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石の支配  作者: シュシュ
第1章 『涙から始まる物語』
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第17話『潜入(侵入)』

 久しぶりに祖国へ帰って来たが、街の外観は大分変わったようだ。


 だけど、相変わらず人は変わっていない。


 貧富の差は激しく、スラムもある。

 孤児達は物を盗み、それを追いかけている店の主人。


 それはシノ達がステラ国に居た頃と同じ光景だ。


「ステラって、私の国とそっくりですわ」


 シクが呟く。


「ま、大したことないよ。この国は……」


「誰か!お花ーーお花はいりませんか?そこの旦那様!お花はいりませんか⁉︎」


 少女に呼ばれた紳士は、黙って少女の側を通り過ぎた。


 ボロい服にボロいフード。

 元気のない小さな花束。

 彼女の花束を買う者は、誰も居ない。

 怪訝な目で何かを呟いたり、憐れに思うだけの人間ばかりだ。


 昔の自分に重ねてしまったせいか、シノは少女の方へ歩み出してしまった。


「お嬢さん、花束は一ついくらだい?」


「おひとつ、50ポワールになります!」


 50ポワールーー


 小さいパンが一つ、買えるくらいの金額だ。これだけじゃ、これから生きていけない。早くに死んでしまう。

 シノは少し考え、花売りの少女に優しく質問をした。


「花束はいくつ、あるんだい?」


「えーと、今日は少ないから……10程あります!」


 ということは、500ポワールーー


 ポケットから財布を取り出し、一枚の硬貨を渡した。


「全部、買うよ。はい、500ポワール」


「えっ⁉︎本当ですか⁉︎ありがとうございます!500ポワールのコイン、初めて触った……」


「大事にしてね。ちゃんと、生きるんだよ」


「はい!これで、妹のお薬も買えますし、しばらくは大丈夫です!本当にありがとうございます!」


「じゃあね……」


 ーーもう、会うことはないだろうけど……。


「なーんだ。意外と優しいですわね?」


「僕らも昔はあーだったからね。情が移るんだよ」


「けど、それであの子は幸せなのかしら?」


「ん?どういう意味?」


「お金はあっても、誰かに盗られたらおしまい。妹の所へ行く前に襲われてもおかしくはないですわ」


「そうだね。そういう世界だ」


「だったら、どうしてーー」


「僕はあの子を見殺しに出来なかった。ただ、それだけさ」


「ふん、相変わらず分かりませんわ。あなたのこと」


「ははっ。分からなくて、良いよ。あ、見えてきたんじゃない?研究所」


 山の上に建っている研究所は、下の街からでも見れる程、大きい。

 洋館みたいな風貌で、教会なども見えた。


「あそこが、Stone house……大層な建物ですわね。囚人を管理するっていうのに」


「本当のやばい囚人は別の所だけどね」


 山の麓へ行ってみたが、『通行禁止』と書かれていた。

 だけど、見張りは居ないよう。

 言うことを聞く気は全くない。


 ズカズカと他人の領域へ潜入と言う名の侵入をした。


 ♢♦︎♢


 近くに来ると、扉には見張りが付いていた。だが、たったの二人だ。

 倒すことは容易いが、バレてしまっては困る。


 裏口を見つけた方が良いだろう。


 そして、バッグから変装グッズを出した。

 それをシクに押し付ける。


「はっ⁉︎なんですの?これ」


「変装するに決まってるじゃん。ほらほら、向こうで着てきて。僕、幼女の裸見るの趣味じゃないから」


「なっ⁉︎幼女⁉︎わたくしは、立派な!お・と・なですわ!」


「まだ、11歳のくせに……」


「ふん!着替えていけばいいのでしょ⁉︎着替えていけば!!!」


 シクはプンプンしながら、草陰の中に入って行った。


 ーー⁉︎


 誰かに見られたような気がしたがーー

 なるべく、早く片付けよう。


 シノも移動し、着替えることにした。

 先程、少女から買った花束をカバンにしまい、変装道具を出す。


 ーーニコ兄、姿借りるよ。


 パーカーに着替えて、フードを被る。

 孤児でまだ一人ぼっちだった頃、優しくしてくれた恩人に似せた顔を付け、出来上がりぶりを確かめる。


「よし、ニコ兄だ」


「着替えましたわよ」


「OKーー」


 ーーぷっ!あははっっっっ!!!!!!ひーひっひっひ!!!


