。あなたが直接手を下さなくて亡くなったとしても、あなたが殺したんだーー」
シロキは目を見開いた。
その様子を見たブルアは怯える。
「あなたなら、変えてくれるかと思ったのですが、とんだ勘違いをしてしまいましたね」
そして、先程の表情とはうって変わり、優しく微笑み始めた。
ブルアの頭を優しく撫でる。
「なので、あなたには安らかな永遠の眠りを贈りましょう。黒影、この者の魂を喰らい尽くすのです」
「あぁ……!あぁぁぁ!!!!!」
黒影という不気味な何かがどんどん、ブルアの体の周りに侵食していく。
ブルアは痛みに耐え切れず叫び声を上げるが、シロキはその様子をただ無表情で見ているだけだった。
全身が何かにかじられているような感じがする。
地面をのたうち回るが、痛みは余計に増していく。
『痛い!痛い!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!』
『助けてよ……お兄ちゃん……』
「っ!?」
遂には幻覚まで見えるようになってしまったのか。
ブルアの向こう側には、小さいときーーまだ、殺し屋だったときの自分が同じように体を黒影に侵食されて、痛みに苦しんでいた。
あまりの苦しさに幼き自分は今の自分に手を伸ばしてくる。
『助けてよっ!!!!!痛いんだ!!!!!』
ーー俺は自分を助けられない。
『痛いよ!!!!!痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!』
ーーこれが、俺の宿命だったんだ。道を踏み外してしまった俺は処刑されるんだよ。
『嫌だぁぁぁ!!!!!消えたくない!まだ、生きていたいよ!!!!!』
幼き自分は、涙を沢山流している。
自然と今の自分も涙が出てきた。
『お兄ちゃん!!!!!助けて!!!!!』
ーー俺だって、生きたかったよ!!!!!誰かに助けて欲しいよ……だけど、もう無理なことって分かっているから……。
『無理じゃないよ!』
「っ!?フミ……カ……?」
姿は見えないが、愛しい人の声が聞こえる。
というか、心の中に響いている。
『私は死んでもあなたの心の中で生き続けている!私はいつだって、あなたを光の世界へ連れ戻すって約束したじゃない。人は変われるんだよ?変わって良いんだよ?』
「フミ……カ……俺は無理だよ」
『お願いがあるの。私の弟を救い出して欲しいの!このままだと、あの子も化け物に成り果ててしまう……お願い、ブルア……あなたがリーダーとして、あの子を助けてあげて……』
俺は目的を見失っていた。
過去に何度も大切な人達を守れずに死なせてしまった。
何度も後悔して、何度も覚悟を決めた筈なのに。
俺はまた繰り返すのか?
そんなのは嫌だ。
死んでも尚、弟の幸せを願っているフミカを泣かせたくない。
俺に幸せを与えてくれた天使の行動を踏みにじるわけにはいかない。
「ど……けぇぇぇぇぇ!!!!!」
浄化魔法を使い、黒影を消し去った。
まだ、体が痛いし、痺れるがそんなのは関係ない。
今は目の前の敵を倒すだけだ。
シロキと向かい合わせになり、剣を構える。
「良いですね!黒影にここまで侵食されて、生きていたのはあなただけです!」
シロキは札を何枚かブルアに投げる。
すると、札は一気に短剣に変わり、ブルアを貫こうとしていた。だが、ブルアは短剣を見事避けきり、次の行動に移す。
「煙幕」
ブルアが簡単な呪文を唱えると、辺りは一瞬で白い煙に包まれてしまった。
「くっ!浄化!」
「遅い」
「何っ!?かはっ!」
ブルアは思いっきりシロキに蹴りを入れ、横に飛ばした。
そして、シロキに馬乗りになり、胸ぐらを掴む。
だが、そのときのシロキの表情は笑っていた。
「何がおかしい」
「おめでとうございます。途中、どうなることやらと思いましたが、あなたは私に勝ちました。あなたの言うことを聞くことにしましょう」
「どういうことだ?」
「私、実はもう今の主に忠誠を誓っていないのですよ。そろそろ離れたいと思っていたので」
「……ミドの元へ案内しろ」
「良いでしょう。では、回復を」
シロキはブルアの肩に触れ、ブルアの傷を癒した。そして、終わった後、自分のも治す。
立ち上がったシロキはブルアに手を伸ばす。
「私たちは、フミオを潰すことに協力しましょう」
「本当に良いのか?」
「えぇ。あの人は、変わってしまいましたから……とにかく、よろしくお願いしますね。"リーダーさん"?」
「あぁ、よろしく」
今度こそ、今度こそ……助けに行く。
もう、失敗しない。
だから、待ってろよ。ミドーー
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