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救出

やつらがきました。

『その技……くっ』


 加速して勢いの乗った攻撃に、俺をつれている魔物がうなる。荷物という名の俺を持っているからか機敏な動きが出来ないみたいだ。


 魔物は地上に落ちるように移動し、俺を地面におろした。光魔法を使ったやつも追うように降りてくる。


『現代の勇者がこれほどまでに力を持っているとは、一対一なら倒せるでしょうが……』


 魔物が相手の力を分析している間に増援が来た。数は三人、いずれも空を飛んできているが勇者ほどの速度はない。


「人間を殺すだけでは飽き足らずさらおうとするとは、神が許しても俺が許さん!! 貴様の四肢をばらばらにし目の前で復元できないように粉砕し胴体と頭だけ生きたまま標本にしてくれるわ!!」


 この勇者こわっ!?


「なあ、いつも言ってるだろ、お前のほうが神に許されないような行為をしてるって。スプラッターかよ。怖すぎるわ」


「あ……構造調べてあたらしい薬試したいから腕一本は私に頂戴……」


「実験材料腕一本でたりるの?再生させて何本ももらおうよ」


 この勇者パーティこわっ!? なんか俺を助けに来たんじゃなくて実験材料集めにきた感じするぞこれ。


『なるほど、頭のおかしい連中だということがわかりました。そして実力があるというのが実にたちの悪い。魔王様の魂、必ずまたとりにきます。またお会いしましょう』


「あ、まて標本!!」


 魔物は一瞬のうちにその場から姿をけした。そのテレポート、俺を抱えながらだと使えなかったのか。

 呆然としていると勇者達と思われるパーティがこちらに話しかけてきた。


「大丈夫だったか」


「あ、あぁ」


 よくみると唯一常識人っぽい発言をしていたのは寝てた家で見た人だった。よかった、他の人だったら正直逃げていたかもしれない。


「まあいい、とにかく戻るぞ。話もあるからな」


 勇者達に連れられ城下町に戻る。戻るときは実験材料うんたら言っていた女の子が魔法使いだったらしく全員を空に浮かし移動した。浮遊魔法は便利だな。


「お兄ちゃああああん!! 無事でよかったよおおおおおお!!! べろべろべろべろ」


「やめろ」


 戻ると妹が抱きついてくると同時にめちゃくちゃ舐めてこようとするので頭を引き剥がした。だれか鎮静剤をこいつに打ってくれ。


「よく効く鎮静剤あるよ……いる?」


「あるのかよ!」


 魔法使いの女の子が見るからにやばそうな色をしている薬ビンを取り出して見せてきた。なんかそれ毒物にしか見えないんですが。


「よく効いて目が覚めない人続出だよ……?」


「それ死んでるんじゃなくて!?」


 まともな女子がいないんだが。


「あれーみんな戻ってきてるーおかえりー」


 間延びした声で鎧が走ってきた。いや人が入ってるんだろうとは思うが全身フルアーマーで、もし微動だにしない状況だったら間違いなく置物と間違えるくらいの鎧っぷりだった。


「ああただいま鎧。連れてかれた子も助けてきたよ」


 今この勇者鎧って呼んだぞ。名前も鎧なのか。


「さてモンスター達も撤退したし話をしようか」


 勇者がみんなを促し、壁に大穴の開いた家に入る。めんどくさいので全員穴からのほうから入った。


「や、その前に俺には何がなんだかさっぱり何ですが……。何がどうなってるんです?」


 話をしようと言われて思わずついてきてしまったが、何を話すというのか。

 というか勇者とか言ってたがこいつらなんだよ。特に鎧とか鎧とか鎧とか。


「自己紹介、そうだね自己紹介から始めようか。僕は……」


「まって。その前にあなたが連れて行かれた状況を知りたい」


 鎧から声が発せされる。さっそく微動だにしない状況だったためいきなり声が出て若干びびってしまった。


「いや、いいけど……。そういや助けてもらったお礼を言ってなかった、ありがとう。勇者さんですよね? 助けてくれたの」


「……」


 俺が発言した瞬間場が凍りついた。俺も妹もわけがわからずみんなの顔を見るしかなかった。


「おいてめえ、何で勇者だって知ってるんだよ」

 

 唯一まともそうな男が刀を構え聞いてくる。これが殺気というものか、妙に体がぞわぞわする。


「まつんだ、まだ決まったわけじゃない。それに彼からは邪悪な気配を感じない。今まであったこと、話してくれるね?」


 勇者はそういって男をなだめた。だが男は刀から手を離しただけで鋭い視線を飛ばしてくる。妹を後ろにかばいながら自分におきた出来事を話すことにした。


 

「モンスターの言葉がわかるだと!? ふざけんじゃねぇ! こいつが魔王で間違いねえだろ!! さっさとやっちまえばよかった!」


 また刀を抜こうとする男を今度は鎧がなだめた。どうやら勇者パーティにまともな人間はいないらしい。

 猟奇趣味の勇者と、実験好きの頭のおかしい魔女と、ニコニコ笑いながらやばい提案をするメガネと、喧嘩っぱやい常識人風の侍みたいな男、そして鎧。なんだこいつら。


「君は、魔物の言葉がわかるんだね? じゃあ、魔物から何かきいた?」


 鎧が侍を抑えつつ聞いてくる。鎧のサイズは侍よりも明らかに小さいのに、がっちり侍を抑えている。


「ええと、魔王の魂を半分受け継いだとかなんとか」


「やっぱりな! すぐ殺そう今殺そうやれ殺そう!」


「うっさいな……」


 魔女の女の子がさっきの薬ビンの中身を侍にぶちまける。侍はスッという感じではなくドシャッという感じで倒れて沈黙した。この人たち物騒なんてレベルじゃねぇぞ。


「そうか、そう聞いたのか……君は魔物にだまされてるよ」


 鎧の人は俺に向かってそう言った。


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