 心の中で笑いまくる。


 シクはいつもの二つ結びをする髪ゴムではなく、黄色いポンポン髪ゴムで、黄色いチェック柄のワンピースにキリンの大きいぬいぐるみ。


 まさに、小さな、こ・ど・も・だ!


 これは笑える。


 いつもはお嬢様なのに、完璧なおこちゃまになっているのだから。


「なっ!笑っていますわね!」


「いーや?」


「いえ!絶対に心の中で笑っていましたわ!」


「あー後、そのお嬢様風の喋り方、やめてよね。似合わないから。それとーー」


 シクの髪をほどき、いつもより高めに二つ結びをした。


「何をするのですか⁉︎」


「喋り方」


「っ!何をするの……」


 シクは頰を赤らめる。

 どうやら、普通に喋るのが恥ずかしいみたいだ。


「後、裏口分からないから、僕が探している間、ここで泣き続けて。見つけたら、連絡するから」


「はぁ⁉︎どうしてですーーどうして!」


「その方が手っ取り早いから。よろしくね!」


 そう言い残し、シノは研究所へ走って行った。


「泣くと言っても、どうやれば良いのかしら……」


 まぁ、取り敢えず泣こう。


「うっ……うぅ……うぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!」


 ーーっというか、今思い出したけど、この国は泣くことが罪ーー


 ーーまさか、わたくし、捕まるんじゃ……。


「誰だ!」


「侵入者か⁉︎」


 来るの早っ。


 男と女が走って来た。


「女の子?まさか、覚醒者ーー」


「いや、この子は石を所持していない。きっと、他国の子だろう。それに、涙は流していない」


 今、この瞬間だけ、涙を一発で流せる程の演技力を持ち合わせてなくて、良かったと心底思った。


 さて、ここからだ。

 どういった経緯で、ここに来たのか、理由を考えなければーー


「お嬢さん、どこから来たの?」


「あ、あのね……ママとパパと一緒にステラ国へ旅行に来たの……だけど、街を歩いているときに可愛いうさぎさんを見つけて……追いかけている内に知らない所に来ちゃったの……うぇーん、うぇーん」


