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女顔の僕は異世界でがんばる  作者: ひつき
第四章 恨みを抱く少女
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胎動

今回はちょっと短めです。




『みんなをっ!!』


 投げ出された直後、反射的に妖精たちへ命じる。

 視界の端に、こちらを振り向く敵ワイバーンどもの顔が映った。


 消える瞬間、最後の力を振り絞って、僕のワイバーンは僕らを敵の包囲網から外へと投げ出してくれた。

 けれど、それだけじゃやつらを振りきれない。

 やつらにとって僕らは、おいしい餌だ。

 

「――っっ!!」


 落下していく。

 下を見ると、地面は思ったよりも近かった。

 予想したほどの高度はない。

 逃げているうちにいつの間にか降りてきたようだ。


 それでも、落ちたらひとたまりもないだろう。


 けど、今は――


「グォオオオっ!!」


 ワイバーンの牙が迫る。

 今は、こちらの方が危険だ。


 妖精たちはそれぞれ、みんなにつけた。

 サラマンダーはワユンへ。ドリアードはリュカ姉。シルフはカリファ。アプサラスとピクシーはマルコ。


 足りるだろうか。

 急がなければ。


 牙が僕を捉えようとして――

 ――王の力発動。

 

 操ったワイバーンの背に乗る。

 すぐにでもみんなを回収しな――

 

 ――視界が、紅蓮に染まった。


「――――っっ!!!!」


 後続たちが吐いた炎だ。

 ワイバーンが一瞬で焼き尽くされ、僕は再び投げ出される。


 上を見上げた。

 

「「「グオオオオッ!!」」」


 多すぎる。 

 空はすでに見えなかった。

 無数のワイバーンで、覆い尽くされている。 

 その血走った目はすべて、僕を捉えていた。


 即、距離が縮まる。

 召喚魔法を使う余裕はない。


 短剣を構え、錬金術を発動した。

 身を守るため、金属の半球を作り出す――


 ――一噛みで食い破られた。

 予想はしていた。

 そのタイムラグを利用して火魔法ファイアを放つ。

 あれから何度も練習していた。 

 威力も精度も上がっている。 

 狙いは違わず、一体の眉間をとらえる。

 けれど――


「くっそ!!」


 止まらない。

 その一体は少し動きを止めただけですぐこちらを睨んでくる。

 その間に他のワイバーンが迫ってきた。


 正面のもう一体に王の力を発動。

 とにかく無茶苦茶に暴れさせる。

 

 しかし、そのワイバーンは周りの同種によって即、抑え込まれた。

 何のためらいもなかった。

 PCが連想される。

 バグを起こしたプログラムを即感知して、排除する。

 まるでプログラムされているかのようだ。

 全員で一つの機能を果たしている。


 王の力!! 王の力!! 王の力!!


 でも頼りはこれしかない。 

 ひたすら同じことを繰り返す。

 火魔法も錬金術も通用しないんだ。

 これ以外にない。 


「っ!?」


 がくんと、魔力が削られるのを感じた。

 どうやら強力な相手ほど消費が激しいらしい。


 王の力!! 王の力!! 王の力!!


 けど、魔力残量など気にしてはいられない。

 発動を止めた瞬間、食いちぎられてしまう。 

 たとえ無駄なあがきだとしても、続けるしかない。


 突如、ワイバーンが静止した。


 ――悪寒。

 下を見る。地面が――


「ファイア!!」


 下へ向かって反射的に放つ。

 急激に勢いが制動される、と同時に衝撃。


 視界が暗転した。






 脳裏に移ったのは、複数の園児たちの無邪気な顔。

 原初の記憶。


 僕は虐げられる側の視線に立っている。

(これは、見覚えがある。あの頃の僕が見た光景だ!)


 詰め込まれたゴミ。

 強烈な吐き気。

 痙攣する体。


 抵抗しようともがくも、信じられない力で押さえつけられる。

 視界が涙で揺れる。

 鼻へ胃液が詰まり、呼吸が阻害された。


 苦しい。

 苦しい。

 

 そんな僕の様子を見て、さらに沸き立つ園児たち。


(きっと、僕がこのまま死んだところで、こいつらは喜ぶだけだろう)


 何が楽しいのか。

 何がそんなに愉快なのか。

 余りの理不尽に、猛烈な怒りが奥底で弾け、亀裂からどろりとした液体が溢れ出る。 


 マグマだ。それも、信じられないほど熱く、どす黒い。

 体内で渦巻き、噴火の時を待つ。

  

 なんで僕ばかり、こんな目に遭わなくちゃいけないんだ?

