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石の支配  作者: シュシュ
第1章 『涙から始まる物語』
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第3話『秘密と檻の中の人々』

「ミド・テトラ、ステラ国にどういうイメージを持っている?」


「えーと、戦争をしない平和な国みたいなイメージです」


 ただいまミドは、お勉強中。


 強制的にStone houseに入らされ、ここのことや国の歴史をお勉強しなければ、ならなくなったのだ。


「きっと、そうだろう。だが、それは嘘だ」


「嘘……とは?」


「昔、ある一人の孤児の少女は、ローブを着ている男に出会った。その男は密かに旅をしながら、ある研究をしていたと言う。その研究とは、悲しみと怒りの感情を制限するという研究。悲しみと怒りの感情さえなければ、人間は幸せに暮らせるだろうと思い、研究を続けてきた。その研究結果を元に、感情を規制する機械を体のどこかに取り付ける法律を作るように当時のステラ国国王に頼み込んだ。しばらくは、戦争などもしないで、平和が訪れたが、その幸せは続かなかった。これが、私達に伝えられている歴史だ」


 今聞いたことは、どれも初めてのことだった。

 悲しみと怒りの感情?

 感情を制限する機械?

 幸せは続かなかった?

 どれも、質問したいことばかりだ。


「悲しみと怒りの感情って、なんですか?」


「悲しみは負の感情表現で、脱力感や失望感、挫折感を伴い、涙という目から出る透明なもの、その行為を泣くとし、何かを失ったときに出る感情の一つだ」


 何かを失ったとき……。


「怒りは、目的が達成されないとき、身体を傷つけられたとき、侮辱されたときなどに出る。元々は人間の原始的な感情だ」


 元々はあった感情……。


「感情を制限する機械って?」


「お前の服に石のブローチが付けられているだろう?」


「これのことですか?」


 ミドは付けているブローチを見るが、特に変わったものではない。


「それは、産まれたときに付けられるのだ。最初は脳に直接機械をはめ込もうとしたらしいが、危険性が高い為、研究を重ねて、今の形状になった。他にも髪飾り型やネックレス型もある」


「このブローチが……」


 確かにStone houseの人達は、何かしらのアクセサリーを付けていた。

 ブローチの人やネックレス、髪飾りなど色々と種類があった、


「後、幸せが続かなかったって……?」


「他の感情も制限すると、感情自体を失ってしまう可能性もあった為、憎しみや嫉妬の感情は消していない……」


 スイナは急に寂しそうな顔をした。


「……憎しみや嫉妬は戦争を生んでしまった。だが、せっかく感情を制限したのに意味がないとなり、その失敗を国民に知られるのが怖くて、政府は研究の第一人者を新しい施設と共に閉じ込めた。そして、感情制限が出来ない程、悲しんでしまったり、怒ってしまったりした者を犯罪者とし、たまたま特別な能力が備わってしまったがために、裏で戦わされているのだ」