 胡散臭過ぎたかしら。なんて、シクは思う。取り敢えず、アリスからちょこっとだけ、引用して、なんとか見張りに誤魔化す。


「そうなの……ここは、危ない所だから。取り敢えず、山を下りましょう?」


「おい、持ち場を離れるわけには……」


 シクもこの後の展開をどうしようかと困っていると、声が聞こえてきた。


『見つけた。教会近くで待っている』


 ーー了解しましたわ。


「シズク!」


「心配したのよ!」


 心配そうにこちらに走って来た。


「ママ!パパ!」


 シクも駆け寄る。


「ごめんなさい!ごめんなさぁーい!」


「心配なかったようね」


「戻るか」


 職員の二人は家族を見守り、去って行った。


「お疲れ様」


 シクが言うと、両親役は散り散りになって、消えていった。


「よし、教会へ向かいますわ」


 ♢♦︎♢


『監視室で待ってる』


 監視室って言われても、どこにあるのかさっぱり分からない。

 見つからないように進んではいるが、ここの住人と鉢合わせたら、大事になる。


 しばらく進むと『監視室』と書かれた部屋を見つけた。


 ーーご丁寧にどうも。


 ノックをする。

 三秒後、ノック返しがきた。


 中にはシノが居るという証拠だ。


「どうですの?進展は」


「ん、今から監視システムをハッキングするから、待ってて」


「は、ハッキング⁉︎」


「別に驚くことなくない?」


「ハッキングって……随分、物騒なことしますわね……」


「これが、真の潜入捜査官ってやつよ」


 ーー私達潜入じゃなくて、侵入ですけどね。


「よし、OK」


 シノがそう言うと、パソコン画面が各監視カメラの映像に変わった。


「今思えば、普通にこれで見れば良いんじゃないんですの?」


 近くにあった機械を指差す。

 多分、監視カメラの映像が見れるやつだ。


「これ、点けたら、履歴が残っちゃうやつだから」


「どうして、そんなことが分かるのですの?」


「男の勘ってやつ」


「はぁ……」


「あぁ!この子じゃない?」


 画面を覗いてみると、図書室に灰色の髪に緑の瞳の少年が映っていた。


 ♢♦︎♢


 ミドは図書館には挨拶以来、来ていなかった。

 ミラやメシアは、ずっと部屋にこもりっきりだから、会ってもいない。

 図書館になら、ある筈だ。知りたいことが書かれている本が……。


「あら、ミドさんーー」


「ミラさん!」


「何をお探しで?」


「あの……スイナさんに講義はしてもらっているんですけど、まだよく分からないんです。石のことが……」


「そう……少し、待っててね」


 そう言うと、ミラはスイスイと導かれるように進んだ。ミドもそれに付いて行く。

 ミラが止まったかと思うと、上を見上げ、何冊か本を取ってくれた。


「これが石に関係する一部の書籍です。全部紹介して欲しいのならば、探しますが、いかが致しますか?」


「こ、これで、十分です……」


 だって、12冊くらいミラは持っている。

 その中には薄いものもあったが、分厚いのもあった。

 ミラは気遣ってくれ、近くのテーブルに置いてくれた。


「ごゆっくり」


「ありがとうございます!」


 ミラは微笑みながら、螺旋階段を上り、自分の部屋らしき所へ入って行った。


 椅子に座り、山積されている中で、一番上に乗っていた本を手に取った。


『石の始まりのお話〜旅の男と孤児の少女〜』


 めくってみると、絵が描いてあって、絵本のようだ。


 これって……。


『昔、ある一人の孤児の少女はローブを着た男と出会ったーー』


 スイナが言っていたお話だろうとミドは思い出した。


 また、ページをめくる。


 本には白の髪の赤ちゃんと緑の髪の赤ちゃんが描かれていた。


 ♢♦︎♢


 昔々、古い掟が残るこの村にーー


 村長の次に偉かった家にーー


 "髪の毛の色が違う双子"が生まれました。


 お母さんは大喜びしましたが、お父さんは暗い顔をしていました。


『……どちらが、兄の方だ?』


『白の子が上でございます』


『では、緑の子はお前に預ける。白の子は神社の跡継ぎだ。お前は緑の子と共に遠く離れた山の中の屋敷で過ごすのだ。二人を合わせてはならない。互いに双子の存在を教えてはならない』


