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村長宅

 そんな会話を繰り広げながら歩いていると村長宅にはすぐについた。町の外れのほうといっても宿屋からはそう遠くないためかなり早くついた。


「村長さん、居ますか」


 扉を数回ノックすると村長が思いっきり扉を開ける。あぶねぇ。


「おお、お前たち……戻ってきたという事はやったのか!?」


「やったよー!」


 妹が元気よく答えると、村長は一瞬止まってから目頭を押さえて上を向く。この町が大事なんだろうなというのがよく伝わってくる。


「そうか……ありがとう……詳しい話は中で聞こう。ところでファルネはどうしたんじゃ」


 いまだ心ここにあらずと言った様子でぼんやりしているファルネが気になったようだ。知り合いがいきなりこんな風になってたら誰だって気になる。


「ええ……この二人が手合わせすることになりまして。ファルネはあまり気乗りしないみたいです」


「あまり……?」


 村長が疑問の声を上げるように、ちょっとどころじゃないほどの気の抜けようだ。例えるなら賭け事して全額スった後に起死回生の一手で勝った後に調子に乗ってまた全額すっ飛ばしたような顔だ。


「あと酒場のマスターが審判呼んで確実にやばそうな戦いになりそうっていうのもあるかもしれませんね。というか酒場のマスターは何者なんですか」


「そうだな……ってまずは家の中で話そう。おぬしたちも疲れただろう」


 そういって村長は俺達を家の中に招き入れる。前に来た時と同じ部屋に通されて、果実入りの飲み物が運ばれてくる。


「あの酒場のマスターはな、昔冒険者だったんだ。しかしこの町に来ていきなり酒がまずい! こんなうまい水なのにもったいねぇ! マスターに俺はなるとか言い出してな、そのまま冒険者辞めてマスターになったんだ。そこからは宣伝もしていたし伝手もあってかあれよあれよと酒場ができた。もともと交友関係の広い男だと思っていたが酒場が出来てからはさらに広がったみたいだな。まさか審判まで知り合いがいるとは思わなかった」


 村長はマスターについてそう語る。


「この町は冒険者は少ないんですか」


「ああ、たまにふらっとあんたらみたいに寄るくらいだ。おかげでこの前みたいにモンスターが町に来ても複数いたら倒せんのだ。マスターも戦えるがあれで支援職みたいでな」


 まじかよマスター。てっきりバリバリの戦士かと思ってたけど、それなら確かにゴブリンとは言え囲まれたら戦えないよな。あの風貌なのに適正なかったんだろうか。


「とまぁマスターの話はこれくらいにして、町はもとに戻るのか?」


 マスターの話を切り上げ、村長は本来の目的だった町の水をもとに戻せるのかという話を持ち出してきた。ずっと気になっていたんだろう、マスターの話をしている時も地味にそわそわしていた。


「ええ、もう大丈夫だと思います」


「そうか……そうか……」


 村長は顔に手を持っていき下を向いた。感動して泣くとかよほどうれしかったんだろう。町の事が本当に好きなんだな。


「原因はなんだったのか、教えてもらえるのか? もう起きたりしないのか?」


 大丈夫だと思って安心したのか村長は一気に捲し立ててくるがマキはそれに一つ一つ応えていく。


「原因は村長の言っていたやつが山に魔を流し込んでいたからでしょう。その原因は取り除いてきたのでもう起きることはないと思っていいです。ただ気を付けてほしいのはその魔が完全には取り除かれていないので、完全に水が綺麗になるのはそれなりに……ひと月くらいはかかると思ってください」


「そんなにすぐ戻るのか!?」


 ひと月っていうのはすぐなのだろうか、山でマキが吸収した魔の量は正直いってほとんど全てだった気がするけどもっと早く戻るものだと思っていた。それこそ明日にでも。


 村長のその反応は少し以外だったのか、ファルネが口をはさんでくる。


「あれ、村長水に魔が含まれてるの知ってたんですにゃ?」


「あ、ああ……無駄に混乱させると思ってみんなには黙っていたがわしは知っていた。あいつに聞いたからな」


 そういえば村長にドラゴンがもう来ないように言っていたやつがいたな、倒した奴なのかもしれないけど。


 というかこれだけ騒ぎを起こしてるのにも関わらず出張って来ないって事は間違いないんじゃなかろうか。押さえていたはずのドラゴンももう罠に引っかかったりはしな……しないと思うし、寄生樹も奪い返した。普通ならなんらかのアクションがあっても良いと思うんだが。


「あいつがもとに戻すには何年もかかると言っていたから気長に待とうと思っていたが、そんなに早く治るとはな……感謝してもしきれん。ありがとう」


 村長は深く頭を下げる。


「あとドラゴンの事も心配しなくていい、ちょっかい出された事にちょっと切れただけだったみたいだ。通常は守り神になってくれるよ。今まで大きな災害とかほとんどなかっただろ?」


 綺麗な街並みを維持するには防衛が必要だ。帝都とかは防衛力が凄まじく文明もかなり発達していると聞くし、この町程度の防衛力では結界があるとは言え人間の悪い奴らが頻繁に出入りしてもおかしくはない。実際一つ前の村では盗賊にやられてたしな。


 ストラの影響化から、感知能力が少しあれば弱い連中やそこそこ強いやつらは無意識に避けるらしい。伊達に森の龍してないってことか。弱った影響でゴブリンとか大量に沸いてたって事か。


「そんなに近くにずっといたのか……龍神信仰は本当だったんだな」


 そんな話を村長に聞かせるとまた何かと感動しているようだった。

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