第79話 インデペンデンス・デイ
第2回小説すばる新人賞に水田功という本名で応募して予選を通過した小説に『銀河の片すみで』という長編がある。今から28年前、幸盛の四男が誕生するひと月前に書き上げた、超能力を使う宇宙人が登場しUFOも出現するエンターテインメント小説だ。
その原稿は、当時使用していたワープロ『書院』で書いたものがフロッピーディスクに保存してあったのでワード文書に変換し、これに大改造を加えればなんとかモノに出来ないものだろうかと検討を始めた。ところが、登場する宇宙人が友好的なため、いったい何の目的で地球にやって来たのかという、肝心の設定部分が曖昧で分かりにくいので、スッキリさせるための筋立てを今、暗中模索している最中だ。
そこにたまたま、『インデペンデンス・デイ、リサージェンス』という新作映画の上映が始まった。二十年前にローランド・エメリッヒが監督・脚本を手がけた映画『インデペンデンス・デイ』の続編だ。この映画の場合は友好的どころか完全なる侵略者だが、この旧作から何らかのヒントが得られるような気がして、アマゾンで927円のブルーレイディスクを購入し、家のテレビで観ているうちに観たことあるような気がしてきた。もともと記憶力はすこぶる悪い方だが、いずれにせよ、二十年も前のエンターテインメント映画とはそういうものであって、あー、おもしろかった、との感動しか残らなくともよいのだ。(と、開き直るしかない。)
ところで、この旧作は日本国内歴代総合興行収入ランキングが19位で113億円も稼いだだけあって実に良くできている。(ちなみに、1位は『千と千尋の神隠し』で304億円、2位は『タイタニック』で272億円、13位は『ジュラシック・パーク』で141億円、47位は『マトリックス』で85億円、などなど。)
何より脚本が好い、これは大いに参考になる。しょせん荒唐無稽な物語なのに、人間ドラマが盛り込まれているし、(映像も優れているし、)アメリカ合衆国大統領がハンドマイクで寄せ集めのパイロットたちに訴えるシーンは感動ものだ。
【今から一時間後、君らは世界各国のパイロットと共に、
人類史上最大の作戦をスタートすることになる。
『人類』という言葉は、今日新しい意味を持つ。
人種の違いを乗り越えて、一つの目的のために結ばれる。
今日はくしくも七月四日、これも何かの運命だ。
君らは再び自由のために戦う、
圧政や弾圧から逃れるためでなく、生き延びるためだ。
地球に存在する権利を守るために、勝利を手にしたなら、
七月四日は米国の祝日であるだけでなく、
人類が断固たる決意を示した日として記憶されるだろう。
我々は戦わずして絶滅はしない。
我々は生き残り、存在し続ける。
それが、今日我々がたたえる、人類の独立記念日だ!】
そして、元空軍パイロットでもある大統領は、背広を軍服に着替え、自ら戦闘機に乗り、巨大な宇宙船に立ち向かって行くのだが、真のヒーローは周到に他に何人も用意されている。幸盛はこのような小説が書きたいものだと心底思う。
この927円で買った145分もある旧作を家のテレビで二度観てから、津島ヨシヅヤの東宝シネマまで続編を観に行った。おそらく冷房が効きすぎているだろうと予測して上着を持参して正解だった。たぶん、上着を着ていなければやむを得ず中座してトイレに駆け込んだことだろう。
それはともかく、旧作を観た者全員がもう一度この新作を観に行けば、料金を値上げした分だけ興行収益が上乗せされる計算だが、それはまず無理だろう。小説家もデビュー作以上のものは書けないというし、この続編も前作が優れていただけに、そこそこの儲けしか得られないだろうことは致し方ないことだ。でも、まあ、それなりの出来映えだったとは思う。(頻尿気味の己にも打ち勝ったし。)
ということで、『銀河の片すみで』は原形が留まらぬほどにガタガタになるかもしれないが、時間はたっぷりあるので地道にコツコツと手を加えていきたい。
と、ここまで書いてきて、まだ少し余白があるので、気がついたことを少し書く。
実は、アマゾンでブルーレイディスクを購入する際に、この『インデペンデンス・デイ』の他にもう二枚購入した。その一枚が『プラダを着た悪魔』なのだが、これも大変に面白かった。しかし、調べてみると日本国内歴代総合興行収入ランキングベスト500にも入っていない。(500位は20億4千万円の『ラスト・アクション・ヒーロー』)。
納得できないので、世界・全米興行収入を調べたら、やっぱり3億2千6百万ドルも稼いでいた(2006年度制作)。好い脚本でしかもメリル・ストリープやアン・ハサウェイやエミリー・ブラントが好演しているのだから当然だ。
山中幸盛の娯楽的センスはまださほど狂ってはいないということを確信し、死ぬまでには完成させるつもりなので、リニューアルした『銀河の片隅で』に乞う御期待!