『何故ですか⁉︎この子はあなたのお子でもあるのですよ⁉︎』


『掟だからだ……バレてはならない』


『…………』


 次のページをめくると、緑の子が成長した絵があった。そして、母親と共に山の上から、下の景色を見下ろしている。


『坊や、あなたには教えなければならないことがあります』


『何でしょうか?お母様?』


『あなたには双子の兄がおります。髪の色は違う、顔は瓜二つの兄です』


『私にも兄弟が居たのですね!』


『えぇ、少し外へ出ましょう』


 二人は屋敷の外へ出て、村の様子を見ました。

 村では祭りの準備で、村人がせっせこ、せっせこ働いておりました。


 そして、その中には緑の坊やにそっくりな白の坊やが近くの大人の男と話しておりました。


『あの白の坊やの隣に居るのは、あなたのお父様でもあるのですよ』


『そうなのですか!でも……何故、お父様は私に会いに来てくれないのでしょうか……あの子とは笑って話しているのに……』


『……私がいつか、変えてみせますわ』


 そうお母さんは、決意したのでした。


「あれ?孤児の少女と出会うのは、まだ後なのかな?」


 その次のページをめくっても、孤児の少女は出てこなかった。


 しかも、この御伽噺に出てくる人達はみんな、和服だ。

 ヤヨイ国のお話、ということなのだろうか。


 一回、本を閉じた。

 そして、テキトーに開いた。


「っ⁉︎」


 ミドは目を見開いた。


 丁度めくったページにはーー


 母親が死ぬ絵が描かれていたからだ。


 お母さんは、緑の子を守る為に覆い被さりました。

 村人達は、殴る、蹴るを繰り返しています。


『この!災いの女が!』


『早く、子どもを差し出せ!』


『その子はこの村にとって、災厄でしかない、忌み子ーー』


『災厄なんかじゃない!忌み子なんかじゃない!この子は!この子は……普通の人間の子どもです…………どうか、この子に恵みをください。神様……』


『神はそなたらの味方にはならない!何故なら、神に欺いているからだ!』


『失せろ!!!!!』


『がっ!』


 お母さんの体重が重く、のしかかってきました。

 村人達は、お母さんを緑の子から引き剥がしました。


 大好きなお母さんがどんどん、離れていきます。


『お母様!お母様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』


 手を伸ばしますが、村人に押さえつけられます。

 お母さんは、緑の子に向かって口を動かしました。


 生きてーー


 そう口を動かしたと思います。


 お母さんは木に縛り付けられ、火を灯されました。


『嫌です!嫌ぁぁぁぁ!!!!!』


『逝かないでぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!』


 バタン!!!


「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ……」


 まだ、頭に残っている……。

 緑の子の叫び声が……。

 聞こえたわけでもないのに、苦しい。


『逝かないでぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!』


『死なないで!僕を置いて逝かないでよぉぉぉ!!!』


 ミドが言った言葉と何となく、共通していたからだ。


 冷や汗が凄い。

 これは読破するのに、かなりの時間と体力を必要とする。


 だけど、知らなくちゃいけない。

 だから、もう少し頑張らないと。

 頑張らないと、また置いていかれてしまう。


 もう、独りぼっちは嫌だから。



「ミド?」


「ハッ!誰⁉︎」


 振り向くと、ブルアが居た。


「どうした?顔色が悪いぞ?」


「いや、何でもありません」


「だけど、汗がーー」


「本当に何でもありませんってば!!あっーー」


 目の前がフラフラする。

 ぐわんとした。

 ブルアがミドを支えたが、ミドの意識が段々と遠のいていく。


「……ど!……か⁉︎み……!」


 ♢♦︎♢


「ありゃ、どうした?」


 青髪の青年が目標を抱きかかえ、図書室を出てしまった。


「どうしますの?目標、連れて行かれちゃいましたわよ」


「これは、シロキに聞くしかないかなぁ……」


 ポケットからスマホを取り出し、シロキにかける。

 最近は便利な世の中になったもんだ。

 人とすぐに連絡が取れるんだから。


 スマホはヤヨイ国のトウテイで、よく作られているし、使われている。

 ヤヨイ町では、スマホの存在を知ってる奴は多分、少ない。

 時代が他の町よりも遅れている。


『はい、シロキです』


「あーオレオレ」


『名前が表示されてるから分かるけど、そうすると詐欺かと思われるよ?』


「はいはい。それでさー目標見つけたんだけど、どうする?」


『一旦、戻ってきてください。録画か何かはしているのでしょう?』


「了解!切るわ」


「どうでしたの?」


「戻るぞ」


「は?捕らえないのですの?」


「今の状況だと、俺達の方が不利だ。作戦を立てる」


「分かりましたわ」


「ってか、いつの間にか、口調戻ってるしね」


「これがしっくり、くるんですのよ?」


「女の子の美学、分からんわー」


 シノとシクは素早く動き、Stone houseから去って行ったのだった。


 完璧だったが、侵入の存在を知っている者が居た。


 それはーー












この前言っていた大会に参加してきました!結果は南地域の中で3位!だけど、1位に同じクラスの子がいるので、全国大会に出れません……来年は超えてやるっ!と思った大会でした!

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