「ステラ国の幸せを維持する為に戦わされているのですか?」


「あぁ、お前達覚醒者、私達監視者もこの檻に閉じ込められ、国の幸せの為に縛り続けられるのだ」


「どうして、監視者も?」


「監視者は……覚醒者の子どもだ……」


「覚醒者の子ども?」


「覚醒者の子ども達も、特別な能力を持って産まれてくる。"石の支配"からは、逃れなれない。末の代までずっと。私達は檻の外に出られない」


「それって……自由になれないっていうことですか?」


「あぁ、その通りだ」


 ーーそんな……。


 まだ、お母さんのお墓は作っていない。

 お母さんに別れの言葉、言えてない。

 お母さんと離れたくない。

 そんな想いが強く、込み上げてきた。


 ポツリ。


 また、目から透明なものが出てきた。

 これが涙。これが泣くという行為なのだろう。


「この話は終わりだ。リゼ、後は頼む」


「はい。かしこまりました。では、施設の案内をしますね」


 監視の人達は、ミドが泣いていることは気にならないようで、淡々と物事を進めていく。


「いつまで、泣いているんだ?さっさと、リゼに付いて行け」


「はい……」


 ♢♦︎♢


「あのときは、すみませんでした」


「あのとき?」


「私が眠らせたときです」


「いや、大丈夫ですよ。体を痛みつけられるよりはマシです」


「そうですか……それでは!施設の案内をしますね。まず始めに図書館です」


 リゼは、ノックをし、ドアを開けた。

 部屋中に本棚が並び、本がぎっしり詰まっている。

 階段もあり、そこにも下と同じように本棚が沢山あった。


「ミラさん、いらっしゃいますか?」


「えぇ、居るわよ」


 階段から降りて来ているミラ。

 紺色のワンピースに手織りの羽織ものをしていた。

 腰の辺りには楕円形のアクセサリーがチェーンで付いていた。

 ボブの茶髪で、サファイアのような目をしている。


「新人のミド・テトラさんです」


「私はミラ。ここの図書館の管理を任されている者よ。よろしくね」


「は、はい、よろしくお願いします」


「本が読みたくなったら、いつでも来てちょうだい」


「ありがとうございます!」


「それでは、次に行きますね」


 ♢♦︎♢


「次は占い室です」


「占い室?」


「はい。未来などを占ってもらえるんです」


 ーー占いということは、水晶玉とかあるのかな?


 ミドはそう思ってしまった。

 占いと言えば、水晶で未来を見たり、タロットカードを使っていたりするイメージがあるからだ。


「失礼します」


 リゼがドアを開けると、中は薄暗かった。

 部屋の周りは本棚が並び、真ん中に机が一つあった。

 机の上には、透明な水晶玉とお香?のような物、タロットカードが置かれていた。


「ようこそ、お越しくださいました。ミド・テトラさん」


「何故、僕の名前を⁉︎」


「私の予言とタロットが示してくれました。私はメシア」


 名前を言い当てたメシアは、薄紫色のベールを被っていて、顔を見づらい。

 髪は金髪で長そうだ。

 黒と紫のネグリジェ?みたいな服を肩を出して着ている。

 星のネックレスや頭のベールの所にも星のアクセサリーが付いている。


「用はこれだけでしょう?早く、お行きなさい」


「はい。では、失礼します」


 ♢♦︎♢


「次は医務室です。戦いに怪我はつきものですからね」


「うぁ!!!!!!!!!!!」


 医務室がある方から、叫び声が聞こえてきた。

 ミド達は、叫び声が聞こえる方に走った。


「どうしましたか⁉︎」


「いててて……」


「サクナさん⁉︎」


 サクナと呼ばれたお兄さんは、白衣を着ている。

 ここのお医者さんだろうか?