 いやだ。

 こんなのもういやだ。


「うわっ! こいつションベンもらしてるよ!!」

「うわぁっ!!」


 キャッキャと嬉しそうに悲鳴を上げる。

 何がうれしいんだ。

 そんなに僕を苦しめたいのか。

 くそやろう。


 ――お前らみんな、死んでしまえ。


 突如、視界が砂嵐で遮られた。

 様々な音が無秩序に混ざり合ったような、意味不明なノイズが頭の中に直接響いてくる。


(何が起こってるんだ?)

 まるで、意図的に隠されているかのように、理解できない。


 ただ、ごく小さな生き物から、等身大のものまで、ありとあらゆる生物の生命機構――脳活動が、まるで自分のもののように感じられた。


 幼さゆえか、言語的記憶はほとんどない。

 特徴である視覚的記憶、聴覚的記憶は、意図的に破壊されているように思える。

 ただ、なんとなく、漫然とした感覚があった。 


 すべてが、まるで自分の一部のような、まるで、すべて思い通りになるような――


 ――瞬間、急速に伸びていく糸のようなものがイメージされ、直後、視界が真っ赤に染まり、凄絶な悲鳴が鼓膜をつんざいた。 



   




「――っ」


 強烈な痛みに、目が覚めた。

 なにか、よくないものを見た気がする。


 何を――?


 いやそれよりも、何が起きてる?


「――っっ!!」


 上空から降りてくるワイバーンの群れを見た。

 そうだ、僕はあの後、地面に叩きつけられたんだ。


 意識があるということは、どうやら生きているみたいだ。 

 息ができないほど全身が痛いけれど、体はまだ動く。


 ワイバーンの位置的に、気絶は一瞬だったらしい。 

 ワイバーンが降りてくる。


 まずい、早く何か手を打たないと。

 酷い痛みも気にせず、体を起こした。


 ――かちり。


 何かが<解放>されるのを感じた。

 勝手に<解放>されるなんて、今までになかったことだ。


 反射的に、スキルを確認する。



<王の力>

 ・行使者の能力以下の生物単体を支配下に置くことが可能。随意活動、不随意活動を問わない。

 ・召喚魔法にて、複数の同一個体を召喚することが可能。

 ・以下の能力を扱うことが出来る。


<喰贄>

 一定時間以内に死亡した全生命エネルギーを吸収し、<解放>の糧とする。


<群化>

 配下の種族を一括りに意識統一させる。単体への指示は一瞬で、全体へ伝えられる。その命令には可能な限り、最高効率で従う。


<任命LV1>

 配下一体を、その種族の王に任命する(上限一種族のみ。数はレベル依存)。任命できるのは種族内で最も信頼のおける単体のみ。


<王権付与>

 王、ロードクラスの使い魔に対し、召喚魔法を付与する。召喚できる魔物の強さは対象に依存する。数の制限はない。


<配下強化LV1>

 配下にある個体の力を引き上げる。上昇率はレベル依存。


<配下進化LV1>

 配下にある個体のランクを一つ上げる。上限五体。数はレベル依存。


<増殖LV1>

 レベルに応じた使い魔を増殖させる。数は使用者の魔力依存。


<転移召喚LV1>

 任意の地点に使い魔を召喚できる。範囲はレベル依存。




「なっ……?」


 <王の力>が拡張され、見覚えのないスキルが羅列されていた。


 わけがわからない。

 けれど、能力の使い方自体は、一瞬で理解できた。


 ワイバーンが迫る。

 その巨大な口が、僕を喰らうため大きく開かれる。

 とにかく今は――


 ――スキル<任命>発動。

 種族は妖精。

 王をピクシーに設定。

 続けてスキル<王権付与>発動。

 ピクシーに召喚魔法を付与した。

 

『ピクシー!! ワイバーンを蹴散らせ!!』 


 開かれたワイバーンの口腔が、今にも閉じられようとして――

 ――目の前が、真っ白になった。





オーワの力がちょっとだけ目覚めました。


途中の意味不明な描写は、後々意味わかってくると思うので、今は放置で。


文章変更

<配下強化LV1>

使い魔の力 ⇒ 配下にある個体の力


<配下進化>

使い魔のランク ⇒ 配下のランク


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