夏の太陽は本当眩しい。
きらきらと輝く太陽。日に照らされたグラウンドでは、大きな声で青春を感じる運動部員。うだるような暑さの中では、窓から入ってくる生温い風さえも清涼だ。
外に出て汗を流すのに最適なこの季節に、僕は一人教室で本を読んでいた。特に理由はない。……こともないけど、特筆すべきものではない。友達の居ないインドア派な僕は夏休みに入ろうというこの時期でさえすることがなく、しかし家に居ると妹や母親がぐちぐちとうるさいので、逃げるように学校へ来ているだけだ。
はぁ、とため息をひとつ。図書館から借りた本をぱさりと置いて、僕は校庭を見下ろす。サッカー部が空にまで抜ける掛け声を上げ、ホイッスルの音が響く。どうやらちょうど休憩のようで、ぱたぱたと女子マネージャーがスポーツドリンクやタオルなどの準備をしている。
その中にひときわ輝く彼女の姿。太陽と同じぐらいきらきらした笑顔を振りまき、サッカー部のエースストライカーにタオルを手渡す。……エースの彼とマネージャーの彼女は幼馴染であり、どこかぶっきらぼうな彼と人懐こく愛想のいい彼女とは正反対に思えるが、それがなんだか『お似合い』な感じだ。顔立ちも……まぁ、どちらも、整っている。
もう一度、ため息を一つ。
……本当に、世は不公平だなぁ。彼だって僕だって、何かに必死になっているのは同じなはずなのに。書きかけの原稿用紙と、広げたノートに目を落とす。
「……それがサッカーと文学なだけで、こうも差が出るかな」
ため息をつくと幸せが逃げるというけれど、つかなくたって幸せは逃げる。あーあ、と伸びをして、窓から入る輝きに目を細め、カーテンをしめた。
「はぁー……僕もタオル手渡されてぇー……」
机に突っ伏して、しばらくした後、原稿に向き直って、僕は物語を綴る。
まったく、世の中は不公平だ。
であるからして、僕みたいな日陰者は、せいぜい自分の妄想の中でしか、片思いの子に話しかけられないのである。
お題「スポーツの暴力」/15m
部活に打ち込んでいるのは同じなのに、ただスポーツってだけで市民権を得るのって、ある種暴力的だと思うんです。
ただ、それとこれ――彼が意気地なしで彼女に話しかけられないこと――とは、全く別で、関係ありません。