 だが、彼は紙をあちらこちらに飛ばしてしまっている。


「あわわわ!!!!!紙がぁぁ!!!」


「落ち着いて、サクナ」


 ふっと、白衣を着た男の人が現れ、サクの肩に手を置いた。


「沢山の紙を落としてしまったら、全部の紙が落ちきるまで、待ちなさい。君には、その方法がピッタリだ」


「はい!サクヤ先生!」


「先生じゃなくていいって、言っているだろう?」


「あの、サクヤさん」


「あぁ、リゼちゃん、どうした?」


「新人のミド・テトラさんです」


「へぇー君、綺麗な緑の瞳をしているね」


「そうですか?」


「あぁ、とても綺麗だ。僕はここの医者を務めている、サクヤだ。そして、隣はーー」


「助手のサクナです!」


 ペカっ☆と敬礼をする好青年のサクナ。

 二人は、どちらも茶髪の髪で、親子みたいだ。


「親子、なのですか?」


「違うよ。血は繋がっていない」


「サクヤ先生は、僕の尊敬する先生です!」


「だから、先生いらない」


「それでは、事務室に行きますので、失礼しますね」


「あぁ、お気をつけて」


 ♢♦︎♢


「サクナさんって、素敵ですね……」


 普段、真面目なリゼの頬が赤い。


「好きなんですか?」


「っ⁉︎べ、べべ別に恋愛対象として、好きってわけじゃ!」


 これは絶対、好きだ。


 ーーリゼさんって、意外と分かりやすい。


「い、行きますよ!次に!」


「おや?リゼさん」


「は、ハヤトさん……」


「この前の遠征費の会計報告の書類、出してくださいね?会計監査するの、俺なんですから」


 リゼは、怯えている。

 ハヤトの方はと言うと笑ってはいるが、目が笑っていない。

 目を閉じて笑っていても、笑ってないことが分かる。


「お隣の方は……新人さん?」


「はい。ミド・テトラです」


「そうかそうか。俺の名前はハヤト。この施設の事務員さ。必要な書類は早めに出してね」


 ーーなんだか、嫌な予感が……。


「じゃないと、俺、怒っちゃいますよ?」


「は、はい!気をつけます」


「失礼しますね」


 ♢♦︎♢


「はぁ、やはりハヤトさんの前だと、緊張してしまいます」


「なんというか、威圧感が凄いですよね」


「えぇ、そうですね」


「次はどこですか?」


「教会です。あまり、気乗りはしませんが……」


 外に出ると、綺麗な庭が見えた。

 ちゃんと手入れされている。

 様々な色のバラが特に魅力的に見えた。


「ここは、庭師さんも居るのですか?」


「いえ、教会の神父さんとお弟子さん達が手入れをしてくれています」


「あ、リゼさん」


「っ⁉︎ラピスさん……あの方が神父さんです」


 これは驚いた。

 まさか、神父さんがこんなに、若いとは。

 きっと、彼は、ミドより二つ三つ年上だろう。

 黒髪に黒いローブ。首からは、十字架のネックレスをしていて、片手に聖書を持っている。


「新人さんですか?」


「はい。ミド・テトラです」


「ミドさん、行きましょう」


 ーーどうしてこんなに早く、切り上げるのかな?


「もう、ここで最後でしょう?教会には僕の弟達も居るし。ミドさんのお話、聞きたいですし」


「新人のミドさんは、忙しいんです。これから、訓練も控えています」


「訓練は明日にするんでしょう?僕はここのこと、大体覚えましたから」


 神父ラピスはニヤッとした。


「良いでしょう。教会の前まで行って、お弟子さん達の紹介だけなら、許します」


「中々、釣れませんね」


「さぁ、早く行きましょう」


 リゼさんは、ラピスさんを敵視しているようだ。


 ーー仲間なのにどうしてだろう?


「着きました。では、弟達を呼んで来ますね」


 ギィィと教会の重たい扉が開く。


『ーーシス?』


 ーーえ……?


『違います。ーースの息子です』


 教会の中から、声が聞こえてくる。


『来いーー』


『さぁ、こちらへーー』


 ミドは導かれるようにして、教会の中に入って行く。


「え⁉︎ミドさん⁉︎」


 リゼが驚いているのも、気にならない。


「中に入ってはダメです!特にあなたはーー」


 バシン。


 扉が閉じた。


 ドンドンと扉を叩いているリゼの声が聞こえてきた。


「開けてください!何をするおつもりですか⁉︎」


「ミドさん、ようこそ。僕たちの住む教会へ。どうぞ、こちらに座ってください」


 両端には木の素材の長机と同じ長さの椅子があった。

 前から三番目の所に座り、ラピスは小さな木の椅子を持ってきて、ミドが居る机の横に置いて、座った。


「ラピス様!お持ちしました!」


 二人の幼い子どもの声が聞こえた。


 ワゴンを押してきた男の子達は、ミドよりも三、四歳年下に見える。

 ワゴンの上にはガラスのティーポットと人数分のティーカップとお皿のセットが置いてあった。


「紹介するよ。血は繋がっていないけど、僕の弟達」


「ラズです。茶髪のラズと覚えてください」


 ラズは、茶髪でどこかの民族衣装みたいな服を着ている。砂漠とかを拠点にしてそうな。


「僕はルズと申します。桃髪のルズとお覚えください」


 ルズは、桃髪で白い服を着ている。

 桃色の装飾品が所々に付けられていて、どこかの王子様みたいだ。


「ラズ、ルズ、ミドさんにお茶を」


「はい。ラピス様」


 ガラスのティーポットから、ティーカップにお茶が注がれていく。香り的にハーブティーだろう。


 ーーここ、小さな教会だけど、ステンドグラスが綺麗だなぁ。


 ステンドグラスの右端には天使、左端には悪魔が描かれており、それぞれ手を伸ばしている。真ん中には、茶髪の女の人が祈りを捧げている絵が描かれている。

 なんとなく、お母さんに似ていて、心が落ち着く。


「ステンドグラスが気になりますか?」


「あ、はい。綺麗だなと思って」


「それは、"あの人達"が喜びますね」


「あの人達?」


「きっと、俺がかっこいいと思ったんだぜ」


「いや、彼女の美しさに魅了されたに決まっています」


 その声の正体はーー


 白い翼を持った天使と黒い翼を持った悪魔だった。

 ステンドグラスに描かれている天使と悪魔にそっくりの。














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