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「え? この気がどうやったら使えるようになるか? うーん……」


 危険な技シリーズが怖いとはいえ使えるものなら使えるようになっておきたい。ストラの血をもらって色んな耐性とか付いたけど俺自身が強くなったかと言えば全然実感がない。


 もしここで少しでも使えるようになっておけば、ものまねがあるから一気にどこまでも使えるようになるはずだ。


 しかし妹からの返答はかなり渋そうだが何か条件とかあるのだろうか。


「これは私も師匠に開発してもらったやつなんだよね。こう、背中に手を当ててこの気を流し込むと、少しだけど目覚めるとかなんとか。私もやり方はよくわかんないし、珍しく師匠が無理矢理やると危ないから人にはやるなって言ってた」


 珍しくってなんだ珍しくって。普段師匠は危ないことして……してるな記憶消したり技教えたり。でもちゃんと技術もあるし危ないものは危ないって言える人なんだな……。なんか変な安心したわ。


「だから誰かしっかり使える人に教えてもらわないと難しいかな。私が教えてあげられたら口実に色々出来たのに!! お兄ちゃんのいじわる!」


「俺のせいじゃないし色々しようとすんな」


 妹はぽんぽんと頭を撫でてやると嬉しそうにしていた。こんな邪な考えばっかなのに聖なる気が使えるって世界は不思議に満ちてるわ。俺が絡まなければそこそこ正常なのかとも思ったけど師匠の影響かわからないけど危険思想なのは変わらないわ。


「だから私がお兄ちゃんにあげられるものはさっきの技くらいだよ。もし気が扱えるようになったら……危険な技コラボしよっ」


「しないわ」


 というか俺の身体能力で出来るとは思えない。高速移動するにも相当量の魔が必要なくらい負荷に弱い。ステータスに色々補正ついて便利になって来ているとはいえ、魔法を使えるようになっても肉体的な技はほとんど使えない。


「でも私も完璧に使えるってわけじゃないんだ。危険な技最上位の技は使えないの多いし、鍛錬あるのみだよっ!! お兄ちゃんも一緒にがんばろっ」


「そうだな」


 確かに俺の身体能力は低いままだ。でもだからと言って鍛錬しないというのはただの逃げだしそれはしたくない。旅立てる年齢になってからかなりの時間を学校で過ごしてずっと鍛錬してきた。ステータス的に弱くても経験という意味ではかなりの量を積んでこれている。


 その時よりもはるかに強くなっているのは事実だし、だからこそもっと強くなりたく思う。先生やいろんな人が励ましてくれていたし俺もあきらめるつもりはない。


「私で出来ることがあったら何でもしてあげるからねっ! お兄ちゃん」


「ああ、頼りにしてるよ」


「じゃあまずは今日の夜はベッドにいくからねっあうっ」


 妹にチョップをかます。俺のことをずっと慕ってついてきてくれる妹を大事にしていきたいし、足でまといにならない程度には強くなりたい。とりあえずの目標は自衛できるくらいになる事か。



――――――――――――――――――――――――――



 その後夜になったのでファルネの様子も気になったので酒場に寄ってみることにした。一応洞穴の中で寝たとはいえそれなりに疲れているだろうからいないかもしれないけど見に行こうとなった。


 ついでにご飯も済ましてしまおうという作戦だ。


「ファルネいるかなー?」


「マスターの性格じゃあ返してそうだけどファルネあれだったしな……」


 朝のファルネの様子だと仕事して気を紛らわせておきたいですとか言い出しそうだ。その辺の可能性をかけてきてみたが、実際にいた。


「おおいた……ってリコかあれ」


「え? あれほんとだ、晩御飯かな?」


 ファルネを探しにきたらリコもいた。ファルネは朝のまま死んだような表情というわけではなくそこそこ元気が戻ってきていたようで安心した。


 しかしリコは若干変装していてぱっと見わからないような服装を着ている。アイドルアイドルしている服装からローブを着ているがよく見ると本人だとわかる程度の変装だ。


「でもなんだろう。なんか少し変な感じ。なんかこう動きは本人なんだけど雰囲気だけ別人に見えるというかなんというか」


「そうか? 俺は別になんとも思わないが」


 妹は目を凝らしてリコを見ているが人違いかと若干疑っているようだが、どうみてもリコだ。


(たぶん認識疎外のローブか何かだな。普通の人には見えないが呪いとか魔法の一種だからお前には効かないんだろうな。ほんとそういう所は便利だな)


 それなら俺が見えるのはわかったけど何で妹も見えるんだろうか。


(たぶん尋常じゃない観察力だな。そもそも動きが本人なんだけどって食事風景中に出てくるセリフじゃないな)


 妹はそれでもうーんと唸っていたが気にしないことにした。


 夕飯時という事もあって今回はちゃんと町の住人で賑わっている。結界を直している職人もいるがご飯よりはお酒を多めに頼んでつまみを食べているという感じだ。酒場と言う事もあってごはんを目的に来てる人はそんなにいないようにも見える。


 ファルネとも違う店員もいたようだが、先にファルネがこっちに気づいて声をかけてきた。


「いらっしゃいませー! にゃ……エミさんにトモキさん。相席でもいいですかにゃ?」


「おつかれファルネ。相手がいいならそれでいいよ。というか体調は大丈夫か?」


「ありがとうございますにゃ。体調は平気ですにゃ、獣人は体力があるしもう現実逃避してないとやってられないにゃ」


 やっぱりと俺が思っていると妹が現実逃避? という感じで首を傾げている。お前だお前。


「それじゃすいませんがこちらですにゃ。お客様、相席をお願いしてもよろしいですか?」


 そう言ってファルネはリコの席に声をかける。他にも空いてるテーブルはあるが、荒くれものや完全に出来上がってるお客だったのでここしかなかったのだろう。


「構わないわ」


 リコはそう言ってこっちに少し視線を向けたが何も言わずそのまま食事を続け始める。妹にも何も言わず。


「それじゃ失礼しますにゃ」


 そう言ってファルネはまた接客に戻っていった。酒場なだけあってお酒の注文が多くお酒をもっていったり来たりしている。


「ねーお兄ちゃん私もお酒飲みたい」


「だめだっつの。惨劇を忘れたのか」


「覚えてないもーん」


 お酒を運んでる店員を見て妹は愚痴をもらす。俺はお酒を頼もうかと思っていたがまた奪われたら面倒なので妹と同じくジュースを頼むことにした。すぐに水から魔が抜けたとは思わないが少しは変わっているのだろうか。


「ところでリコちゃんはなんで俺達を無視してるんだろうな?」


「え? あれ、リコちゃんの席かここ。うーん、やっぱり存在感が薄い……ほんとに本人かな?」


 どうやら気づいてたのは俺だけで妹は気づいてなかったようだ。となれば妹に話しかけてもらったほうが良いな。俺が話しかけると周り……そういえば親衛隊もいないな。


「俺が話しかけてもなんだし話しかけたらどうだ?」


「それもそうだね。ねえ、お姉さんもしかしてリコちゃん?」


「!?」


 リコは食べていたスパゲティを吹き出しそうになって一気に水を飲み干す。


「ゴホッゴホッ……え、いえ人違いです」


 その反応だけでどうみても本人なんだけどな。

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